某高山採集の風景

採集地:某地方

2005.9.10

今回はいよいよ毎年高山での相方である「いか氏」が今週より参戦。彼は今年本命のオオクワ採集に忙しく動き回っており、柳ルッキングは後回しにされていた。私も久しぶりの彼との採集なので、また新たな気持ちでルッキングにも望める。今シーズンはなかなか厳しい状態が続いており、彼にも「毎回ショボイ成果やな〜」と、こき下ろされていたので、彼にも今年の現実というものを味わってもらういい機会となるだろうと思っていた。

深夜に私は自宅を出て彼の家に向かった。出発のメールにも、もうすぐ到着のメールにも返信が来ない。待ち合わせの時間に電話を入れると案の定寝坊である。いつもは時間に厳粛な彼にしては珍しい。雨が降らなければよいのだが・・。(笑

車を置き換え、彼のジムニーで出発。多少予定より出遅れたが、まあ別段支障もなく目的地まで到着。既に辺りは明るくなっていた。身支度を整え終わるといよいよ歩いての採集開始である。台風後で落ち着いた日和が続いてこの日の天気も良く絶好の採集日和。体調面もこのところの疲れからか頭痛薬、アレルギー薬と薬をいくつも飲んでの厳しいスタートである。

歩き出してまだ20分と経たないうちに柳に止まる黒い影が目に入った。小型だが、ヒメオオの♂である。また少し歩くと続いてペアで上の方に付いている個体を発見。ネットに納めるとこちらもヒメオオ。標高的には嘗て経験していない程低い地点での採集には少し驚いた。
ヒメオオペア発見!
幸先よくペアでネットインペアのシルエットヒメオオ♀
またもペア発見!

更に標高を上げ、この辺りからはお互い丹念に見てゆくことになるのだが、いか氏の方は久しぶりの高山採集でまだルッキングの調子が取り戻せない感じであった。あと、今回彼は気象計を持ち込んでおり、1時間ごとに標高・気温・風速・湿度・気圧とチェックして行っていた。面倒であるが、これは後々のデータとして価値のある作業である。

それにしてもこの日は暑い。風も無くまるで平地の真夏の採集の様である。しかし、いつもは居そうで居ないのがヒメオオ採集なのだが、この日はいつもと違っていた。いそうな雰囲気のところにはちゃんと居るのである。

正面にペアを見つけて近寄ると更に上にもペアが付いている。先の枝にも単頭で♀が付いている。いか氏と協力しながらネットにもれなく納めてゆく。このとき時間は7:30。ここからこの日の採集は佳境へと突入していくのだった。

ヒメオオペア頭上にもヒメオオ♂たまにアカアシ
ミヤマも健在またヒメオオペアです。ヒメオオ♂
よく見ると5頭付いてます。 少し歩いてチェックをするたびにカウントがあがってゆく。それにしても凄いポイントだ。しかもこの日はペアで付いているものが多い。多いときなどは複数のペアが鈴なりとなって付いている。まさに夢に見た光景がそこにあった。8時台、9時台、10時台とあっという間に時間は経ってゆく。採集の方は嘗て無いほど堅調で当初の想定数の20や30などはあっという間に達成してしまった。彼の目標の50も到達してしまい、気が付いたらここからは自己記録への挑戦となってしまっていた。
ヒメオオペアヒメオオ♀ヒメオオ♂
ヒメオオ♂ヒメオオ♀ヒメオオペア
ヒメオオペア 時間が進むにつれて気温もぐんぐん上がってゆく。採集の方は衰えを見せるどころか、初めの好調に輪をかけての好調が続いた。その為、なかなか進行ペースがあがらない。気温も気持ちもとにかく暑い採集が続いた。

私は今年の成果が約2ヶ月毎週の累積でようやく80頭に達していたが、それに迫る勢いでこの日のカウントはあがっていった。いか氏は久々の採集で私が簡単に見つけていくのに彼が見つけるのはアカアシだったり、葉っぱの塊だったり、柳を歩くバッタだったりと的はずれも多く少々やきもきしていたが、それでもここまで想像以上の成果には相当満足していた様子だった。

私は採集の手を緩めることはせず、見落としは無いかと踏み込み執拗にチェックしてゆく。するとちゃんとそれに応えてくれるようにヒメオオが付いている。暑さと数が採れているので採集に忙しいが、本当に楽しい時間を堪能していた。
一本の木で姫8頭採り!!
ヒメオオペア大型のスジクワガタ♂ヒメオオペア
歩いているヒメオオ♂隠れているヒメオオ♂ヒメオオ♀
採集はまだまだ続く・・ 上まで到達した時には12:15となっていた。採集数はヒメオオだけで90頭を越えていた。アカアシも軽く20頭は越えている。約6時間も費やしていた。日差しも強く体力的には二人共かなり消耗していた。私は頭痛もしてきており、薬を飲んでリセットを図った。30分ほど休憩を行い、大半の♀と小型の♂はリリースを済ませ、また下りでの採集を続けていった。

さすがに先程丹念に見ていった木には、取りこぼしや見落としは少ないようで採集ペースはぐっと下がっていた。やはりあまり見ていない木を中心に丹念にチェックしてゆく事にした。行きほどではないが、それでもコンスタントにポツポツと採集は続いていた。ヒメオオのカウントも三桁まで到達。あとは何処まで追加できるかわからないが、こんな好調なルッキング採集は今までに経験がない域へと来てしまっていた。

15:00ともなると、もうかなり下がってきていたので標高的に追加は厳しい状態である。雨も落ちてきた。ここからは足早に車を目指していく。結局カウントはヒメオオが112頭。雄雌の比率も約半々で♂58頭、♀54頭を数えていた。

容器はとっくに満杯
小型のヒメオオ♂ヒメオオ♀ヒメオオ♂52mm
ペアでしかも大型の♂ 車へ到着したときには足の疲れ、体の疲れ共にピークだった。時間にして10時間を要していた。しかし、それをも拭き飛ばすほどの今回の成果と採集の余韻に気持ちは高ぶっていた。まさにこういった状態が覚醒したといえるものなのかもしれない。

帰り支度を整えたあとは温泉で汗を流し、体もかなり楽になった。何より今年は厳しい採集が続いていただけに私は精神面での満足という点で満ちあふれるものとなった。しかし、相方の方はというといきなりの大成果にも満足の様子は薄いご様子。どうもいつもの精彩を欠いていたのが堪えている様だったが、私から見たら贅沢な話である。次はこうはいかないはずなので、近々本当の現実を味わう事になるであろう。


今回の採集はヒメオオ採集の自己記録を大幅に更新するものとなった。ヒメオオ以外も合わせると147頭という数字は今後も無いのではないかと思う数字である。50mm台の大型も12頭以上という成果は今までに経験していないものとなった。これにはいくつもの要因が絡んでの事であり、この様な好条件を制し、尚かつ運良く引きを得られたときにのみ訪れるものであろう。いくら頑張っても採れないときには本当に採れないのが現実。そういったときはルッキングをしていてもいないだろうと悲観的に見てしまうものである。そうなると益々見つからない。しかし、この木ならいる。ここならいると信じて探していけばいとも簡単に見つけられた今回。毎回そんな調子よくいく事はまず無いが、やはりモチベーションというのは成果を引き込むものに繋がるということを今回は思い知った気がする。今回の成果に甘んじることなく、初心に戻り次回は新規開拓を行いたい。成果は付いてこないかもしれないが、たとえ1頭でも満足するときは満足するものである。それがヒメオオ採集の楽しさである。
◆本日の採集成果:ヒメオオクワガタ♂58(50mmOVER-12頭)♀54、アカアシクワガタ♂21♀10、スジクワガタ♂3、
 ミヤマクワガタ♂1