上州採集の風景

採集地:群馬県

2005.9.18

朝6:00に携帯のアラームで目が覚めると辺りはすっかり明るくなっていた。空もやけに青々している。典型的な秋晴れの空だった。群馬県では5つの候補地があったが、回れるのはこのうち2つか3つだろう。昨晩も信濃から峠越えで高標高より進入したが、植生が良くなくこの日も苦戦が予想された。とりあえず、先ずは第1候補地へ向かってみた。行ってみないことにはわからない。

標高はあっという間に1300Mも越え、ヒメオオゾーンへ突入したがブナ林が無い。ミズナラは巨木が多くあるのにブナが無いのである。柳もあるのだが、虫の気配はない。そのうち1500Mも越えてくると植生はシラカバやカンバ主体のものとなってしまった。とりあえず、着替えを済ませ採集体勢に入ったはいいが、この環境では埒があかないのでエリアを変えることにした。

次に向かおうと思ったのはダート林道を流しての第4候補地だったが、入るポイントを間違えてしまったので、この際遠いが確実にブナ林のある第5候補地へと行くことにした。

本来第3候補とこの第5候補地は遠くなりすぎるので2日工程(山梨〜群馬)の遠征では無理があるので外そうと思っていた所だった。一旦町まで戻り幹線道路で移動するが、そこそこ距離もあるので時間もかかる。この週末は3連休とあって車も多くスムーズにはなかなか近づけない。やっと到着したときには9:30をになってしまっていた。

車を止めて準備を整えるといよいよ山へ入って行った。標高は850M程しか無いがすぐに巨大なブナ林が現れた。この調子なら期待は出来そうだ。あとはもう少し標高を上げるのと柳があれば勝算も見出せるだろう。

1時間ほど歩いたが、標高は100Mもあがっていない。ここまで柳は1本もない。カンバなどルッキングしてあがってきたが、このまま歩いても勝算があるのか疑問となってきた。

ここらでひとまず休憩を入れることにした。すると、前方の開けたところに柳が目に入ってきた。丁度よい背丈で色づきも良い柳だった。これなら期待できる。一服の煙草の後近づくことにした。I氏はアカアシならいるだろうと言っていたが、私はヒメオオがいることを信じていた。

近づくとI氏がペアでいると叫んだ。私にも虫の影が目に入った。大きい。ヒメオオでまず間違いない。真下まで回り込み、この日初めての網を差し出すと2頭の影はネットに落ちてきた。手に取るとやはり大型のヒメオオだった。

昨日の54mmには及ばないがなかなかの大きさである。あとで計測すると53.2mmもあった。その後もその木をチェックすると♀のヒメオオが単独で付いていた。こちらも無事ネットに納め、更に追加はないかと辺りの木も丁寧に見回したがその後追加は得られなかった。先へ急ぐことにした。

だんだん道が険しさを増してゆく。崩落か所も越えて更に上を目指したが、1000mまで到達前にして前進は困難になってしまった。足場も悪く急斜面のため無理して事故を起こしては何もならないのでここはこれまでと引き返すことにした。

行きにはしなかった沢登りも行いながら再度先程のポイント付近までやってきた。もう期待できるところはあの木しかなかった。もう一度隈無く見渡すが、やはり追加は難しいのか。木を数回揺らしてみると何か落ちてきた。必死で探し出すとヒメオオの♀だった。さっきの取りこぼしなのだろう。この個体はこの場でリリースして我々は下山した。
唯一ヒメオオのいた柳
群馬県産ヒメオオ♂53.2mm
群馬県産ヒメオオ♀
樹上を歩くアカアシ

12:30無事車へ戻り今度は先程行き損ねた第4候補へ行くことにした。峠へ差し掛かるところで柳の群落があったので車を止めて見てみることにした。

I氏が早々にアカアシを発見。数多くの柳があるなかで、付いていたのは2本だけ。そのうち1本には10頭ものアカアシクワガタがまさしく鈴なりとなっていた。アカアシでもここまで沢山いてくれると網で拾っていくのも実に楽しいものである。一時のお遊びを終え、先へ急ぐことにした。

アカアシはタコ採れ
14:00頃に第4候補の目的地までやってきたが、ブナがほとんどない。
柳は点在しているが、これではまたアカアシが関の山だろう。案の定、チェックしてゆくとアカアシばかりである。

時間もいつしか15:00を回っていた。もうこれ以上はエリアの移動も時間的に不可能なのでここらでお開きとすることにした。着替えも済ませてあとはひたすら帰るのみである。

途中で第2候補地の近くを通過したが、やはり植林が山を覆っていた。この頃には日も沈み、長野県へ国道で抜け松本から高速に乗って愛知へ向かった。行きに待ち合わせの春日井でI氏とは別れ、私はその晩は実家へ泊まり翌19日に京都へ戻ったのであった。


今回はヒメオオ採集も一番佳境な時期なのに旧知ポイントではなく新規開拓というリスクを背負って挑んだ。しかもこの方面は近辺で旧知のポイントなど無く、まさしく背水の陣である。1ペアでも採集できれば成功との思いが通じたのか、幸運にも1♂3♀の成果が得られた。しかも期待以上の大型の♂。出来過ぎなくらいだ。先週は1日で過去最高の112頭を数えたが、この週末の山梨・長野・群馬での成果はそれにも勝るとも劣らない感動を得られた。

あと、行ってみてわかったのだが群馬は尾瀬へ入れば別なのだろうが、我々の入ったところは植林が多くブナが少ない。高標高までアプローチ出来る道は多いのだが、そのほとんどはルッキングなど出来る環境では無かった。次に訪れても採れる確信は持てないというのが率直な感想である。
◆本日の採集成果:ヒメオオクワガタ♂1♀3、アカアシクワガタ♂20♀4