加賀新芽採集の風景

採集地:石川県加賀地方

2006.6.3

◆2006.6.3(晴れ)

金曜晩に帰宅した後も、この週末はどこに向かうかまだ決めかねていた。というのも休みを付けて離島遠征第2弾を密かに企んでいたのだが、企みだけで終わってしまった。そこで急遽代案を巡らしたが、どれも決定力不足。おまけに名神は昼夜車線規制の工事をしているのでなるべくなら避けたい。低地の樹液はまだ本格的ではない様だし、今年の高山は虫の出がいまいち把握できない。だが、方面に関しては決まった。とりあえず、北陸へ向って自宅を出たのは0:00丁度だった。

車を走らせながらもまだ入るポイントで迷っていた。福井か石川か富山か新潟か長野か・・・。過去、この方面はヒメオオ以外は燦々たる思いをしている。まして、対象がコルリとなると一昨年の敗北が今でも忘れられない。時期、環境、標高、天候、一年のうちでも、これらが揃った僅かなタイミングでしかこの種のルッキング採集は叶わない。エリアと標高などを加味しながらの思案が私の中でまだ続くのだった。

湖西から敦賀まで抜け北陸道へ乗るとエリアもポイントも決まった。石川のあそこにしてみよう。この時期ならあれ位の標高だろう。だが、私にはなんの確信もない。ポイント手間の駐車スペースで朝まで仮眠することとした。

やがて朝がきて、車でポイントへ移動した。しかし、林道入口で通行止め。やむなく次のポイントへ向かったが、こちらも通行止めである。こうも行く手を阻まれるとは予想外だった。今更他の県まで回り込むこともできないし、残るは一昨年失敗しているポイントか姫採集の長駆のポイント位しか選択肢は残されていない。迷ったが一昨年失敗したポイントへ入ることに決めた。今回は斧もナイフも持たない。網だけ片手に持ち山へ登って行った。標高がまだ低いためか新芽を探しても全て開いており、ルッキングできる樹がほとんどない。そんな中で柳に目をやると葉もきれいに伸び揃い、いい感じである。無駄だとわかっていても、ついつい姫大鍬がいないか探してしまう自分がいた。
ミクラミヤマ♂
黒いタイプのミクラミヤマ♂

この日は幸い天候には恵まれ快晴だった。風は涼しく吹いており暑くもなく心地よい。だが、コルリの姿は見られない。飛んでいる小さな虫がいたので網で捕獲するとコガネやテントウだった。

蝶も舞い、草の葉の裏ではがが交尾をしている。しばらく歩いたところで一本の樹に小さな甲虫らしき虫が飛び交う光景に出会した。もしやと思い網を差し入れ捕獲してみたが、お目当てのコルリではなくコメツキだった。一昨年もこいつが飛び交っていた。まったく紛らわしい限りだ。

標高もいつしか1200mを越えてきた。こんなに上がるつもりもなかったが採れないからには致し方ない。辺りには所々雪渓もみられる。新芽の蕾も残っている。

蕾を丹念に探してみると、やっと緑に輝く光沢の虫を見つけることが出来た。ルッキングでコルリ初の成果の瞬間だった。丁度、この辺りの低木は芽吹いてきたところで良さそうな環境の様である。辺りの新芽に目を凝らしていると、ふわっと飛翔する虫がいた。網で追うが目が追えない。上の方を飛んでいる時は追いやすいが、アイライン位まで下がると周りの樹木などで見失ってしまうのだ。その後も数回追いかけるが網に入れることはできなかった。

ここでは追加は獲られないままだが、再度歩きだし更に上を目指した。すると、谷側に若い樹木が沢山あり、皆丁度芽吹いてきていた。みると小さな虫が沢山舞っている。下からの風もあり樹の高い所でふわふわと舞っていた。果たしてこれがコルリなのかコメツキなのか目視では判断がつかない。ただ、10mm位の細長い甲虫であることは確かだった。

網をめいっぱい伸ばして捕獲し、確認すると光沢のない黒いコメツキだった。全てがそうとも限らないだろうと、何度も網を差し入れては確認したがコメツキしか入らなかった。別な一群でも試みるが結果は同じだった。この時点で標高は1250m。ここらで折り返すこととし、先ほどのコルリのいたポイントまで戻り再度探すが見当たらない。

そのまま少し下ると、斜面眼下で動く大型の動物がいた。むこうはこちらに気づいてない様子。毛色からして熊ではないので一安心。身を隠しながら覗き見ると3頭のカモシカだった。だが、1頭は慌ただしく駆けまわり、後の2頭(親・子)は迷惑そうに避けようとしていた。面白いので暫く眺めているとよそ者の雄カモシカが求愛をしきりにしている様だが、母カモシカに角であしらわれ、しまいには雄カモシカは退散してしまった。人間の世界同様にカモシカの世界も母は強い様である。

再び下りながらルッキングを続けるが、お目当てのコルリの姿はみられないまま下山してしまったのだった。



このエリアにしてはやはり多少遅かったのかもしれない。それとも単に私が見つけられないだけなのかもしれない。今回は想定外のポイントに入ることとなり、一昨年の様に材採集の道具は何も持たずルッキングに専念したつもりがこの体たらくである。おまけに熊避けの鈴も車に忘れてしまった。そんななか、出会った唯一の個体を写真に納められただけでも今回は良しとしなければならない。

◆本日の採集成果:キンキコルリクワガタ成虫♂1