土佐灯火採集の風景

採集地:高知県

2006.7.16

朝の6:20に目を覚ました私はまだ寝ているI氏をそのままに、ひとり朝食を済ませ、その後近くを散策してみた。回りにはクヌギなどは見当たらず、昆虫の気配のない場所に少々退屈をしていた。車に戻るとI氏もようやく起きあがって準備を整えはじめた。この日は漠然とルートは決めていたのだが、二人とも初めて入るエリアだけに行ってみないことにはわからない。吉とでるか凶とでるか・・

愛媛との県境を越え、高知県へと入った。この辺りブナも所々見られ道沿いに柳もみられる。植生は思った以上に良い。柳があるとI氏はついつい反応してスローダウンしてしまう。時には車から降りて柳や他の木をルッキングするが、囓り跡もなくアカアシクワガタすら見つけることが出来ない。若干柳の種類も違う為かもしれないが、四国でのルッキングはやはり厳しいのが現実のようである。

更に進み少し標高を落とすとコナラも見られるようになった。
「ここならミヤマがおるで・・」
車から降り道沿いのコナラをI氏が蹴ると彼の言葉通りにミヤマクワガタの♀が落ちてきた。私も可愛いサイズの♂を見つけられた。道具も使わず、なんだか子供の頃に戻った二人だった。
一撃一蹴ミヤマクワガタ♀ミヤマクワガタ♂
灯火場所を求めて地図で目星をつけていた場所までやって来た。植生も良く、標高的にも程々の高さで期待が持てる環境である。日没まで時間があるが、動き回るのも疲れるだけなので、車で暫し仮眠をとることにした。

やがて日も傾き灯火セットを展開し、日没を見計らってエンジンを始動した。真っ先に駆け足でやって来たのは虫ではなく、特大サイズのヒキガエルだった。駆け足で近寄った後は一旦立ち止まり、辺りを確認し終えると、わが物顔でのしのしと歩いてライトの前へやって来て特等席へ座り込んだ。なんともこの様は滑稽である。注意しないとこいつに飛んできたクワガタが全部食べられてしまいそうだ。
スタンバイOKエンジン始動呼んでないのにヒキガエル君登場
アカアシクワガタ♀1号アカアシクワガタ♂スジクワガタ♀
ヒゲコガネ♂ クワガタの飛来が始まったのは20:20頃からだった。いつもよりやや遅い。20時台は圧倒的にアカアシクワガタばかりだった。21:00近くからミヤマクワガタの飛来も始まり、珍しくヒゲコガネの♂も灯火にやって来ていた。そういえばこの日はコガネムシの飛来数がいつもよりかなり多かった。三桁は集まっていた位だった。

ヒキガエルの方は動く昆虫を求めてパクパクと蛾などを食べている。コガネムシも次から次へと丸飲みでいったいどれだけ食べたら気が済むのかというくらい食べていた。行動を見ているとちゃんと風下に回り込んで捕食している。時には暇つぶしにこういうゲストも面白いかもしれない。
ミヤマクワガタ♀アカアシクワガタ♂ミヤマクワガタ♂
22:00頃からはミヤマクワガタの♂が飛来しはじめた。これもいつものパターンである。しかし、本命のオオクワガタやヒメオオの飛来は一切無く終了を迎えた。ヒキガエルもいつしか山に戻ったようだ。我々も撤収を終え移動を開始した。

この高知県の山奥からの帰りの道のりはとても遠く、最短ルートでも京都まで7時間程かかることになる。特に帰りは長く感じるものである。



今になって思うと昨夜もこの夜ももう少し粘っても良かったのかもしれない。それといくら直前に行く先を決めたとはいえ、事前にもう少し情報収集などの学習が必要だった。いつも反省材料は帰ってから気がつく事が多い。採集中は目先のものや欲に惑わされ冷静な判断力に欠ける事もある。今回の採集地へまた行ってみたいとも思うのであるが、距離と時間を考えると易々とは行けないエリアなので、より現地での灯火採集は粘るべきだったと今頃になって後悔しても先に立たずである。
◆本日の採集成果:アカアシクワガタ成虫♂13+♀10、ミヤマクワガタ♂6+♀6、スジクワガタ♀1、ヒゲコガネ♂1