越中地方採集の風景

採集地:富山県

2004.10.2

先週で一応ルッキングにはピリオドを打った。しかし、今回は散策がてらまだ一度も採集で訪れたことのない富山県に向う事になった。朝3:00に京都を出発。いつもよりゆっくり入ったため、予定より遅い時間となり、富山の市街地を通過する頃には道も混んできていた。富山は以前から採集候補にはあがってもなかなか来られずにいたのだが、今回は比較的楽に近づける所に行くことにした。
まず目指したのは、富山県でも東部のエリア。ここは登山者の多く訪れるところだ。かつて旧友が富山に住んでいた頃に訪れたことのある所の傍だが、かれこれもう十数年前の話だ。私たちは登山者に混じって観光気分で網も持たずに登ることにした。散策路を歩くとミズナラ、ブナ、天然スギの巨木が私たちを迎えてくれた。思った通りクマの住処のような豊かな森だ。しかし、柳がないのでルッキングには不向きな場所だった。こういう場所でも虫はいる筈とムシカリなどの低木も見て回るが、囓り痕すらない。途中からは虫探しよりもブナと触れあうことの方が気持ちよく感じていた。結局、柳は数本しか見られず下山することになった。
ミズナラの巨木見事なブナ富山の原生杉
車へ戻ると早くも昼前になっていた。この時間からでは近くの別ポイントは散策に時間がかかるので、少し遠いが車で近づける西のポイントへ向かうことにした。ここは雪で閉ざされることで有名な場所で、ブナ林の規模は期待できるところだ。近づいてゆくと標高も低い辺りからブナも見え始める。山は植林もなく、太古からの原生林の状態。これなら多少標高が低くてもヒメオオがいるはずだ。柳を見ては車を止めてチェックするが、何も見られない。おまけにだんだん霧も濃くなってゆく。クマが出そうな雰囲気だった・・とその時、前方に大きな動物が歩いている。丸々したお尻をしている。どっぷり太ったカモシカだった。ヤマドリも多く見られる。それだけ森が豊かな証拠なのだろう。
標高を上げると、ブナ林が広がっていた。やや若いブナ林だが実に美しい。林道終点には柳もあり見回るが、虫はいない。ここからは車を降りて歩くことにした。道が濡れて苔生している。歩き出して少ししたとき、不意に足をすくわれて転んでしまった。いたる所を強打して一瞬動けない痛みに襲われる。
美しいブナ林
今年は採集時にいろいろ試練にさらされているがこんな無様なのは・・・
気を取り直し、足下に注意して歩くが霧は益々濃くなり、視界もおぼつかないほどになっていった。これ以上の散策は諦め、車へ引き返すことにした。下りでも、またカモシカやヤマドリに遭遇。素晴らしい森だ。また来年ここは訪れる事にしようとこの地を後にした。
場所を南下して次なる場所を目指した。ここも集落から少し上がってすぐにブナが出てきた。この辺りは雪崩れなどから集落を守る意味合いでブナなどの原生林が残されているのだろう。まだ標高が低すぎるので、この先に期待に期待しながら進むが道がだんだん険しくなり、倒木で塞がれてしまった。仕方なく引き返すしかなかった。その後は霧から雨へと変わり、もう採集は望めない状況なので露天風呂の天然温泉に入ることにした。この日は全くクワガタには縁のない日だったが、富山の立派なブナを多数見られたことや、石造りの露天風呂は殊の外快適で採れなかった事などどうでも良い様な気分にさせてくれるものだった。
ヤマドリ

帰り道はそのまま南下して岐阜県を抜けて名神からのコースとなった。途中のPAで複数の猫が車に近寄ってきた。皆私を見ている。数は5頭もいる。捨てられてここで繁殖したのだろう。無責任な飼い主の事を思うと実に哀れだった。
だいたい初めて訪れる地では早々首尾良く採集など出来るものではない。今回もその轍を思いっきり踏んでしまった訳だが、時期的にももう厳しいのではじめから期待していなかったのはまだ救いかもしれない。おかげで、採集というよりも本当の意味で散策を楽しむことが出来た。だが、次に訪れるときにはザラ峠越えした佐々成政の如く決死の覚悟で挑まなければこの地で成果を挙げるのは困難かもしれない。