A.L.Fのひとりごと


Vol.9
「戦争と甲虫」 War and Beetles


今回はヘビーなタイトルですが、米国の大儀のない戦争や自衛隊の派兵などのニュースに接して、虫と比較して感じたことを・・

甲虫の行動習性に餌場の樹液を巡っての争奪戦がある。この争奪戦は雄が自らの餌場を確保するということ以外に雌との繁殖活動の場にも一役かっている。彼らは互いにしのぎを削り、長い年月をかけこの争奪戦に勝利すべく長大な顎や角を進化させてきた。その最たるものはギラファノコやマンディブラリス、パラワンオオヒラタ、ヘラクレスといった面々か。これとは対照的に小型種の中には雄でも顎のあまり進化していない種も多い。これはそのステージにおける生態的地位(ニッチェ)が関係しており、競争に勝利して餌場を占有することで繁栄する者と、実用的な機能としての顎しかもたないけど繁栄をしていくものと。

本来虫達に限らず様々な生き物はニッチェが競合する場合は勝者が敗者を淘汰する中で進化をしてきた。進化もある程度進んだ環境では競合しないよう棲み分けをしているのでその地位的に有利な立場にある種は一番良い時間帯に餌場を占有することができる。幼虫の生息環境もまた同じく、条件の良いところほど有利な立場の種が占めることになる。地位的に不利な種は赤枯れ材に入ったり、細い材に入ったりとニッチェの隙間を狙って繁栄していく。成虫でも材の中で暮らす様な種はたいていが肉食で他の甲虫などの幼虫や昆虫を補食し、コロニーを築いて繁栄していく。

人間社会も同じで軍事力を拡張し、仮想的国より射程の長いミサイルやより強力な兵器、軍事力を開発配備することで繁栄していく軍事大国と軍事力にはさほど頼らずに平和的な政策を掲げて繁栄している国家もある。

だが、過去の人間の歴史は戦争の歴史と言っても過言ではあるまい。分裂割拠から統一国家の形成、そしてまた分裂し紛争する。これには民族の問題、宗教の問題など思想的な対立も根底にあるが、過去から現在に至るまで同一民族で血で血を洗うことも多々起きている。特に現代以前の世界ではこれは種が生命を維持するためには必要な行為・・すなわち繁栄を築くために不可欠な事だったのを裏付けているのではないだろうか。

しかし、今はもうそういう時代ではなくなっている。大国が本気で戦争を行えば人類自体が滅びかねない。なのにまだ愚かな殺戮を繰り返し、他国を軍事力で恫喝し権勢を握ろうとする国家が少なからず存在する。やはり人間も脳みそは大きいが、大きいだけで虫とさほど変わらないのかもしれない。

ヒラタクワガタなどをみていると常に威嚇し怒っているが、彼らとて自らの種を滅ぼすような武器は持たないし、そんな馬鹿げた戦いはしないだろう。人類も虫達に学ぶ時代なのかもしれない。