A.L.Fのひとりごと


Vol.14 「クマの受難」 The sufferings of the bear


本年はクマの目撃情報や人身被害が相次いでいる。私も先月親子3頭のクマに遭遇した。幸い車からだったので、クマの方から逃げていってくれたが、
いつまた遭遇してもおかしくない状況だ。

テレビのニュースでも毎日のように報道されているが、これはもう異常としかいいようがない。これには、真夏の猛暑とそれに追い打ちをかけた台風や豪雨の影響が深く絡んでいる。
特に出没の多いのは北陸3県が際だって多い。クマが人里に近づくのは暑さによる不作とクマの移動、そして相次ぐ台風で木の実が落ちてしまったせいだという。クマは本来樹上で食事をするので、落ちた木の実はネズミやシカなどに根刮ぎ食べられてしまうため、クマの胃袋に納まることはない様だ。


北陸3県に関しては山の上は概ねブナやミズナラの落葉広葉樹帯で、その下はスギの植林帯になっている。この植林帯がもしクヌギやコナラの2次林(里山)だったならクマはそこで踏みとどまるのかもしれない。無論、それらの2次林とて近年は人の手も入らず荒れ果ててしまっており、意味を為していない所が多いのも原因なのではないだろうか。同じ北陸でも新潟県だけは植林が少ない県だが、クマの被害もまだ目立たないように感じる。台風の通過の課程や被害は同じ筈なのにである。


もちろんそれだけが問題なのではなく、その後の始末にも問題を感じる。人に危害を加えた個体は射殺されて然るべきかもしれないが、ただ人里に出てきただけで射殺されてしまうのはどうかと思う。これには、その地に住んでいる方は違った思いもあるかと思うが、子グマまで射殺されたと聞くと私は残念でならない。


田舎(語弊があるかもしれないが・・)へ行くとやたらに巨大な公共施設や観光施設を目にすることがある。これらを否定はしないが、その予算の一部でも充当すればクマ牧場くらい容易に作れるのではないでしょうか。捕獲したクマを山へ返すのは元より、親を射殺されて行くあてを無くした子グマの世話をする施設が各県に一つくらいあってもいいのではないだろうか。クマを間近で見られることによる理解や教育としてのメリットもあるはずである。


私は小さい頃、幼なじみの家がツキノワグマを飼育していたので触れあう機会を得ていた。クマは犬以上に賢い動物だし、愛嬌もある。しかし、ただ可愛いだけではなく、その力の強さは子グマといえどもかなりなものだ。食欲もものすごいものがある。走るスピードも犬に負けないくらい速い。これらは私が小学生の頃間近でクマと触れあって体得してきたものだ。だからといって山で出会っても平気なはずもなく、そこが野生の動物、すなわち獣なのである。

しかし、その怖さや性格などきちんと把握しておけば、全く知らないよりは対処の仕方も違って来るであろう。具体的には、朝晩や霧の出ているようなときは彼らは徘徊しているから注意する。山へ入る場合は鈴を付け、追い払える得物を何か持つ。あと、絶えず足跡や糞、熊棚、爪痕など痕跡に注意を払う。餌となる木の実などは踏みつけないなど。


ニホンオオカミが絶滅したのは明らかに人が殺したからである。クマも九州では絶滅したといわれ、四国ではほとんど絶滅の危機に瀕している。中国地方でも数は激減している。クマと身近に触れあえばただ闇雲に射殺してしまうのが如何に愚かな行為かきっと痛感すると思うのだがいかがなものか・・