A.L.Fのひとりごと


Vol.15 「特定外来生物」

The creature of the specific importation.

本年6月に公布された「特定外来生物被害防止法」がパブリックコメントなどを経ていよいよ来年4月に施行される。

この法律、ご存じの方は多いと思いますが、具体的には特定外来生物に指定されたものは飼育・輸入・譲渡・遺棄が全て法律で禁じられるものである。
当初指定を想定しているとされた具体例は以下の通り。

●ほ乳類:約50種(タイワンザル、マングース、タイワンリス、アライグマ、ヌートリア等)
●鳥類:数種(ソウシチョウ、インドクジャク等)
●爬虫類:約50種(ミシシッピアカミミガメ、グリーンアノール、カミツキガメ、キングコブラ等)
●両生類:約10種(ヤドクガエル、オオヒキガエル等)
●魚類:約20種(オオクチバス、コクチバス、ブルーギル、カワマス、ピラニア等)
●昆虫類:約20種(スマトラヒラタ、マルハナバチ等)
●その他動物:約30種(アフリカマイマイ、スクリミンゴカイ、セアカゴケグモ、
 イエローファットテールスコーピオン等)
●植物:約20種(オオブタクサ、セイタカアワダチソウ、コカナダモ、オオカナダモ等)


現段階では絞り込みの最中で、どの種を指定するのかまだ決まってはいないが、パブリックコメントの結果を受け、ブラックバスやブルーギルは反対意見が多く(7,785件)どうやら外される見込みとなってきたようだ。応募総数の8割程は上記ブラックバス等の反対意見で占められて、甲虫類に関してはたった3件、爬虫類が4件、両生類が2件、餌昆虫が1件しかありません。この法律が出来て本当に困る飼育を楽しむ方々の意見は上がってないのが現状の様です。


何故こんな法律が出来てしまったのか、元をただせば国や自治体の方針で益を為すとして移入された生物や専門の飼育施設から放たれた動物が生態系を破壊してしまい、駆除せざるをえなくなったという所に付け加えて、昨今のペットブーム(昆虫も含め)で飼育放棄されてしまった生物の氾濫と定着が起因しているのは言うまでもない。


この法律に違反した場合、個人の場合で最高3年以下の懲役、300万円以下の罰金、法人の場合は最高1億円以下の罰金が科せられます。今のままで推移した場合、スマトラヒラタ(Dorcus Titanus Titanus)を現在飼育している方が繁殖した時点で3年以下の懲役となる訳です。昆虫類は20種ほど選定されますから、甲虫でも当然他に身近な虫達も入ってくることでしょう。選考の基準には在来種への悪影響の懸念が重点される筈ですから、国産種との交雑も確認されているホペイ等はオオヒラタと同じくリスト入りする可能性は極めて高いと言えるでしょう。となると、グランディス、フォルモサヌス、クルビデンス、パリー等軒並み入る可能性も無いこともありません。私は甲虫も爬虫類も両方好きで飼育しておりますが、爬虫類の世界はより深刻な状況かもしれません。何故、実際に生態系を破壊して深刻な被害を与えているブラックバスは入らない方向なのか・・この矛盾した法律、みなさん納得出来ますか??


実際に駆除しなくてはならないものは氾濫しすぎており、駆逐出来るはずもなく手が出せないのが現実のようです。釣りの愛好家はこれからもバスフィッシングを満喫できても、我々甲虫愛好家とてこのまま黙っていたのでは外国産昆虫を飼育しているというだけで逮捕される時代が来る事になるのかもしれないと思うとぞっとしてしまいます。

外国産クワガタにしろ外国産爬虫類にしろ現実には相当数の数が飼育されています。本当に特定外来生物に選定されて飼育が法律違反になる場合、一気に放虫や遺棄が行われることでしょう。そうなって既成事実が作られればお役所がいくら力を入れたとて駆除なんてそう簡単に出来るものではない。非建設的な見方をすれば法律が施行される前の今のうちに放虫をしてしまえば問題ないと考える方も出てくるものと思います。で、きちんと飼育している人が犯罪者扱いとなる。
こうやって考えると植物防疫法で制限されたままだった方が良かったのかもしれないとさえ思われてなりません。

クワガタも爬虫類もマイナーな世界ではありますが、飼育愛好家は相当数おられるはず。これを機会に環境省が次回パブリックコメント(ヒアリング)を行った際には実直な意見をする時なのかもしれません。このままでは少なくとも間違いなくオオヒラタの飼育者は犯罪者として裁かれる事になるでしょうから。


※2004.11.13に環境省より、コクチバス、ブルーギルは特定外来生物に指定されました。但し、現時点ではオオクチバス(ブラックバス)は指定から外れております。
++ 2004.11.15記述追加 ++