A.L.Fのひとりごと


Vol.16 「自然災害」 Natural disaster.


本年はみなさんもご存じのように台風のあたり年である。記録のある中では過去最多の10個が列島へ上陸し、爪痕を残していった。それ以外にも豪雨や各地での地震、瀬戸内海地域の林野火災、浅間山の噴火など、本当に自然災害の多い年といわざるをえない。

[2004年、主な被害のあった災害]
●新潟豪雨(新潟、福島)死者不明者16名、負傷者4名、住家被害13,875件
●福井豪雨(福井)死者不明者5名、負傷者19名、住家被害14,156件
●台風15号(四国など)死者不明者10名、負傷者22名、住家被害3,286件
●台風16号(九州など)死者不明者17名、負傷者267名、住家被害53,727件
●台風18号(中国など)死者不明者45名、負傷者1,301名、住家被害33,500件
●台風21号(東海など)死者不明者27名、負傷者97名、住家被害21,969件
●台風22号(関東など)死者不明者8名、負傷者167名、住家被害9,745件
●台風23号(北近畿など)死者不明者90名、負傷者443名、住家被害66,364件
●新潟中越地震(新潟など)死者不明者30名、負傷者1,306名、住家被害4,351件

今年の主な自然災害だけでも死者行方不明者248名、負傷者3,626名、住家被害220,973件という計り知れない被害を7〜10月の間だけで与えている。災害額については「軽く1兆円を超える」との政府コメントもみられるが、農作物や地場産業、交通網への被害はそれ以上に深刻なものだろう。先日の新潟中越地震では新幹線、在来線、高速道路、国道と陸路は全て麻痺した状態が今も続いている。そして、今夜も10万人もの方が避難民となってしまっている現実は想像を絶するものだということが伺える。


上記の主な災害は紛れもなく全て天災なのであるが、かつて人の手が及んだことにより、被害を拡大している面があると私は思えるので今回は取り上げることにした。実際、台風の直接の風でとか、地震の勢いで家屋が倒壊した様なケースはもはや我々には為す術もなく、ただただその災害に遭われた方のお悔やみを申し上げるしかない。だが、全てのケースに於いて一次、二次的な災害として水害や土石流の流出がかなり実際ダメージを与えている。私は思うのだが、これはやはり戦後の山林伐採、植林政策の犠牲となっている面も少なからずあるのではないかと。


戦後、日本の山間部では、ほとんどの原生林が伐採され、杉・桧・唐松などが植林された。これら針葉樹だけで構成された森は保水性もなく、雨を蓄える力など無い。一定量以上の雨が続くだけで、いとも簡単に崩落して土石流となってしまうのも、この事から来ているのではないだろうか?実際、ニュースなどの映像で流されている崩落現場は決まって植林された杉などが横倒しとなり散乱している場合が多い。被害に遭われた方は自然災害だから仕方がないと嘆いておられるのをテレビで目にしたが、全てが本当の意味での自然災害なのだろうか・・?


植林とて、計画的に必要性があって行ったものなのだろうか?今でも丁寧に管理されてうまく活用されている所もあれば、そうでないところも多々目にする。国有林などは圧倒的に植林が多い訳であるが、それらは本年の様な自然災害が多発した場合に、その災害を拡大してしまうことを少しでも考慮したものなのだろうか?
飛騨の白川郷や五箇荘村では今でも立派な合掌造りの家並みが残る。集落の周りの山は雪崩から村を守るためにブナ等で構成される原始の森は大切に残されてきた。豪雪地帯ならではの発想だが、昔の人の実に現実的な選択なのかもしれない。

先の「ひとりごと」でも述べたが、異常な熊の目撃、遭遇被害とて、自然への影響を全く考慮せずに人間の欲だけで、人間に都合の良い木を植えて自然を変えてしまった事が災いしているとしか思えない。伐採・植林により生息域が減少したところへの連続する台風の災害。熊の異常な行動も、この様な自然災害も決して別な次元の話では無いようだ。


我々日本人が自ら撒いた種で自然災害の被害が、もし、拡大しているとしたら本当に被害に遭われた方達は哀れというよりほかない。