事務連絡
平成11年7月27日

各都道府県介護保険担当課(室)長 殿

厚生省老人保健福祉局
介護保険制度施行準備室長


いわゆる「公設民営」等の取扱いについて

 標記については、本年4月の全国介護保険担当課長会議資料の49ページにおいて、その考え方をお示ししているところですが、介護サービス提供施設の運営を民間法人に委託する場合においては、すべからく地方公共団体が指定を受けることとなるのか、という疑義が生じていること等から、今般、改めてその取扱いについて下記のとおりとすることとしましたので、お知らせいたします。

1.「公設民営」の取扱いについて

(1)指定の申請をすべき者は、実際にその者の責任により事業を行っている者であること。具体的には、利用者との契約を行い、及び利用料や介護報酬の収入を行う者ということとなること。

(2)したがって、例えば地方公共団体が、民間法人に対し、

(1) 介護給付等対象サービスを提供するための施設(以下「介護サービス提供施設」という。)の用に供する土地を貸し付けているとき
(2) 介護サービス提供施設の用に供する建物を、普通財産として貸与するとき(これがいかなる場合に可能かについては、2.を参照されたいこと)等は、指定の申請をすべき者は、当該民間法人であること。

(3)しかしながら、地方公共団体が介護サービス提供施設を設置し、地方自治法第244条の2第3項の規定に基づく公の施設の管理の委託として、当該介護サービス提供施設の運営を民間法人に委託しているときは、一般には当該地方公共団体の責任において事業を実施しているものと解されることから指定の申請をすべき者は当該地方公共団体であること。(この場合においては、当該地方公共団体は、人員、設備及び運営に関する基準の遵守に関する責任を負う者として、介護サービス提供施設の運営の委託に関する契約等に基づき、民間法人に対し必要な指導を行う等の所要の措置を講じなければならない。)

(4)ただし、当該地方公共団体が、当該民間法人に対し、地方自治法第244条の2第4項に規定する利用料金の収受として、介護給付等対象サービス提供時の利用者負担及び当該サービスが法定代理受領サービスである場合の当該サービスに係る保険給付(以下「介護報酬」という。)を当該民間法人の収入とさせている場合であって、当該利用者負担及び介護報酬の収入が当該民間法人の当該事業に係る主たる収入であり、当該事業の運営責任が当該民間法人に移っていると解されるときは、当該民間法人が指定の申請をするものとすること。

(5)なお、特別養護老人ホームやデイサービスセンターの公設民営の場合においては、老人福祉法の規定に基づく届出又は認可の申請をすべき者も、指定の申請をすべき者と同一にするものとすること。

2.地方公共団体が国庫補助金等を受けて設置した施設を貸与・譲渡し、又は当該施設において訪問介護、居宅介護支援等の事業を行うことについて

(1)地方公共団体が国庫補助金又は国庫負担金(以下「国庫補助金等」という。)を受けて整備した特別養護老人ホーム等を社会福祉法人等へ無償で貸与又は無償で譲渡することについては、「厚生大臣が別に定める期間を経過するまでの間は、厚生大臣又は都道府県知事の承認を受けないで、貸与又は譲渡前の施設以外の施設に使用し、譲渡し、交換し、貸付け、又は担保に供してはならない」旨の条件を付した上で、無償貸与又は無償譲渡を厚生大臣又は都道府県知事が承認したときは、この時点における国庫補助金等の返還は求めないこととしたものであること。この取扱いの詳細については、別紙1の1.を参照されたいこと。

(2)地方公共団体が国庫補助金等を受けて設置した特別養護老人ホーム等の施設の一部を利用して、訪問介護や居宅介護支援等の事業を行うことについては、施設の設置目的としてこれらの事業が位置付けられていないことから、国庫補助金等を返還しなければならないのではないか、といった疑義が生じているところであるが、今般、こうした場合の取扱いについては、特別養護老人ホーム等の運営に支障をきたさない範囲で特別養護老人ホーム等の一部を居宅介護支援等の事業所として転用する場合であって、「厚生大臣が別に定める期間を経過するまでの間は、厚生大臣又は都道府県知事の承認を受けないで、転用が認められた施設以外の用途に使用し、譲渡し、交換し、貸付け、又は担保に供してはならない」旨の条件を付した上で、転用を厚生大臣又は都道府県知事が承認したときは、この時点における国庫補助金等の返還は求めないこととしたものであること。この取扱いの詳細については、別紙1の2.を参照されたいこと。

(3)なお、(1)及び(2)に基づく都道府県知事の承認に際しては、あらかじめ厚生大臣の承認を受けなければならない(「社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費国庫負担(補助)金交付要綱」第2−9−(2)−ウ)こととされているので、その手続方よろしくお願いする。また、市町村等から、財産処分の申し出があった際には、処分の必要性、理由等を十分踏まえた上で、その適否を検討されたい。おって、財産処分申請手続について別途連絡する予定であることを申し添える。

3.具体的な指定の対象の例については、別紙2を参照されたいこと。


(別紙1)

1.貸与・譲渡における財産処分と負担(補助)金の返還について

(1)地方公共団体が国庫補助金又は国庫負担金(以下「国庫補助金等」という。)を受けて取得した施設を他の者へ貸与、譲渡するなど、当初整備した時とは異なった状況になる場合には、厚生大臣(又は都道府県知事。以下「厚生大臣等」という。)の承認を受けることが必要。(「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」第22条)

※1 厚生大臣等の承認を受けないで譲渡、貸与等を行ってよいのは、(1)受けた補助金を全額納付した場合、(2)厚生大臣が定める期間が経過した場合の2点に限定。
※2 厚生大臣の承認となるか、都道府県知事の承認となるかは、その施設建設事業が、国からの直接補助事業であるか、都道府県を通じての間接補助事業であるかによって決定。

(2)したがって、例えば地方公共団体が現在、設置運営している施設(社会福祉法人等に運営を委託している場合も含む)を、社会福祉法人等へ貸与又は譲渡するには、まず、厚生大臣等に対して貸与又は譲渡の処分申請を行うこととなる。

(3)なお、財産処分の承認や、それに伴う国庫補助金等の返還の要否などについては、個々の事例毎に事情が異なるため、すべての事例について、その取扱いを基準としてお示しすることは困難であるが、介護保険制度導入に際して、特に、問い合わせが多い事例についての一般的な対応方針は次のとおり。

(4)地方公共団体が整備した特別養護老人ホーム等を社会福祉法人等へ無償で貸与又は無償で譲渡することとし、地方公共団体から処分申請があった場合。
 (ただし、無償貸与又は無償譲渡を受けた法人が、引き続き無償貸与又は無償譲渡前と同一の事業を行う場合に限る。)

※1 特別養護老人ホーム「等」には、老人デイサービスセンター、介護老人保健施設、訪問看護ステーションなども含まれる。以下同じ。
※2 社会福祉法人(老人保健施設等の場合は当該施設等を開設できる者であって、営利を目的としないもの)以外の者へ、貸与又は譲渡するときは、それが無償であっても国庫補助金等の返還が生じる場合がある。

→ 「厚生大臣が別に定める期間を経過するまでの間は、厚生大臣等の承認を受けないで、貸与又は譲渡前の施設以外の施設に使用し、譲渡し、交換し、貸付け、又は担保に供してはならない」旨の条件を付した上で、無償貸与又は無償譲渡を承認したときは、この時点における国庫補助金等の返還は求めないこととしている。

※この場合の処分申請手続については、市町村の事務負担を軽減する観点等から、簡素化できないか検討を行っているところ。(別途連絡予定)

(5)上記の条件は、建物の無償貸与又は無償譲渡を受けた社会福祉法人等が、その後、建物を特別養護老人ホーム等以外に使用する必要が生じた場合には、再び厚生大臣等の承認が必要になるということ。

※無償貸与又は無償譲渡を受けた社会福祉法人が、特別養護老人ホームを別の目的に使用することになれば、その時点で国庫補助金等の返還が生じることがある。


(6)また、地方公共団体が有償で社会福祉法人等に特別養護老人ホーム等を貸与したり譲渡したりする場合には、その時点で国庫補助金等の返還が発生


2.他の施設等への転用における財産処分と負担(補助)金の返還について

(1)地方公共団体が国庫補助金等を受けて取得した施設の一部又は全部を他の施設へ転用しようとするときには、施設の貸与・譲渡の場合と同様に、厚生大臣等の承認を受けることが必要。(「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」第22条)

※厚生大臣等の承認を受ける必要があるのは、貸与・譲渡・転用のほか、交換、担保に供する場合など。

(2)なお、財産処分の承認や、それに伴う国庫補助金等の返還の要否などについては、個々の事例毎に事情が異なるため、全ての事例について、その取扱いを基準としてお示しすることは困難であるが、特に、問い合わせが多い事例についての一般的な対応方針は次のとおり。

(3)特別養護老人ホーム等の一部を居宅介護支援等の介護給付等対象サービスの事業所として使用する場合。
 特別養護老人ホーム等の運営に支障をきたさない範囲で特別養護老人ホーム等の一部を居宅介護支援等の介護給付等対象サービスの事業所として転用する場合であって、「厚生大臣が別に定める期間を経過するまでの間は、厚生大臣等の承認を受けないで、転用が認められた施設以外の用途に使用し、譲渡し、交換し、貸付け、又は担保に供してはならない」旨の条件を付した上で転用を承認したときは、この時点における国庫補助金等の返還は求めないこととしている。

※1 施設全部を他の施設に転用する場合については、当初の整備目的を踏まえた上で、周辺状況の変化や転用の必要性等を検討した上で、承認の判断をすることとともに、国庫補助金等の返還を求める場合もある。
※2 今後、新たに整備する施設で居宅介護支援事業を行うことも予定されているときには、国庫補助金等の申請の段階で、あらかじめ居宅介護支援事業等のためのスペースを除外しておくことが必要。
※3 他の事業の事業所に転用する面積は、原則として特別養護老人ホーム等の補助基準面積を超える部分とすることが望ましいこと。

(4)ただし、在宅介護支援センターで、居宅介護支援事業者の指定を受けようとする場合、居宅介護支援事業として行うべき業務は在宅介護支援センターで本来行うべき事業の一つであると考えられるため、改めて財産処分の申請を行う必要はない。

※在宅介護支援センターで居宅介護支援事業のみ行い、在宅介護支援センターとしての他の業務を行わない場合には、財産処分の申請が必要。



(別紙2)

<具体例>

(1) 市町村がその設置した特別養護老人ホームを、普通財産に転換した上で無償で民間法人に貸与し、民間法人が特別養護老人ホームを運営する場合

→ 民間法人を指定。

(2) 市町村がデイサービスセンターを設置し、その管理を民間法人に委託する場合

→ 市町村を指定。
 ただし、利用料金方式を採用し、運営責任が移っていると判断される場合にあっては、民間法人を指定。

(3) 市町村がデイサービスセンターを設置し、その管理を民間法人に委託するが、デイサービスに係る利用者負担及び介護報酬は市町村が収入する場合で、かつ、当該センターについて、その一部を訪問介護の事業に転用することにつき市町村が厚生大臣等の承認を得た上で、民間法人が市町村の委託を受けて、当該センターを事業所として訪問介護の事業を行う場合。

→ デイサービスについては、市町村を指定。
 訪問介護については、デイサービスと一体的に運営され、利用者負担及び介護報酬も市町村が収入する場合は、市町村を指定。逆に、デイサービスとは切り離した運営がなされ、利用者負担や介護報酬も民間法人が収入する場合は、民間法人を指定。

(4) 市町村が在宅介護支援センターを設置し、その管理運営を民間法人に委託している場合に、民間法人が当該センターを事業所として居宅介護支援の事業を行う場合。

→ 居宅介護支援の事業が市町村からの委託の内容として位置付けられ、実態上も当該事業を市町村が運営していると判断される場合は市町村を指定し、そうでない場合は民間法人を指定する。

(5) 市町村が、在宅介護支援センターの事業を民間法人に委託しており、当該センターは民間法人が設置している場合で、民間法人が当該センターを事業所として居宅介護支援の事業を行う場合。

→ 民間法人を指定。