介護保険関係者だけの短編小説(小説じゃあないって!)

第12話  「とうとう始まってしまったけど・・」
〜始まれば一件落着なんて・・・そんなこと無いの!〜

 きわめてリアルな会話・・・・・・・・・・介護保険ノンフィクション即席小説
 介護保険関係者だけが解る楽屋受けだらけ
 日頃のアフターファイブの出来事を小説風におもしろおかしく書き綴った介護保険関係者のためだけの物語です。
 登場する人物、団体は全て架空のものです。

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 作:野本史男 
 平成12年4月2日


〜序〜
 あ〜あ、時間は待ってくれないもので、とうとう始まってしまった介護保険。
 3月は小説がかけなかったのは、スランプなのか・・・本当に介護保険が始まっちゃうってナーバスになっていたのか???
 とりあえず、始まってしまったので、心機一転再開します。
 ちょっと辛口になりがちなのはご勘弁!


混乱続きの要介護認定調査とケアプランづくり
山田 いやはや、毎日夜中の1時くらいまでかかっちゃって!
田中 ちゃんと風呂入っているの?
山田 まるで自分が短期入所しているみたいだったわ
田中 どこも大変だったね。
    ところで、どんな案配ですかね?
山田 システムが遅れてしまって、もう介護報酬額なんて暗記しちゃったわ!これぞ人間コンピュータ!
    でもね、事業者を決めていくときが一番大変!なんて言ったって既得権優先じゃない、新規さんなんて、どこも敬遠されちゃってね。
田中 やはりそうなっちゃう!?
山田 そう、やはり受け入れ先もこれまでの人の方を大切にするから、どうしてもねえ・・・
田中 ところで、鈴木さんの方はどう?
鈴木 要介護認定の方はねえ、主治医意見書がたらい回しになった例がある。それと、要介護認定調査員に相当なバラツキがあって・・・
    それと自立となった人たちをどうするか・・・結局予防施策等で現状維持を図ろうとしているんだけど、サービスが無くなっちゃうようなことのないようにするつもりだけど・・。予防と生活支援施策の要綱づくりにも苦労続きでね。
田中 とにかく大変な1ヶ月だったよねえ。
鈴木 それより、もっと大変なのは、介護保険準備係が正式に介護保険課になるんだけど、人員が半分くらいになっちゃう!大丈夫かなあ?
田中 それはそれは、苦情の出具合と厚生省がどのような動きを見せるかにもよるね。これまでの作業をやり直せなんてことにならなければいいけど、その課は残業時間のトップになっちゃうかもね。
    いずれにしても、福祉課や保健課との連携をしながら事業推進に努めなければやっていけないだろうから、苦労されるだろうねえ。
山田 ねえ、いっそのこと、今回は色々なトラブルやエピソードを語り明かさない?
鈴木 いいねえ。
田中 それじゃあ、ジャンル別に語ろうか


ドタバタの告白タイム
鈴木 田中さんも苦労されたようだけど、不服審査もあったよね。
田中 そうそう、まるで裁判所が判決文書くみたいで、なれない言い回しに苦労したよ。
鈴木 他の都道府県なんかはどうだったんだろう?
田中 う〜ん。とにかく、30件以上出ている県もあったね。新聞報道も少なくてその後の結末は全然判らない
山田 あまり話題性がないのかしら?でも、けっこう苦情なんて出ているんじゃないの?
田中 それがあまり出ていなくてね。まだ身につまされた問題として住民は認識していないのかなあ?
鈴木 だって、介護保険スタートした4月1日の新聞報道じゃあ、苦情や問い合わせも少ないんでしょ?
山田 そうそう、マスコミもそんなに問題だって騒がないよね。
鈴木 粛々とスタートさせて、馴染ませちゃおうってことかな?
山田 じゃあ、現場だけが苦労すればいいって言うの?
田中 いやいや、有珠山の噴火にかき消されたのかもね。

田中 ところで、要介護認定調査員の調査で何か気になることってある?
鈴木 やはり痴呆の調査と特記事項だね。
山田 私たちって、ケアマネとして訪問調査するでしょ?そのときの会話を教えてあげるね。
    夫婦で生活している人でさあ、ご主人が要介護度1になったんだけど、調査員が訪問したときにね、すごい第一声があったんだって!
鈴木 え!?なに?
山田 それがね、「あ!奥さんがいらっしゃったんですか!?それなら対象にならないかもしれませんね」って言ったんだってさ!
鈴木 審査会でも「家族がこんなにいるのに」なんていう会話があったりして。それって、介護保険制度は関係なくなったって、研修で口が酸っぱくなるほど説明してもダメなんですよ。 
山田 施設だって同じ発想の職員がまだいるのよ。
田中 この思想って、日本人の感覚では払拭できないのかなあ?なかなか明治時代の旧民法の考え方が拭えないよねえ。
    でも、とにかく啓蒙啓発は始まったばかりだよね。頑張らなくっちゃ!

山田 それとね、てきぱきした認定調査員さんがいるんだけど、てきぱき過ぎて立会人も本人もついていけなくって、「勝手に決めつけられた」って言われた。
鈴木 そういうの、どんどん伝えて欲しいなあ。内容を確認しておかしかったら、認定し直したいよ。今度、ケアマネの告発部屋でもつくろうか?
山田 そしたら、鈴木さんが役所に泊まり込むことになるわよ。
鈴木 ウウウウウウ・・・そんなにすごいの?
山田 1割もいない5分くらいかな?・・・・
田中 それって、全体ではけっこうな数になるんだよ。
    ところで、いずれにしても、自立判定の人たちには何らかのサービスを考えるんでしょ?

鈴木 そうだね。既存のサービス利用者には、回数が減っても何らかのサービスでモニタリングするつもりだよ。
田中 それを聞いてほっとしたよ。この間も、ある町で自立ケースのケース検討会議の委員として出席してきたけど、ちゃんとやれば、フェイスシートを見れば問題点が判るよ。告発部屋も必要だろうけど、まずは、自立ケースを再度チェックすればある程度見直し対象者は見えてくると思うよ。特にこれまでサービスを受けていた人なら、サービス提供機関に照会すれば一発だよ。
鈴木 そうだよね。忙しくてもやってみるか!
山田 上司から余計なことするな!なんて言われないようにね。だって、介護保険制度は、不服申立制度だってきちんとしているから!なんていう理屈もあるじゃない?
田中 それじゃあ、権利擁護制度だって4月1日からちゃんと機能しているの?って言ってやりなよ。
鈴木 ぼく、職場にいられなくなっちゃうかな・・・・・
田中 まあ、言い方というか、アプローチの仕方だよね。
山田 せっかく黙っているんだからそのままそっとしておくなんて、許せないわ
田中 そういきり立つなって!

田中 ところで、ケアプランの方はどうなの?
山田 暫定ケアプランを作れって言われたけど、それはそれで大変!
    とりあえずアセスメントは一通りやったからね。
田中 どのアセスメント手法を使うとか決めていたけど、混乱の中でどうなっちゃたんだろう?
鈴木 県には届けたようだよねえ
山田 そんなことは、どこかにすっ飛んでしまったけど、システムだって、給付管理に間に合えば良いみたいな感覚よ。
田中 やはり、ちゃんとやると時間がかかるんだね。でも、貴重な体験をしたんだよ。
山田 なんで?
田中 だってね、介護保険制度は施行時点からシステムで運用するけど、手作業で体験できたってことはすごく貴重。
山田 それって、嫌味?
田中 そうじゃあなくって、システムを導入した以後に、制度上の問題かシステム上の問題かを一発で見分ける力を持ったことになる。更に、システムのバグも発見しやすい。
    更に、システムがハングアップしても何とが手作業でしのげる。
山田 物は言い様だってこと?
田中 システムの立場からはそういうこと。
山田 なんだか変!変!変!
田中 まあまあ
山田 それとね、色々な施設にお願いして回っていたら、それぞれの機関から診断書出してください。って言われたの。たしか、田中さんが去年の夏に問題だって言っていたことがそのまま出てきたみたい。
田中 それで、診断書の様式はどうなっているの?
山田 それがね、やはり別々。
田中 医療機関の指定はない?
山田 医療系の場合はここで・・・っていうみたいね。
田中 それだけでも従来の何倍にも出費が嵩むことになるね。
山田 それって、やたらに施設をバラバラ使うなっていうみたいで・・・
田中 そうだよね。山田さんは別だろうけど、ケアマネもバラバラ施設を利用されたら給付管理で大変だろうから、対策に乗り出さないなんてことにはならないだろうか?
鈴木 本当に田中さんが心配していたことが現実になってきた・・・結局調整しきれなかったのが悔やまれるなあ
田中 小規模市町村では、市町村を跨ってサービスを利用するだろうから、市町村レベルでは結局どうしようもない。都道府県レベルとか国レベルで考えなければならなんのだから・・・
鈴木 そんな声が聞こえるのは、まずはケアマネさんだよねえ。ちょっと情報交換会でも開かなければいけないな。
田中 是非そうして欲しいなあ。ところで、鈴木さんの方では、住民の反応はどうなの?

鈴木 それはね、問い合わせは4月3日からって思っている。自立系のサービスがきちんと動き出せばなんとかしのげるけど・・・
    まさか、デイサービスの送迎を道ばたで待っていたらどうしよう!?家族が問い合わせに目を離している間に痴呆のおばあちゃんが車にはねられちゃったなんてことがなければいいけど・・・・
田中 でも、各家庭には連絡したんでしょ?
鈴木 うん。でも、いくら連絡しても、ちゃんと動いてくれるかどうか判らないのが現実だからね。
山田 とにかく、4月もてんてこ舞いってことよ。
田中 そうだね、Y2Kの時は12月31日と2月29日だったけど、介護保険は5月10日かな?
山田 嫌だ嫌だ!ゴールデンウイークは遊びに行くんだ!
鈴木 そう願いたいね。夢のまた夢のような気がするけど・・・



田中 あっという間に時間が過ぎちゃったね。
鈴木 あ、こんな時間だ!明日辞令が出るんだ。所属する課の名称が変更になるだけの辞令だけどね。
山田 私もまだケアプランを作らなければ・・・・
田中 僕も異動なし。周りがかわってもな〜んにも変化しない。
鈴木 そうそう、要介護認定調査員と要介護認定委員が異動するんで、研修の方よろしくね。
田中 は〜い。すぐやります。

山田 じゃあ、また一年よろしくね。
田中 は〜い。


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