介護保険関係者だけの短編小説(小説じゃあないって!)
第13話 「混乱はいつ収まる!?」
〜その1 今更ですが痴呆の判断基準って?〜
きわめてリアルな会話・・・・・・・・・・介護保険ノンフィクション即席小説
介護保険関係者だけが解る楽屋受けだらけ
日頃のアフターファイブの出来事を小説風におもしろおかしく書き綴った介護保険関係者のためだけの物語です。
登場する人物、団体は全て架空のものです。
無断転載を禁止します。
誤解を招かぬよう、フォローを入れるか、全文を転載することを条件に、事前承諾をいただければ転載可能です。
作:野本史男
平成12年4月5日
〜序〜
職場の前は、すばらしい桜並木なんですよ。
よく、テレビのロケなどで使われるところでもあって、なかなかロケーションはいいんですが・・・・
明日の雨と今度の日曜日の雨で散ってしまわなければ良いんですが・・・・
介護保険担当者に春はいつくるんでしょうかねえ?
介護保険短編小説も、本来ならハッピーエンドの最終話にしたかったけど、残念ながら、これから盛り上がってしまうんでしょうか?
最近、友人からメールやらアフターファイブの場面で「ネタ」をもらうようになってしまって・・・・書きたくなるような話題がいっぱいです。
痴呆ってみんな要介護度1になるの?
山田 ねえねえ、ちょっと聞きたいんだけど、痴呆の人って、ぜ〜んぶ要介護度1になるの?
田中 どうして?
山田 だって、私のケアマネのお客さんはみ〜んな要介護度1
田中 偶然だよ!!って言いたいけど、試しにシミュレーションしてみると、要介護度1に限りなく近く判定されちゃうよね。
山田 そうでしょ〜?
鈴木 誓います!決していい加減な要介護認定している訳じゃあありませんからね!
山田 だれもそんなこと言って無いじゃん!一次判定のことよ
田中 二次判定はどうなっているの?ってこと言ったんじゃないの?
山田 どうしてそこでライター持ってガソリンまいちゃうかなあ〜!
田中 ごめんごめん
山田 でもさあ、要介護度1になったからって、施設から体よく追い出されちゃった人とか、相談に来るわよ。
田中 ほんとう?
山田 うそ言ってどうするの?それとは逆に要介護度高くなってしまって、1回の利用料が跳ね上がって、負担がそこまでできませんって言われるケースもある。
田中 そうだよねえ、回数減らせばいいって言う訳じゃあないからね・・・自己負担額はけっこうボディーブロウみたいに効いちゃうよね。
鈴木 でもね、こんな話って、要介護度1、2っていう基準自体、誰もが納得できる状態として整理できないからじゃないの?
田中 そうだよ
山田 状態像の定義ができていないからでしょ?
鈴木 そのとおり。痴呆の部分は、市町村の職員だって専門職員で固めている訳じゃあないから、窓口担当者だって事務職だし、判ったフリしているけど、判っていないんだろうねえ。
山田 ねえ、保健婦さんいるんでしょ?
鈴木 2人いるけどね。保健婦さんが全員痴呆のことは任せとけ!っていうわけじゃあない。ずっと、痴呆は県の保健所が担当しているから、ノウハウは少ないよ。
山田 へっ?そうなの?
田中 まあ、全員そうっていうことじゃあないけど、難しい部分であることは事実だよね。
山田 ふ〜ん。
鈴木 要介護認定調査員も、得意分野がやはりあるしねえ。
山田 だから全国三か所に「高齢者痴ほう介護研究センター」がオープンするんでしょ?
田中 よく知っているね。
山田 読売新聞に書いてあった・・・たしか、要介護認定の在り方の研究、要介護認定技術の確立、介護専門家の育成、権利擁護システムの構築をセンターで早急に検討を始めるだって
痴呆の取扱い、今どうすればいいの?
鈴木 それで、今をどうすればいいの?
山田 そうそう、今困っている人は我慢していればいいの?
田中 当面の間は、痴呆のことが判っている人たちが勉強会を繰り返していかなければならない。
山田 実習に行ってもいい。
田中 動き始めた介護保険で、走りながら何かしなければならないって、けっこう大変なことだよね。
鈴木 ところでさあ、要介護認定のあり方の研究と技術の確立って、これから敷地を探すから、建物ができたら考えましょうね!って行っているみたいだよね。
田中 僕もそう思うなあ、それまで、要介護認定の仕組みは見直しません。って行っているようなものだよね。
山田 そう思う!!やはり、今の人たちをどうするか考えなくっちゃ
鈴木 でもさあ、独自の判定指針!って、また記事になっちゃうようなこと、やろうっていうことになるし、ちょっと、躊躇しちゃう
田中 僕は判定指針を出すことが目的じゃなくて良いと思うなあ。だって、要介護認定調査員が状態像を判断する部分が問題だと思っているから。
鈴木 っていうことは?
田中 つまりさあ、痴呆の方の徘徊が目的があるか否かっていうことで、自立か問題行動ありかを判断する場面があるよね。痴呆の人が何かする行為は、基本的には目的があるんだよ。自分なりのね。でもさ、それが状況判断を適切に行った行為かどうか?結果を予測した行為なのか?っていうことで見極めるんだよ。
鈴木 もう少し説明して
田中 そうだね、例えば、外出するときはある程度着替えをして外に出るよね。でも、外に行くという目的はあっても、下着のままででかければ、問題でしょ?墓参りに行って来るって、近所のお寺だったら、いいけど、お墓が日帰りじゃあいけないところだったら、どうするの?目的はちゃんとあるんだよ、それなりの・・・
山田 私もね、収集癖があるから、っていうおばあちゃんの家に行ったら、ちゃんと分別して収集しているですよ、どうしてかな?って思って色々生活歴を聞いたら判ったの。おばあちゃんね、戦争中一所懸命鉄や銅を収集して生計を立てていたんだ。だから、家の中の自分の近くには銅を、部屋の中には鉄を、判らないものは家の周りに置いてあったの!すごいでしょ?
田中 それでも目的があるから問題なしとするの?
鈴木 常識じゃあ考えられないから、問題ありでしょ?
田中 それじゃあ、施設で寮母さんが自分で何でもやっているっていうから、自立だって判断したとするでしょ?でもね、寮母さんは常に利用者の方々を無意識に見守っているんですよ。無意識にね。そして、ちょっとトラブルがありそうだと感じるとね、無意識にアプローチできちゃうから、問題行動を未然に防いでいるんだよ。それも問題行動なしというの?見守りも必要ないとするの?
鈴木 そういわれるとね・・・
山田 うんうん、無意識の・・・ステレオタイプを取り除いて判断することが必要ってことなのね。
田中 そのとおり。そのためには、かわいそうとか、何とかしなくちゃとか、そういった先入観も排除しなければならない。厚生省が言っている利用施設の職員がその者の要介護認定調査をしちゃあいけない。っていうのはよい意味でも悪い意味でも理屈のあることなんだ。
山田 ふう〜ん。判っていたような判っていなかったような・・・・
高齢者痴ほう介護研究センターで何して欲しいの?
山田 ところで、高齢者痴ほう介護研究センターで何するの?
田中 そうだね、やって欲しい研究は、まず、誰もが判る判断基準をつくってもらうことかな?
鈴木 当然そうでしょう。
田中 でも、僕が考えているのは、簡単なことじゃあないんだ。判断基準に使用される言葉全てに定義が付けられた状態を言っているんだ。
山田 それって、すごく大変な作業なんでしょ?
田中 そうなんだ・・・簡単にはできないとおもうなあ。
山田 きっとそこから始めちゃうと何年も答えが出ないと思うわ。でも、それをやらなければ、研究結果をきちんと反映させられないと思うわ。
鈴木 そうですね。役場の中でも仲間同士で話していても、思っていることがずれているなって感じるときがあるんですよ。特に保健婦さんと一緒に仕事していると、顕著に感じる。
田中 だって、今の福祉で使われている状態像を表現する言葉の多くは、抽象的表現だから・・・。自分が過去に経験した状態を背景に言葉を理解して、予後を見極めてしまっているんだと思うなあ。
鈴木 判るような気がする。
山田 例えば、痛いっていう表現も痛みの感覚が個人差があるようにね。
田中 きっと、研究センターではある程度の定義を作ってくれると思うけど・・・でも、それまでの間に状態が悪くなって、そして亡くなられていく。今どうするか、当面の最善策を考えて欲しいものだよね。
鈴木 数ヶ月様子を見て、問題が出そうだったら対策を講じようかな?あっそうか、その「問題」という表現が曖昧だって言われちゃうんだよね。
田中 まあまあ、いい加減って、本来は「ちょうどよい」という言葉だろうけど、福祉がいいあんばいですすめられなくなっちゃうのかもね。
山田 美しい日本語を残しましょうね。
田中 まあ、研究機関と運用機関がそれぞれにちゃんと機能していけば介護保険も徐々によくなっていくだろうね。
そして、研究センターできちんと福祉の定義付けの基礎を含めて研究を確立していって欲しいですね。
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