介護保険関係者だけの短編小説(小説じゃあないって!)

第14話  「混乱はいつ収まる!?」
〜その2 情報Divideっていう問題、介護保険にも当てはまる?〜

 きわめてリアルな会話・・・・・・・・・・介護保険ノンフィクション即席小説
 介護保険関係者だけが解る楽屋受けだらけ
 日頃のアフターファイブの出来事を小説風におもしろおかしく書き綴った介護保険関係者のためだけの物語です。
 登場する人物、団体は全て架空のものです。

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 作:野本史男 
 平成12年4月6日


〜序〜
 今夜、東京に行って来ました。
 ところで、東京と言えば、手元に23区の介護保険実施状況資料があり、けっこう面白く拝見いたしました。
 ふ〜ん、保険料はほとんど同じ額なんだなあ・・・条例整備状況は、突出してよい区が2カ所あるぞ!
 なになに、個人情報関係を記載しているところは意外と少ないと・・・
 フムフム・・・・。
 まあ、介護保険という市場では、いずれこういう調査を全国的にやって公開して、ミシュランみたいな本も出てくるのだろうなあ・・。
 さて、本日あったことを織り交ぜてお話ししましょう。
 
 東京駅で22時の通勤快速に乗車するか、その2本前の電車に乗ろうかコンコースで躊躇していたとき・・・・・・
 おっ、電話だ!


短期入所の退所日にその他のサービス利用できます?
山田 いま、いいですか?
田中 ちょうど東京駅乗り換えタイムだからよかったけど、どうしたの?
山田 いま、ケアプランを作っている所なんです。
田中 いいよ、どうしたの?
山田 あのですねえ、短期入所なんですけど、短期入所の後に、別の機関の短期入所を入れることって、許されるのかしら?
田中 そういうケースって、確かにあるよねえ
山田 たしか、田中さんの作った情報システムに、そんな説明があったことを思い出したんで・・・・
田中 うん。よく覚えていたねえ。でも、措置の時代の短期入所だよ。だから、介護保険ではちょっと話が違う。
山田 措置と介護保険とどうちがうの?
田中 それはね、措置の時代の短期入所ってね、本来は1泊2日の経費を補助していたんだ。ホントはね。でも、要綱上は「日」だったから、それをリカバリするためにシステムに組み込んだんだよ。それは、ショートをつなぐ場合、ダブって補助金を受けるのはまずいから、宿泊あけの日は、あけた方の施設が補助金を受けないように設計したんだ。
山田 そうそう、思い出した。それで、介護保険は?
田中 たしかね、資料がないから正確じゃあないけど、たしか、ショートの明けの日にその他のサービスを受けられないのは、医療系だけはきちんとQ&Aに書かれていたと思うなあ。でも、だめなのが限定されているから、規制のない部分はいい。ということになるけど・・・・でも、よしとすべきことではないよね。
山田 どうして?
田中 だってね、短期入所をつなぐのはどうして必要なの?って聞かれて、その答えは、施設がいっぱいだからたらい回しにせざるを得ないとか、尋常ではない特別な事情があるからでしょ?
山田 そうなんです。実は・・・・
田中 だからね、結論から話しておくとね、ダメと言われていないことは、とどのつまりしてよい。ということなんだけど、保険者や県に問い合わせしたり、実地調査に行ったときに、好ましくない事例として「利用者の自己負担上も不利益なこととなるからそのようなことの無いよう注意してください」と指導対象となるということなんだろうね。
山田 過誤調整なんてことにはならないかしら?
田中 まず、過誤調整って、行ってはいけないことをしたりとか、あり得ない請求を行ったりとかしかできないはずだからねえ。ケアプランを市町村に送った際に差し戻されなければ承認したことになるから、ケアマネとしてとがめられることはない。
山田 ところで、請求システム上ハネられちゃうとかは?
田中 短期入所の入所日や退所日にヘルパーが入ることだって、あり得ることなんだから、システム上施設からのレセプトがはじかれることは無いと思うなあ。はじかれたらはじく根拠が通知とかが無ければダメだしね。
山田 ほっとしたわ。ありがとう!
田中 でもね、ほっとしちゃわれると困るんだなあ。短期入所の利用可能時間は、1日は1日。つまり、理屈上では、退所日は少なくとも3食食事ができるわけだからね。ホテルのように延長料金がどうの、ってことはないんだから。ところで、契約書はどうなっているのかな?
山田 あっ!後で確認しておくから・・・・
田中 まあまあ、焦らずにちゃんと確認してね。退所日も24時間分の利用料と同じ金を徴収するんだから、利用者にちゃんと説明できるようにしておいてね。
山田 は〜い。最後に、そういうダブリって、前例あるのかしら?
田中 う〜んとね、確か救護施設あたりは、そういった運用していたよね。
山田 ありがとう!
田中 ぼちぼち、電車の時間だから、じゃあね!
山田 またよろしくね!


透析患者の介護保険
え〜!?また電話だ!
木村 すんません!
田中 は〜い!
木村 ちょっと伺いたいんですけど、要介護度1で、人工透析をしている患者さんで、視覚障害もあるんですが、最近急激に状態が悪くなりましてね。火をかけっぱなしにして忘れちゃうし、転倒はするようになるしで、透析にいけなくなったんで、何とかならないのかって問い合わせがあったんです。どうすればいいのか・・・・判らなくてね・・・。
田中 はいはい、この様なケースってありますよね。もしかして、主症病名は、糖尿?
木村 何で判るんですか!?そうですけど。
田中 だって、糖尿病でそういった状態になる例を聞くからね。
木村 へえ〜!?たしかに・・・糖尿病性腎症でしょ、白内障でしょ・・・
田中 あっ、糖尿病性網膜症じゃあないの?ごめんごめん。
木村 え?何か違うの?
田中 こっちが早とちりしただけ。まあ、ご用件をどうぞ
木村 それでですね、役所に話したら、ケアマネに相談しろ、って言われてしまって。ケアマネに電話したら、医療の方だからって断られてしまって・・・・
田中 あ〜あ、たらい回しが始まっちゃう。介護保険と医療と福祉の三つどもえのねえ・・・
木村 まさにそのとおりなんです。そこで、困ったときの神頼みって訳
田中 まずね、今血液透析に通ってらっしゃるんでしょ?それなら、先ずそこで相談してみることが一番ですよ。またね、主治医の意見書を書いてくださったところがそこならそこが一番なんだろうね。
木村 もう少し教えてくださいよ。
田中 それはね、介護保険の利用如何にかかわらず、透析は続けなければならないでしょ?在宅透析もCAPD以外でも可能とはなったけど、きちんと管理ができなければだめだから・・・。
木村 透析で入院はできないんですかねえ?
田中 今までの事例では、透析だけを理由にして長期入院は無理みたい。でも、今の状態なら、状態を落ち着けるための入院も考えられるから、通院ができないという状況も含めて主治医に相談したらいいと思うなあ。
木村 誰が相談するんですか?
田中 そうですね、ご本人かご家族かってところですね。
木村 ところで、ケアマネは相談に乗ってもらえないんでしょうかねえ?それと、こういう場合って、介護保険は受けられなくなっちゃうんですか?
田中 まず、どちらが受けられてどちらが受けられないといったことはないでしょうね。だって、目的が違うんだから。
木村 どういう意味で?
田中 透析が必要な方であるから、医療は継続して利用しますよね。そして、介護が必要なら、その介護が必要な部分を介護保険を受ける訳だから。つまりそれぞれ必要ってこと。
木村 それをトータルに相談する場がないってことですか?
田中 う〜ん。たしかに言われてみれば、介護以外の部分もケアマネが調整してくれるか?ってことになるからね。ケアマネと病院のMSWとの連携とか考えられるけどね。
    それとね、介護施設を利用して透析ができるか?って言われるとね、透析が可能な施設を探すことはまた、ひと苦労だからねえ。
木村 そうなんですよ。近くには条件的に満たされるのは見つけられなくて
田中 たしか、何カ所かは透析可能な病院で療養型病床群があったよねえ。
木村 あっそうでしたか!?
田中 でも、医療上療養型がいいのかどうかは、まず先生に相談してからだからね。病状からみて、どういう環境で治療が必要なのか決定するのは主治医の先生だよ。
    療養型と透析可能な施設は、将来のための事前知識っていうことを忘れないでね。
木村 はい判りました。やはり、情報がないと本当にてんてこ舞いですね。
田中 そうだよねえ、情報不足のためにせっかくのお客さんを逃すことにもなるね。アメリカで深刻な問題となりつつある情報Divideって、情報があるかないかで、貧富の差が出てしまうっていうことなんだけど、お客を逃すっていう意味では、同じことなのかもね。
木村 なんだか身にしみてしまいますね。ところで、電車の方はいいんですか?
田中 ああ、23時の通勤快速にするから、問題ないよ。
木村 へえ〜けっこう頻繁に通勤快速が走っているんですね。
田中 あのなあ!


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