介護保険関係者だけの短編小説(小説じゃあないって!)

第16話  「利用者の自己負担 どうやってチェックする?」
〜指導や監査、種類はたくさんあります!〜

 きわめてリアルな会話・・・・・・・・・・介護保険ノンフィクション即席小説
 介護保険関係者だけが解る楽屋受けだらけ
 日頃のアフターファイブの出来事を小説風におもしろおかしく書き綴った介護保険関係者のためだけの物語です。
 登場する人物、団体は全て架空のものです。

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今回からの登場人物(とりあえず、人事異動やトラバーユがありました・・・・ってことにしておきます)
 田中 コンピュータ屋さんと間違われる県職員。実はケースワーカー
 山田 とある介護保険事業所のケアマネージャー(社会福祉士さん)
 鈴木 市役所介護保険課職員
 木村 町役場保健福祉課老人福祉担当職員。実は、かつて企業の人事部に勤務していたこともある。 
 斎藤 老人ホーム職員

 作:野本史男 
 平成12年6月1日


〜序〜
介護保険スタートから早2ヶ月
ふと周りを見ると、あっという間に白髪が増えた人、ノイローゼ気味になったケアマネ。
悲惨な現実は、現場の従事者だけじゃあないみたいです。
事務処理が間に合わずに一部の給付がスムーズに受けられない人、理不尽な請求を受けて悩んでいる人たちが・・・・・・・・


〜久しぶり!〜
鈴木 久しぶりに集まらない?
山田 いいわねえ。鈴木さん、いつになく明るいじゃない。
鈴木 だいぶ楽になったから
山田 そんなに!?
鈴木 いや、介護保険に関わる前ほどではないけど、数ヶ月前までと比較するとね。
山田 そうねえ、私も多少楽になったかしら?
田中 みんなそんなこと言って、上司に聞こえたら、仕事たっぷり分けられちゃうよ!
山田 比較論の問題よ。標準がどのくらいか、麻痺しちゃって判らなくなっているのよ。
鈴木 僕もそう思うなあ。
木村 僕なんて、前より忙しく感じる。やはり、人が少なくなったから・・・・
田中 そうそう、やはり、人口が少ないからって言っても、事務の種類は僕たちと一緒だものねえ。
木村 そうだねえ、鈴木さんの所と比べると、1/4くらいかなあ?
山田 そうか!鈴木さんは力仕事、それに対して木村さんは・・・・
田中 それ以上言っちゃあいけないよ。
木村 萬屋町村担当者と読んでくださいよ。でもねえ、ジャンルは豊富だけど、ケースが出ないと知るチャンスもないし、覚えなくてね。結局鈴木さんの所に聞くことになって・・・・
山田 それじゃあ、大きな本屋さんと小さな本屋さんの様なもの?
斎藤 ちょっと深いけど、何となく判る。つまり、コーナーはたくさんあるけどいろいろな本が取りそろえられていない。っていうことかな?
山田 ピンポーン


〜自己負担額多くない?〜
鈴木 そうそう、最近、食事サービス費の請求なんかで、利用者さんから施設の領収書を持参するケースが増えているでしょ?
木村 ぼちぼちね。
鈴木 でさあ、施設によっては、介護保険以外の経費が月10万円近くかかっているところがあるでしょ?
木村 僕の所もあるよ。
斎藤 そんなに取っているんですか?一体何を取っているの?
木村 僕の所は、電気代やらタオル代やら雑多な什器類かな?
鈴木 パックものもあるよねえ。雑費一式みたいなもの・・・・
木村 僕の所はそんなアバウトな例はないけど、鈴木さんはどう対処しています?
鈴木 苦情で出れば対応するけど、やはり、契約内容に立ち入ることにもねえ・・・・間に入ってばさばさと立ち回るにはちょっと証拠不足だし・・・
山田 私の作るケアプランは、法内自己負担額しか判らないから・・・・給付管理を行っていても、相談が出ないとその部分は判らないし・・・・
斎藤 でもさあ、田中さんの所では、対策でもあるの?

田中 そうだねえ、まず、内容をちゃんと見ないとね。
山田 それじゃあ、一式って言うのは?
田中 それは、ちゃんと明細をもらってくださいと言うし、直接事業者さんにお話しすることもある。
鈴木 それじゃあ、使ってもいないものが含まれていたら?
田中 それも、その分は返してくださいって言うだろうね。
山田 それは、どこが言うの?
田中 事業者に対する苦情処理を担当するところだよ。
山田 でもさあ、それって、苦情がなければ対応しないっていうこと?
田中 あ、そうじゃあないよ。事業者指導もあるから、事前に情報があれば、重点的にチェックする。
斎藤 その手があったか!
鈴木 そういえば、監査関係はどのような形態になったの?毎年行われるの?


〜介護保険の監査ってどんなの?〜
田中 監査はねえ、集団指導、書面指導、実地指導、そして監査というように4種類になっているんだ。
斎藤 なになに?どういうこと?まず、集団指導って?
田中 集団指導って言うのは、講習会みたいなもの。研修会みたいな感覚でいいのかなあ?
山田 それじゃあ、書面指導って言うのは?
田中 書面指導とは、資料提出をしてもらって、面接して指導するもの。う〜ん。イメージは施設建設時のヒアリングみたいなものかなあ?
鈴木 続けて実地指導って言うのは?
田中 事業所にお邪魔して行うもので、都道府県だけが行うのを「一般指導」、厚生省と行うのが「合同指導」そして、全国チェーンみたいな事業者や重点指導が必要な所は、厚生省と都道府県が「特別号道指導」っていう呼び名で行う。
山田 それって、監査と違うの?
田中 監査は、不正や違反がある場合や、改善がみられない場合に行うもので、ちゃんと指導とは使い分けることになる。
山田 ふ〜ん。じゃあ、実地指導が来るのに、周りに監査だから忙しいの!なんて言っちゃうと、ウチは不正しているから調べに来るの!っていうこと担っちゃうんだ〜あ!
鈴木 つい言っちゃいそうだよね。
斎藤 昔からの言い回しで、つい言っちゃいそうだね。
田中 直ぐに突っ込まれないだろうけど、ちゃんと使い分けて置いた方が良いよ。
鈴木 そうだね。

山田 でさあ、監査って、今まで何時ありますので、って日程が事前に判っているじゃない?それって、受ける側にしてみれば、何時来るから、それまでに問題があるのはしまっておきなさい。って聞こえちゃうんだ。
鈴木 そんなにはっきり言っちゃあだめじゃない。
斎藤 でも、田中さんの所も監査を受けるから、気持ちは分かるでしょ?
田中 ははは、気持ちは分かるけど、残念ながら、抜き打ち監査も可能なんだよ。
山田 え!?マルサの女みたいな?
田中 まあ、捜査権みたいに思われちゃあまずいけど、抜き打ち監査もあり得る。
山田 それは大変だ!

鈴木 それじゃあ、話を戻すけど、自己負担額については、どうなるんだろう?
田中 それはねえ、内訳に不透明なものがあれば、徹底的に調べるよ。原価からチェックしなければねえ。使途に別の目的にあったら、不正だって言われても致し方ない。
斎藤 それじゃあ、監査もあり得るの?
田中 そうだねえ、直接そうなるかは別だけど、高齢者に返還させることも考えなければならないからね。
山田 斎藤さんの所は大丈夫なの?
斎藤 措置の時からいただいている額や内訳を急に挙げることもあり得ないから、大丈夫だって言えるよ。
山田 ウチは袖の下ももらっていないから大丈夫!
鈴木 そうだよね。ところで、給付対象となるのに、対象外だと勘違いして、高齢者に不利益を与えていたらどうなの?
山田 変なこと言わないでよ!一所懸命にプランを作っているんだから・・・・・でも、いつもプランができたときに不安になるんだ。忘れ物はないかしら?って
田中 そんなに不安だらけになっていたら、精神的にまいっちゃうよねえ。
山田 わたし・・・・びょーきになっちゃったかしら?
木村 脅かさないでくださいよ〜
田中 ははは、意図的か錯誤かにもよるよねえ。
木村 でも、錯誤でも遡って返さなければならないんでしょ?
田中 脅かしているのは、木村さんの方だよ。心配ない。大丈夫だよ。僕は見逃さないから・・・・
山田 お願い!見逃して!!
田中 だめだめ!


山田 ねえ、田中さんは、どんな気持ちで監査するの?
田中 利用者さんが不利益になっていないか!?まずは、これが一番の視点。そして、適正な事業運営。最後に従業員の処遇だね。
山田 良い視点ね。特に最後の部分は・・・
木村 でもさあ、介護保険って、措置の枠が外れたから、何しても良いなんて思っている所もあるし、競争なんだから、企業なんだから、なんて儲け主義になってしまっている所もあるのでは?
田中 そうだねえ、社会福祉法人も、医療も企業もNPOも聖域はないよ。不公平に対応したらまさに介護保険崩壊だからね。
鈴木 ところでさあ、一緒にこんな話をしていたら、公正な監査ができないなんて周りから中傷されない?
田中 大丈夫!だって、この会話はフィクションだもん。


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