介護保険関係者だけの短編小説(小説じゃあないって!)

第21話  「事業者内のネットワークって、個人情報保護違反になるの?」
〜システムは、使い方次第で便利になるけど〜

 きわめてリアルな会話・・・・・・・・・・介護保険ノンフィクション即席小説
 介護保険関係者だけが解る楽屋受けだらけ
 日頃のアフターファイブの出来事を小説風におもしろおかしく書き綴った介護保険関係者のためだけの物語です。
 登場する人物、団体は全て架空のものです。

 無断転載を禁止します。
 誤解を招かぬよう、フォローを入れるか、全文を転載することを条件に、事前承諾をいただければ転載可能です。


登場人物の紹介
 田中 コンピュータ屋さんと間違われる県職員。実はケースワーカー
 山田 とある介護保険事業所のケアマネージャー(社会福祉士さん)
 鈴木 市役所介護保険課職員
 木村 町役場保健福祉課老人福祉担当職員。実は、かつて企業の人事部に勤務していたこともある。 
 斎藤 老人ホーム職員

 作:野本史男 
 平成12年9月08日


〜 序 〜
夜になると、やっと秋らしい空気が漂っていますね。
でも、季節がちょっとおかしいですよ!
コオロギとミンミンゼミが一緒に鳴く日もあったり・・・・ツクツクボウシならまだ解るけど!?
早く涼しくならないかなあ?富士山の初冠雪は平年より早かったんだから・・・・
そうそう!まだ夏休み半日残っていたんだ!
半日でも遊びに行きたいけど、国際福祉機器展に行くときに使っちゃうことになります。
う〜ん。結局海にも山にも行かれませんでした(遊びでは)
仕事じゃあ海と山と温泉は目の前なのになあ
友達は台湾に行ってマッサージたっぷり二時間してきたとか・・・・・羨ましい!
精力つけろと、ジョークでおみやげで買ってきてくれた怪しいドリンク剤をよく見ると、「大正製薬」って書いてあって大笑い!
旅行に行くときは、日本製のおみやげには十分注意してくださいね。ははは!


山田 この間は、第三者加害行為の件、ありがとう!

田中 「どういたまして!」

山田 お!テレビ見てるねえ!
    ところで、第三者加害行為のその後はどうなってるのかしら?何かちゃんとした方法がでたのかしらねえ?

田中 いやいや、まだ全然!けっこうたくさんの市町村で同様な話が出ているみたいだけど、どう取り扱うか決まっていないみたいだね。
    従前の診療報酬の取扱いに準じたら・・・とか案はいろいろ考えてみている様子だけど、全国統一の方法が決まらないとねえ・・・・
    ちなみに、ある人は、人間であれば当然老化するんだから、自然の老化による機能障害と後遺症をどう仕切るのか?って言っていたけど・・・

山田 はまっちゃうわよ・・ねえ

田中 そうそう、はまっちゃあダメだよ。介護保険制度制度が始まろうがどうであろうが、後遺障害の計算では老化によって介護が必要となる部分の経費は算定していない。
    つまり、保険金が完璧に支払われたとしても、全額介護保険に充当される筈はないってこと。
    老化によって自然と介護が必要となる部分は、後遺障害の補償でやっていけることは無いってことなんだ。

山田 つまり、損保業界では、介護保険制度によって初めて整理する課題って言う訳じゃあないってことね?

田中 そのとおり。だから、後遺症に対する介護費用分だけを介護保険制度上適用除外すればいいわけだよね。

山田 ところで、保険金って、先にもらっちゃうから、金利分はどうなっちゃうの?って言っても、金利なんてつかないだろうけど・・・

田中 保険金は、通常先払いするから中間利息分を、ライプニッツ式、ホフマン式っていうので計算して控除しちゃうんだ。

山田 なになに?そのホフマンとかって?

田中 まあ、この話は長くなるから、止めておくけど、複利計算と単利計算で行うときの計算式なんだ。計算がめんどくさいから覚えていないけどね。

山田 どうして田中さんって、オタッキーな詳しさがあるの?

田中 そりゃあ、この部分は、生活保護担当者の時の古〜い記憶さ!生活保護法第63条適用の時とか、損保会社に聞き取り調査をさんざんしたからね。
    話を戻そう!一瞬、ホフマン式で計算したんだから、逆算して論理上のもらえたであろう額を算出して、介護保険対象外となる額を決めちゃいがちだけど、本当はゼロ金利政策で目減りしているかも知れない。本人に不利益となる訳だから、厚生省のありがちな整理を考えると、論理計算の額か実質金利の額か何れか少ない方の額を認定する、っていうことになると推測するけど?

山田 当たったら、田中さんすごい!

田中 いや、もしかしたら、事務の繁雑化を防ぐために金利分は考慮せず、実際もらった額を算定するっていうのもあるかもしれない。
    いずれにしても、厚生省の整理が出るまでは想像なんだから、当たるも八卦当たらぬも八卦、八卦八段ウソ九段!なんちゃって



山田 ところで本題なんだけど・・・・・

田中 なんだなんだ?今度はなんだ?

山田 あのねえ・・・・システムの話なんだけど・・・・

田中 へっ?ケアマネシステムの話?

山田 そうじゃなくってね。法人内のLANシステムなんだ・・・・・

田中 もしかして・・・・利用者さんの情報をLANで・・・ってこと?

山田 そうなんです。LANで個人情報の保護が守れるか?ってことなんです。

田中 そうかそうか、問題点は解ったぞ!
    もしかして、セキュリティーのかけ方を一つしか持っていないとか???

山田 ねえねえ、それってどういう意味?

田中 つまりね。通常のセキュリティーって、各部署の担当業務に応じてシステムの閲覧範囲を決めている。これって、フツーの考え方ね。

山田 うんうん。例えば経理担当は、予算や執行を行えるけど、ケアマネは見ることができないとか・・・ね。

田中 そのとおり。でもさ、介護保険の場合は、各事業単位で個人情報の保護が定められているから、たとえ同一法人内であっても、原則は事業者間の個人情報の流通をしてはいけないんだ。
    ただし、サービスを利用する事業間に限れば、サービス担当者会議やケアマネのフォローアップの際に情報の交換ができるね。ただし!同意書があれば、ってことだけど。

山田 でもさあ、ケアマネとサービス事業者の間は、情報交換した方が仕事しやすいでしょ?
    だから、担当者の人たちは情報が欲しいって、要望を出しちゃうんだ。それでシステム屋さんも「ほいほい」って了解しちゃうんで・・・・・。
    私が心配していると、どうして?って言われちゃうの・・・。

田中 まあ、同一法人だから、良いとしちゃう気持ちも分かるけどね。でも、山田さんも通知類を読んでいるでしょ?

山田 読んでいるから心配しているの。

田中 それじゃあ、他の人たちにも、その部分の通知を担当者に読んでもらったら?

山田 でもねえ、それじゃあどうすればいいの?って聞かれたら、答えられないわ

田中 う〜ん・・・・事業者間で交換する情報の範囲を決めて、同意書にはその範囲を明示したらどうだろうか?
    それから・・・利用者さん単位で、利用するサービス事業者が決まっているから、その範囲で、運用すれば?

山田 え?それじゃあ、サービス利用者が利用しているサービスと同意の範囲と異なってしまうの?

田中 まあ、一般的には同じ範囲だから、処理場は簡単な方が良いけど、レアケースとして、ここは情報提供するなと利用者が言ったら、狭められるような仕様が必要だね。

山田 そこまで細かく考えなくちゃあいけないの?

田中 そうじゃなければ、サービス利用している=情報提供する相手、というのじゃあなくて、同意している事業者=情報提供する相手、として運用することになるね。

山田 そうか!そうだねえ、それじゃあ、ケアマネが取る同意書とイコールになるけど、ケアプランや給付管理のシステムとは連動できないってことになるのかあ〜

田中 解ってきてくれたみたいだね。

山田 それじゃあ、もし、他の事業者で、利用していない人の個人情報が見られる仕組みになっていたら?

田中 利用者からクレームが出ないと解りにくい話だけど、基準違反になる。

山田 それって、システム屋さんが罰せられるの?

田中 何を言っているの!?業者さんじゃなくて、運用する事業者が罰せられることになるのに決まっているじゃないの!あ、罰則がないから、厳重注意とか、システムの運用を停止するような勧告とか・・・・・最悪は指定取り消し・・・・まあ、あり得ないだろうけどね。

山田 罰則がなければやっていい?

田中 承知でやっていたら厳しい対応が考えられるよね。それより、利用者から不利益を被ったとか、プライバシーの侵害に対する慰謝料請求が出たら、簡単に負けちゃうよ!それに保険会社も、故意だったら保険は出ないかもしれないしね。

山田 ふ〜ん。ところで、どの範囲で情報交換したらいいの?

田中 まあ、基準を読む限りでは、「サービス担当者会議等」の等という範囲をどう捉えるかだと思うけど、同意書に範囲を書いておけばいいんじゃないかな?でもね、全く必要ない情報をやりとりするのは本旨から外れるのでダメだろうし、利用者も承諾しないだろうから・・・・

山田 え〜?、でもさあ、利用者ごとに範囲が変わっちゃったら大変!

田中 そこまでシステム対応したら大変だよ。割り切りがなければ、システムがどんどん重くなっちゃう。だから、そういったレアケースは紙ベースでもいいんじゃないの?

山田 う〜ん。考えてみたら個人情報の交換って、システムで対応する必要性はどこまであるのか?って、疑問に思うようになったなあ・・・・・

田中 僕は、住所氏名とかの基本情報と、ケアプランと利用実績程度でよいんじゃないかと思っているんだけど・・・・・

山田 そうよねえ・・・・会計は別々に行うんだから、LANの必要はない・・・だから、会計後の集計部分をLANで法人会計システムと連携すれば良いんだからね。

田中 いい整理かも知れないねえ。


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