介護保険関係者だけの短編小説(小説じゃあないって!)

第22話  「感染性の疾患って、介護保険事業者からの嫌われ者?」
〜苦労するのは家族とケアマネ〜

 きわめてリアルな会話・・・・・・・・・・介護保険ノンフィクション即席小説
 介護保険関係者だけが解る楽屋受けだらけ
 日頃のアフターファイブの出来事を小説風におもしろおかしく書き綴った介護保険関係者のためだけの物語です。
 登場する人物、団体は全て架空のものです。

 無断転載を禁止します。
 誤解を招かぬよう、フォローを入れるか、全文を転載することを条件に、事前承諾をいただければ転載可能です。


登場人物の紹介
 田中 コンピュータ屋さんと間違われる県職員。実はケースワーカー
 山田 とある介護保険事業所のケアマネージャー(社会福祉士さん)
 鈴木 市役所介護保険課職員
 木村 町役場保健福祉課老人福祉担当職員。実は、かつて企業の人事部に勤務していたこともある。 
 斎藤 老人ホーム職員

 作:野本史男 
 平成12年10月25日


〜 序 〜

突然ですが、私はパソコンを現在2台使用しているんです。
1台は、今使用しているGatewayミッドタワーPentium ll 400MHz 15GB、職場にもう1台 SONY VAIO PCG−XR7G なんです。
で、今回、下取りしたいという奇特な方がおりまして、念願のパソコン更新と相成ったのです。

久しぶりに秋葉原を訪れた私は、いつものコーヒー店(秋葉原では感じの良いコーヒー店が数軒あるのです)で作戦を練って、いざ出陣!
希望(あくまで)は、Pentium lll 1GHz、80GB、19インチトニリトロンモニタ、IEEE1394、のミッドタワークラスが欲しいなあ・・・・と思ったのですが、予算の範囲ではとてもダメダメ
いろいろメーカーやスペックを較べながら、やはり行きついたのはGatewayです。
AMD Athlon 900MHz、HDD=75GB、19インチモニタ、SDRAM256MB になりました。 で予算の範囲内の20万円台で購入決定!IEEE1394は、後からDVキャプチャを購入って感じかな?
ちなみに、OSは、Win98SEのままです。

それはそうと、この間私の担当地区で、介護認定調査員研修会を開催したんです。(3回のシリーズモノ)
それと、ヘルパー1級研修3日間の講師もあとはグループワークを残すのみ!
原稿書きも、研修会も、自分のPCセットアップもようやく終わって・・・・(PCは、多くのデバイスとソフトをセットするので、けっこう大変でした)
いやあ、バージョンアップ版のソフトって、どうして古いソフトから順番にセットアップしなければならないのでしょうかねえ?(そうでないものもあるけど)

そんなわけでまたまた書き物に没頭できるようになりました


〜疥癬!?〜
山田 ねえねえ、カイセンって知ってる?

田中 回線・・・改選・・・・疥癬?話題の関連性がないとどれだか?ISDNのこと?

山田 もお!パソコンばかりやっていると、本職を忘れちゃうよ!

田中 それじゃあ・・・・・・・・う〜ん、あの・・・疥癬?

山田 そうなの!それが本当に困ったことで・・・

田中 そうそう!僕だって昔いろいろと大変な目にあったことがあるよ。特別養護老人ホームに措置決定したら、疥癬にかかっていて、めっちゃ怒られたことがあったっけ。
    それとね、疥癬じゃあないけど、南京虫をおみやげにもらっちゃって、自宅で一緒に暮らしたことがある!家から出ていってもらうのにそりゃあ大変だった!
    ケジラミも1回あったなあ・・・・
    極めつけは、結核!ご幼少の頃感染して自然治癒したみたい。結核のアトがあるって言われたことがある。
    当然自然陽転していたから、おかげでBCG打たなくて済んだ!ラッキー!

山田 なんでももらっちゃうのね!

田中 そうじゃあないけど、こういった仕事しているといろいろなことがあるよね。

山田 それでね、今、改めて疥癬なの!

田中 今年は暑かったからね。感染から1ヶ月程度で発症するから、9月頃から大騒ぎってこと?

山田 それがね、ちがうのよ!もっと大変なの!


〜疥癬だとサービス利用できないの?〜
山田 その人ね、実はすごい疥癬だったみたい。家族やら周りの人たちみんなに感染しちゃって、大騒ぎだったのよ

田中 すごい疥癬って・・・・・たしか、ノルウェー型疥癬?

山田 そう!よく知っているわね!

田中 そりゃあもう!昔めっちゃ怒られた経験者だからね。

山田 それじゃあ話が早い!ねえ、介護保険制度上、疥癬だと、正当な理由ということでサービス断ることができるの?

田中 う〜ん!直球勝負ですか!?

山田 だってね、疥癬だって解ったその瞬間から、サービス事業者みんなから断られてね。

田中 え?みんなって、全部?

山田 そう。ケアプランに載っていた通所介護、訪問入浴サービス、訪問介護、みんなダメだって言われて・・・・プランが全滅しちゃった!

田中 そりゃあひどい・・・・ひどいけど・・・・さもありなん・・・

山田 でもさあ、措置の頃は疥癬でもちゃんとケアしていたでしょ?

田中 そうそう、入浴サービス事業者も、最後に回ってくれて、きちんと消毒したりしてね。

山田 介護保険になってからなにが変わっちゃったの?

田中 措置は措置制度上起きた事故は措置者である市町村がすべて責任を負っていたことは解るよね。

山田 うんうん。それに対して介護保険制度上は、事業者が責任を持つことになる。だから介護保険制度からは自賠責を掛けるのが当然となった・・・。

田中 そのとおり。だから、一事業者として、神経質になっちゃうのも仕方がない面もある。

山田 だからって、全部断っていい訳ではないでしょ?

田中 僕だってどちらが正しいとは言えないけど、困るのは誰?っていうことだよね。


〜診断書〜
山田 困るのは、こんなこともあるのよ

田中 今度はなんだい?

山田 神経質になっちゃうのは解るけど、それじゃあ、一つの法人内で複数のサービスを利用する人がね、同一系列法人の医療機関に健康診断に行けと言われて、それぞれのサービス単位で診断書を書かされた例があるのよ!

田中 そりゃあ、神経質とは違うよね。ん?ちょっと待って?その人って、同じタイミングでサービス利用開始したの?

山田 そう言われてみると、時期は違うけど・・・・

田中 う〜ん。何とも言えないけど、診断書って、有効期間無いんだってこと知っている?

山田 え?

田中 だって、診断したときの状態を記載したんだから、その状態が何ヶ月間継続するといった保証書ではないわけでしょ?

山田 そうかあ、病院を出た瞬間に感染症に罹患したら、診断書の意味が無くなっちゃうってことかあ・・・・

田中 潜伏期間の病気もそうだよね。僕は医者じゃないし、医療関係者でもないからコメントはできないけど、一般論から見てもそうだよね。

山田 だから、改めて診断書をいただくっていうことも有りなのか・・・・

田中 まあ、そういうことになるだろうけど、補助金を出すとか、関係機関同士で何かいい方法を探し出すための検討会を開くとか、何とかしたい部分だよね。

山田 そうねえ・・・・同時にサービス利用開始する場合であっても、全く違う業者の場合は、それぞれで診断書を取ったり、主治医意見書だけでいいと言ってくれる事業者もあったりで・・・・

田中 まあ、事業者の自主性もあるから、コメントしづらい部分だね。
    ただね、措置の場合は、診断書が必ずしも必要とは言っていなかったんだ。それに対するコメントは、厚生省から出されていたんだよ。

山田 へえ〜!知らなかった・・・・でもさあ、1回の診断書作成に数万円かかる場合もあるから、何とかしてほしいわ!

田中 でも、診断書に頼りすぎると、落とし穴もあるからね。

山田 疥癬に感染した直後に診断書を取っても、1ヶ月後に発症したんじゃあしょうがないってことね?

田中 そうなんだ。それに、本人が症状などの訴えができない人もいる訳だから・・・・どうすればよいか解る?

山田 ・・・・・・・・・・・

田中 それはね。日頃の利用者観察、生活状況の把握、他の利用サービスの事業者の状況把握の3つが大切ってこと。

山田 そうかあ、利用者に成り代わってチェックしろってことね。

田中 ただし、介護サービス従事者が判断するんじゃあないんだよ。利用者に成り代わって嘱託医や主治医に相談することなんだよ。

山田 う〜ん、それじゃあ介護者が行ってもいいの?というか、介護者にお願いする方がよいのかもしれない。

田中 でもさあ、それを原則とした場合、サービス利用時の契約書はどうなっている?まさか、虚偽の申告や重大な過失によって事業者や他の入所者に損害等を与えた場合の責任を利用者に負わせる内容になっていない?

山田 そこまで書き込んでいないけど、もしそうならどうなの?

田中 心配しすぎかもしれないけど、そうなっていたら、介護者が事前に主治医にこのような相談をしなかった場合、過失と言いかねないからさあ・・・

山田 それじゃあ、そのような内容を契約書に盛り込むんだったら、「事業者側が、最近の生活状況やサービス利用状況を聞き取るものとして、回答が得られない場合は、利用者の同意を得ることによって当該事業者が状況把握のための調査を行ってよい。」なんて文面を入れればいいじゃないの?

田中 いいこと言うねえ。

山田 それじゃあ、信じるモノは診断書だけじゃなくて、正確な最近の生活状況把握も必要ってことね。

田中 そういうことかな


〜どうすれば感染症のケアができるの?〜
田中 ところでさあ、疥癬の人の件なんだけど、サービス利用ができなくてどうしているの?

山田 それがね、結局入浴介護も自宅で腰を痛めながら1号保険者の家族がやっているわよ。

田中 病院は?

山田 疥癬は入院する必要はないから、って駆除方法と、家族への感染予防方法、治療方法をしっかり教えてもらっているわよ。

田中 ケアマネとしての見解は?

山田 困っている!本当に困っている!

田中 それじゃあ、老人保健施設への利用変更とか、トライしてみた?

山田 したけど・・・・難色を示されてね・・・・・

田中 八方ふさがりってことかあ・・・・・・・

山田 どうすれば解決できるんだろうか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

田中 そりゃあ、感染症加算とか、事業者にメリットをつければ一気に解決できるだろうけどね。

山田 そうかあ!そうすればいい! たくさん要望すれば、厚生省も考えてくれるかしら?

田中 ところがどっこい、感染症があっても今の基準で受け入れろなんて言うかも???

山田 それじゃあ、即解ってことにならないかも・・・???困っているの、誰なの?

田中 まあ、なにもしないであきらめちゃあいけないよ。やるだけやらなければ、社会問題として取り上げられるようにしなくちゃね。


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