介護保険関係者だけの短編小説(小説じゃあないって!)

第31話  「老人虐待、放置、申請困難な高齢者へのアプローチ」
〜 市町村は何をすべきか 〜

 きわめてリアルな会話・・・・・・・・・・介護保険ノンフィクション即席小説
 介護保険関係者だけが解る楽屋受けだらけ
 日頃のアフターファイブの出来事を小説風におもしろおかしく書き綴った介護保険関係者のためだけの物語です。
 登場する人物、団体は全て架空のものです。

  無断転載を禁止します。
 誤解を招かぬよう、フォローを入れるか、全文を転載することを条件に、事前承諾をいただければ転載可能です。


いつもの登場人物の紹介(ただいまお休み中)
 田中 コンピュータ屋さんと間違われる県職員。実はケースワーカー
 山田 とある介護保険事業所のケアマネージャー(社会福祉士さん)
 鈴木 市役所介護保険課職員
 木村 町役場保健福祉課老人福祉担当職員。実は、かつて企業の人事部に勤務していたこともある。 
 斎藤 老人ホーム職員

 
 作:野本史男 
 平成13年12月29日


〜 序 〜
 最近、子供や兄弟等、家族からの暴力、身体拘束や放置といった問題ケース、はたまた介護保険の申請が困難な高齢者といった事例が聞こえてくる。
 一体どうしたというのか?
 不況、デフレといった社会情勢がこのような問題を助長させているのだろうか?
 いや、昔からこのようなケースが無かったわけではない。
 以前に比べ、介護保険以後、新たにケアマネ等の新業種が加わったことによって、問題が発見され顕在化しやすくなったのである。
 つまり、頻度が多くなったわけではなく、目立つようになったといった方が適切な表現である。
 その理由はなぜか。
 顕在化してきた背景と事例別の課題、できれば解決策について整理してみることにしよう。
 今回のお話は、ちょっと重苦しい話かもしれません。年明けには明るい話を書きたいと思いますが、年末というだけに、今年一番思ったことを書かせていただきます。

〜 発見者 〜
 虐待の発見経路を改めて整理してみよう。
 これまでの措置時代は、入浴時や着替えの時に不自然なアザがあることでサービス提供機関が虐待を発見できたという事例を聞いたものである。
 もちろん、在宅介護支援センターや民生委員等の関係機関、近隣からの通報もあった。
 介護保険以後は、更に要介護認定調査員、介護支援専門員という職種が増えたことによって、虐待等の発見が更に容易になったのである。
 なぜなら、要介護認定調査員や介護支援専門員は、家庭内に入って生活状況や家族との面談を等して虐待等の問題が発生していないかチェックできるからである。
 つまり、今まで以上のチェック体制が整備されたのである。

 具体的な事例をいくつか挙げてみると、次のようなケースである。
○ 座敷牢
 座敷牢とは、聞き捨てならない表現である。しかし、老人室に鍵をかけて外に出られないようにすることは、座敷牢とどこが違うというのか?
 もっと軽い事例では、部屋の外へ出ないよう常に言い、家族と一緒に食事をさせず、食事を老人室に届けて一人で食べさせることはどうであろうか?

 もちろん、家族にも言い分がある。
 「痴呆の高齢者が外に出ないようにするため鍵をかけざるを得ない。嫁一人で家事をしながら、老人の行動を常に見張ることはできない。事故があってからでは遅い。」
 「高齢者自身が失禁予防のパンツ等を使用しているが、自分でさわってチェックをする。その手でドアを開けたり、壁につたい歩きをされては家中汚れるので部屋にいてもらいたい。」
 「家族がおむつを定時チェック、交換をするから、高齢者に余計なことをされては困る。」
 「家族と同じ食堂の椅子では座位保持が十分できず一緒を実現するためには、誰かが自分の食事をせずに世話をしなければならない。だから家族が食事を終わってから老人室で介護しながら食事をしている。」
 「孫からぼろぼろこぼすから食事が不味くなると言われている。」
 「食事のペースがあわない。」
 
 当然解決策もあろうが、家族の手間が増えないような調整は並大抵のことではない。
 
○ おむつ外し予防の縛り
 おむつだけではない。騒ぐから、ものを壊すから。という痴呆対策も聞いた。

○ 言うことを聞かないから暴力
 以外かもしれないが、親族間の暴力を耳にする。暴力のほとんどは血族である。距離が短いため、不満が感情(行動)に現れやすいのだろう。

○ 放置
 仕事等があるから、日中放置という事例は誰でもわかることだが、おむつの定時チェック、交換は、放置となるのだろうか?
 高齢者はおむつが汚れたことを言わず、黙っているからというが、意識のある人は、おむつ交換の時間が来ると、直前に意識的に排尿しているという。
 タイミングが狂っても、どうせ変えてくれないから、と黙っている高齢者もいる。
 呼んでも今手が離せないからと一括されたと嘆く高齢者。喜んでくれるものではないだけに、問題は深刻。
 このおむつの定時交換は、病院や施設でも聞く。実は、このネタの一部は施設系の高齢者の声である。

 言い出したらきりがない。しかし、問題とする基準が整理されているわけではなく、暴力といっても現場を押さえた訳ではない。虐待と断言するのはなかなか難しいのである。
 更に、このような実体を発見した関係者はどこに話を持っていっていいのかわからないと言う者もいる。その理由は次に述べよう。

〜 どうせ何もしてくれない 〜
 行政にこのようなケースを伝えたケアマネは、耳を疑った。
 役所の職員が発した言葉は、「ケアマネで解決して欲しい。」であった。
 一体全体なんでケアマネの仕事なんだろう?そんな疑問が改めて湧いてきた。
 かつての措置時代では、問題の発見、調整、サービスの提供、問題解決に至るまでのすべてを、一つの自治体が責任をもって解決しなければならなかった。
 介護保険制度になってからは、調整役のケアマネとサービス提供をする機関は、行政から分離された形となった。
 これが問題の発端である。
 そして、問題ケースの調整は、だれの業務なのか?という議論がなされず、双方の思惑が交わることなく現在に至っていることが、問題を拗らせているのではあるまいか。

〜 ケアマネ側の言い分 〜
 ケアマネが虐待を受けている高齢者及びその家族に対して、ケアマネは虐待を解決するだけの機能を持っているのか、改めて運営基準等を参考に検証してみよう。
 まず、厚生省令第38号と老企第22号(平成11年7月29日)を読み返すと、虐待等の問題に対する記述は特にない。(当然といえば当然)
 それでは建前論であるが、基準どおりに虐待ケースへの関わりを整理してみよう。

1 課題分析
  ケアマネの課題分析において、介護福祉士会は、主な介護者の態度、本人と家族との関係欄等に虐待等の状況記述可能であるし、最新のMDS−HCには、健康状態及び予防欄のその他の状況に、a「家族や現在介護をしてもらっている者に対して恐れを抱いている。」b「衛生状態が異常に悪い。」c「説明が付かないけが、骨折、火傷がある。」d「放置、暴力、虐待を受けている」e「身体抑制を受けている(四肢の抑制、ベッド柵の使用、椅子に固定)」でチェックを入れることが可能である(聞き取りであるため、陰徳されてしまえば発見に至らない)。そして、課題分析で発見された問題点から短期〜長期目標を導き出す・・・・。

2 サービス原案作成
  「指定居宅介護支援の具体的取扱方針」第13条第7項に基づき、介護支援専門員は、居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等について、保険給付の対象となるか否かを区分した上で、その種類、内容、利用料等について利用者又はその家族に対して説明し、文書により利用者の同意を得る。

 という手順であるが、遅かれ早かれ虐待の事実を家族が認めなければ、先へ進むことはできない。
 また、仮に家族が虐待の事実を認めたとしても、即座にサービス利用によって虐待が消滅するとは限らない。最悪の場合は、最初から介護保険施設を選択せざるを得ないかもしれない。
 仮に、ケアマネが介護保健施設に受け入れ調整をしても、入所は待機状態で数年は利用ができない。ケアマネ側が介護保健施設に受け入れ依頼をしたとしても、現状の定員をオーバーしての受け入れはできない。順番の入れ替えを要求しても、その要求に対する拘束力はない。
 しかし、これも上手くいって・・・ということである。ほとんどは、このようなアプローチを行おうとしても、信頼関係が構築できず、サービス利用の同意が得られない。最悪の場合は、契約破棄といった結末になりかねないのである。
 いずれにしても、このような虐待等に対する問題解決をケアマネが行うことは難しいのである。

 一方、ケアマネが虐待ケースを発見した場合、市町村に通報できるのであろうか?
 ケアマネが取り交わす契約書はどうだろう?契約書に定める個人情報の保護については、情報提供先はサービス計画に載せたサービス提供機関がせいぜいであって、保険者への情報提供は、まずもって取り交わされていないのが現状である。
 基準上では、「利用者に関する市町村への通知」第16条第1項或いは、「基本方針」第1条第4項の「指定居宅介護支援事業者は、事業の運営に当たっては、市町村(特別区を含む。以下同じ。)、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第二十条の七の二に規定する老人介護支援センター、他の指定居宅介護支援事業者、介護保険施設等との連携に努めなければならない。」としており、この連携で市町村保険者へ情報提供することが可能とはなっている。
 しかし、虐待や放置等の場合、本人家族の同意の如何にかかわらず、市町村に情報提供する義務があるのかは明確になっていない。現状では、あくまで非公式の情報提供としか扱われていないのである。
 当然、市町村が虐待ケースの情報をつかんだら、積極的な対応を図ってくれるのであれば、ケアマネ側としても、積極的な情報提供ができよう。しかし、ケアマネ側が通報しても、市町村が何もしないのであれば、義務じゃあないのだから・・・と、情報提供すらしなくなる。
 そうなれば、市町村の公式見解は「このような事実はつかんでいませんでした」と、いじめ苦のあげく自殺した児童に対する校長の答弁と同じになりはしないか?
 具体的かつ明確な役割分担が決まらない間、高齢者は虐待を受け続けることになるのだ。
 
 行政側が何の関わりもしないのであれば、ケアマネであっても断る理由づけを考えるであろう。
 たとえば、基準第5条にある、「提供拒否の禁止」であっても、当該事業所の現員からは利用申込に応じきれない場合(建前上ケアマネの担当数が50ケースを越えていれば断れる)であるならば、当然お断りすることができる。また、虐待の事実を受け入れないのであれば、契約破棄に結びつけることも可能である。
 
 最後にケアマネ側の嘆きを記しておこう。
 ケアマネだって、そもそも通常運営基準に定められている業務をこなすだけでも赤字だと事業所運営者から言われている。
 経営者からは、いかに効率的に、苦情のでない範囲でサービスを行うかが考えろとまで言われ始めている。また複合施設の場合、経営者から、自分の事業所の足しになること以外は極力避けるようにし向けられている。
 こんな要求に対して、福祉を志して飛び込んだ池の水が合わないと、業界から離れていく優秀なケアマネも最近では多くなってきている。
 たしかに、問題ケースをひとたび抱えれば、1ヶ月間他の業務ができないくらいの労力と家庭訪問と受け入れ施設調整のための交通費が必要。そもそも問題ケース解決のために現在の報酬では採算性が全く合わないのである。
 「要領の悪い者が貧乏くじを引いてしまうのだ。」と、ついケアマネの本音が漏れる。
 ケアマネの本心は、「問題ケースを放置できない。何とか解決したい。」である。でも、「何とかしたからといっても、誰も認めてくれない。褒めてもくれない。逆に、何しているんだ。と文句を言われる始末である。だったらやるだけ無駄だ!」である。

〜 市町村の対応 〜
 虐待というキーワードを私のデータベースで検索すれば、平成11年9月17日の厚生省介護保険主管課長会議資料にたどり着く。
 この会議資料の追加資料 「7 平成12年度以降の措置の取り扱いについて」には、やむを得ない措置として、虐待または放置されている高齢者に対するやむを得ない措置が記されている。
 これは、本人が家族等の虐待又は無視を受けている場合、或いは痴呆その他の理由により意志能力が乏しく、かつ、本人を代理する家族等がない場合等の理由によって、事業者との「契約」による介護サービスの利用その前提となる市町村に対する要介護認定の「申請」を期待しがたい者に対し、職権をもって介護サービスの提供に結びつける趣旨である。
 つまり、要介護認定を受けた高齢者、要介護認定申請ができない状態にある高齢者、いずれの場合でも、措置(行政処分)を行うことは可能なのである。
 この措置は、老人福祉法第10条の4及び第11条の措置である。もちろん、介護保険の受給者であってもこの措置の適用は可能だ。この場合、「介護保険法による給付との調整」(老人福祉法第21条の2)によって措置決定だけ老人福祉法で行い費用は介護保険で給付できる仕組みである。

 しかし、この処分が行われたからと言っても、家庭の問題がすべて解決できるわけではない。
 まず、自己負担額の支払いはどうなるのか?よくある問題としては、高齢者の年金を家族が生活費に使っていて、サービスの自己負担を払いたくないがために、サービス利用を家族が拒絶しているといったものである。これでは、二進も三進もいかない。
 緊急避難として、短期入所を行ったとしても、家族がよりよい方向に向かうのであろうか?かえって逆の事例を聞くことの方が多い。つまり「勝手に行政がやったのだから、私たちは関係ない。最後の葬式まで行政で勝手にやってくれ」といった具合である。
 次に、世帯の問題として、家族に問題を抱えている者がいる場合で、高齢者がその者から虐待を受けている場合はどうであろうか?例えば、性格的な偏りがある息子からの虐待はどうであろう?この息子に対するアプローチはだれが行えばいいのだろうか?
 これらの整理は、ケアマネの手に負える内容ではない。

 たしかに、市町村も、虐待の事実関係が明確にならなければ対応できない。証拠がなければ・・・というのも本音であろう。
 しかし、それでは、ケアマネの調査結果は証拠にならないのか?もし、市町村がケアマネの調査を受け止められないのであれば、ケアマネの存在は何だったのか?ということになる。
 まして、介護保健施設に、順番を入れ替えてほしいと依頼することもできないではないか。
 
 このようなことから考えると、市町村が虐待等の情報をきちんと受け止める仕組みが必要であろうし、虐待の情報を受けた市町村は、どのような手順で処理をするのか、一定のルールを作らなければならないだろう。

〜 受け入れ施設の言い分 〜
 以前は、措置制度であったことから、すべてのサービスは市町村責任で処理できていた。措置制度では、問題ケースがあれば、福祉事務所の判断で施設待機の順番を入れ替えたり、サービス量の調整も容易にできたのである。
 しかし、介護保険制度以後は、サービス提供調整を自己完結させることができなくなったのである。サービスの組み立て(ケアマネ)、サービス提供(指定事業所)が独立した形になり、市町村からの依頼も対外的な公式調整となるのである。
 施設が順番を入れ替えて緊急受け入れをするためには、以下に示す「厚生省告示二十七号」にあるように、やむを得ない措置によって定員オーバー処理を行うことができる。
 それ以外は、厚生省令第三十九号(平成十一年三月三十一日)「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」 (入退所)第六条各号に受け入れ順序を変更することに関する適否が記載されていないことから、受け入れ施設側の裁量ということになる。

 施設運営をしていく上で、介護保健施設は自己責任で運営することになっただけに、きちんとした手順や資料を要求するのは当然である。
 当然、事業所内部としても、受け入れのための調整会議(施設内入所判定委員会のような名称)を開催している。その理由は、担当者だけの独断で処理せず、組織的決定をするためである。その会議資料とするためにも、受け入れ順序の入れ替え要請の通知が欲しいというのは無理からぬことであろう。また、通知にはやむを得ない措置にならない理由も付して欲しい。その理由に応じて受け入れ順位をどの程度変更するかの判断材料とするためである。

 事業所指導場面では、受け入れ順序を変更する場合、その理由や経緯を明確にしておくようお願いしている。その目的は、順番が入れ替わったことによって、不利益が発生した待機者からクレームがあった場合、明確に回答できるように、という理由である。損害賠償ということにはならないだろうが、施設運営の透明性を確保するためにも重要なことである。

○厚生省告示二十七号(抜粋)

 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成十二年二月厚生省告示第十九号)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成十二年二月厚生省告示第二十一号)の規定に基づき、厚生大臣が定める利用者等の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに通所介護費等の算定方法を次のように定め、平成十二年四月一日から適用する。
平成十二年二月十日

厚生大臣 丹羽 雄哉

厚生大臣が定める利用者等の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに通所介護費等の算定方法
七 厚生大臣が定める入所者の数の基準及び介護職員等の員数の基準並びに介護福祉施設サービス費の算定方法
イ 指定介護老人福祉施設の月平均の入所者の数が次の表の上欄に掲げる基準に該当する場合における介護福祉施設サービス費については、同表の下欄に掲げるところにより算定する。
厚生大臣が定める入所者の数の基準 厚生大臣が定める介護福祉施設サービス費の算定方法
施行規則第百三十四条の規定に基づき都道府県知事に提出した運営規程に定められている入所定員を超えること(老人福祉法第十条の四第一項第三号又は第十一条第一項第二号の規定による市町村が行った措置又は病院若しくは診療所に入院中の入所者の再入所の時期が見込みより早い時期となったことによりやむを得ず入所定員を超える場合にあっては、入所定員の数に百分の百五を乗じて得た数(入所定員が四十を超える場合にあっては、入所定員に二を加えて得た数)を超えること。)。 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成十二年二月厚生省告示第二十一号)別表第一指定施設サービス等介護給付費単位数表(以下「指定施設サービス等介護給付費単位数表」という。)の所定単位数に百分の七十を乗じて得た単位数を用いて、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の例により算定する。

〜 解決策として 〜
 介護保険制度上、虐待事例に対応するための関係機関共通認識を作り上げることが必要である。
 たとえば、「虐待等事例にかかる対応基準」の作成である。
 市町村の虐待等の判断基準から、やむを得ない措置開始基準を整理し、運営基準を整備することも必要ではなかろうか。
 なお、虐待等に対する運営方法の検討に際しては、居宅介護支援事業者、介護保健施設、居宅サービス事業者、在宅介護支援センター等とも関わりが必要である。なぜなら、市町村が決めた運営基準に民間事業者がついてこなければ、何の意味も持たないだけに、市町村は事業所と十分なディスカッションが必要なのである。
 いずれにしても、ケアマネは高齢者を取り巻く社会の仕組みの一つである「介護保険制度」の更に一つのマンパワーに他ならない。
 更に言えば、ケアマネは利用者と対等な立場での契約によって、関係が結ばれているのである。
 このような現状の中、どの機関がどのような役割を果たしていくのか、十分な議論をして欲しい。

 そして忘れてはならないこととして、痴呆等で家族等が存在しないで申請や契約ができない高齢者のために、成年後見に関する老人福祉法(審判の請求)第32条の手続き要綱を早急に整備して欲しい。
 この審判の請求に関する要綱は、まだごく一部の市町村でしか策定されていないのが現状である。しかし、要綱がないから手続きができないでは話にならない。必要な高齢者がいれば要綱が無くても手続きをしなければならないのである。

 いずれにしても、市町村は、老人福祉法の実施者であり、介護保険法の保険者である。最後に高齢者の責任を負うのは市町村である。
 新たな虐待等の事例が出る前に、是非地域で検討してもらいたいものである。 


○厚生省令第三十八号
 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第四十七条第一項第一号並びに第八十一条第一項及び第二項の規定に基づき、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準を次のように定める。
平成十一年三月三十一日
 厚生大臣 宮下 創平












指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準
老企第22号
平成11年7月29日
各都道府県介護保険主管部(局)長 殿
厚生省老人保健福祉局企画課長

指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について
 介護保険法(平成9年法律第123号)第47条第1項第1号並びに第81条第1項及び第2項の規定に基づく「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(以下「基準」という。)については、平成11年3月31日厚生省令第38号をもって公布され、平成12年4月1日より施行されるところであるが、基準の趣旨及び内容は下記のとおりであるので、御了知の上、管下市町村、関係団体、関係機関等にその周知徹底を図るとともに、その運用に遺憾のないようにされたい。
基準の趣旨及び内容

老 企 第 2 2 号
平成11年7月29日
目次

 第一章 基本方針(第一条)
 第二章 人員に関する基準(第二条・第三条)
 第三章 運営に関する基準(第四条?第二十九条)
 第四章 基準該当居宅介護支援に関する基準(第三十条)
 附則
第1 基準の性格

1 基準は、指定居宅介護支援の事業及び基準該当居宅介護支援の事業がその目的を達成するために必要な最低限度の基準を定めたものであり、指定居宅介護支援事業者及び基準該当居宅介護支援事業者は、基準を充足することで足りるとすることなく常にその事業の運営の向上に努めなければならないものである。

2 基準第1章から第3章までを満たさない場合には、指定居宅介護支援事業者の指定を受けることはできず、また、運営開始後、基準に違反することが明らかになった場合は、都道府県知事の指導等の対象となり、この指導等に従わない場合には、当該指定を取り消すことができるものである。

3 運営に関する基準に従って事業の運営をすることができなくなったことを理由として指定が取り消された直後に再度当該事業者から指定の申請がなされた場合には、当該事業者が運営に関する基準を遵守することを確保することに特段の注意が必要であり、その改善状況等が確認されない限り指定を行わないものとする。

第2 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準
  第一章 基本方針
 (基本方針)
第一条 指定居宅介護支援(介護保険法(平成九年法律第百二十三号。以下「法」という。)第四十六条第一項に規定する指定居宅介護支援をいう。以下同じ。)の事業は、要介護状態等となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮して行われるものでなければならない。

2 指定居宅介護支援の事業は、利用者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、利用者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われるものでなければならない。

3 指定居宅介護支援事業者(法第四十六条第一項に規定する指定居宅介護支援事業者をいう。以下同じ。)は、指定居宅介護支援の提供に当たっては、利用者の意思及び人格を尊重し、常に利用者の立場に立って、利用者に提供される指定居宅サービス等(法第七条第十八項に規定する指定居宅サービス等をいう。以下同じ。)が特定の種類又は特定の居宅サービス事業者に不当に偏することのないよう、公正中立に行われなければならない。

4 指定居宅介護支援事業者は、事業の運営に当たっては、市町村(特別区を含む。以下同じ。)、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第二十条の七の二に規定する老人介護支援センター、他の指定居宅介護支援事業者、介護保険施設等との連携に努めなければならない。
1 基本方針
 介護保険制度においては、要介護者及び要支援者(以下「要介護者等」という。)である利用者に対し、個々の解決すべき課題、その心身の状況や置かれている環境等に応じて保健・医療・福祉にわたる指定居宅サービス等が、多様なサービス提供主体により総合的かつ効率的に提供されるよう、居宅介護支援を保険給付の対象として位置づけたものであり、その重要性に鑑み、保険給付率についても特に10割としているところである。

 基準第1条第1項は、「在宅介護の重視」という介護保険制度の基本理念を実現するため、指定居宅介護支援の事業を行うに当たってのもっとも重要な基本方針として、利用者からの相談、依頼があった場合には、利用者自身の立場に立ち、常にまず、その居宅において日常生活を営むことができるように支援することができるかどうかという視点から検討を行い支援を行うべきことを定めたものである。

 このほか、指定居宅介護支援の事業の基本方針として、介護保険制度の基本理念である、高齢者自身によるサービスの選択、保健・医療・福祉サービスの総合的、効率的な提供、利用者本位、公正中立等を掲げている。介護保険の基本理念を実現する上で、指定居宅介護支援事業者が極めて重要な役割を果たすことを求めたものであり、指定居宅介護支援事業者は、常にこの基本方針を踏まえた事業運営を図らなければならない。


事 務 連 絡
平成11年9月14日

厚生省老人保健福祉局介護保険制度施行準備室
指定居宅介護支援事業者等の事業の公正中立な実施について
介護保険制度の施行準備については、種々ご尽力をいただき厚く御礼申し上げます。
 さて、要介護認定調査の本格実施の時期が迫り、居宅介護支援事業者の指定が進んでいること等により、最近においては、指定居宅介護支援事業者の事業活動が活発化する傾向があります。特に、同一系列事業体がより多くの利用者を獲得するため、指定居宅介護支援事業者を窓口に、要介護認定の申請代行を無料で行うことを強調したり、その後の居宅サービス計画の作成や同一系列事業体による居宅サービスの利用の予約まで勧誘するような活動が散見されることは誠に遺憾であります。居宅介護支援事業者等は個々のサービス事業者の事業とは独立した公正中立の遵守が極めて重要であり、これに違反することがないよう、特に下記の事項についてご指導いただきますようお願いいたします。
1.要介護認定調査類似行為の禁止

 要介護認定調査類似行為について、被保険者に市町村が行う要介護認定のための認定調査との誤認を与えるような方法で実施することは、混乱を惹起する可能性があるため認められない。

2.要介護認定申請の代行

 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第38号)(以下「指定基準」という。)第8条においては、指定居宅介護支援事業者に対し、要介護認定等の申請について、利用申込者に必要な協力を行うことを義務づけているが、この協力は、あくまでも利用申込者の意思を踏まえてとしており、利用申込者からの依頼があることが前提である。居宅サービス計画作成の利用者獲得を意図して申請代行の勧誘を行うことは認められない。

3.居宅サービス計画作成の予約

 いずれの居宅介護支援事業者を選択するかは利用者の自由な選択によることが基本である。このため、居宅サービス計画の作成の開始に当たっては、利用申込者又はその家族に対して、居宅介護支援事業所の運営規程の概要や、介護支援専門員の勤務体制、秘密の保持、事故発生時の対応、苦情処理の体制等の利用者が居宅介護支援事業者を選択するために必要な重要事項を記した説明書を交付して説明すべきこととなっている。利用者の獲得誘導のため、このような手続きを行わないまま居宅サービス計画作成の予約を先行して受けることは認められない。

4.居宅サービス利用の予約

 指定基準上、居宅サービス計画の作成開始に当たって、介護支援専門員は、利用者の課題分析を行うとともに、地域の指定居宅サービス事業者に関するサービスの内容、利用料等の情報を適正に利用者又はその家族に提供し、利用者にサービスの選択を求めることとなっているものであり、このようなことがないまま、特定の居宅サービス事業者によるサービスの利用予約を先行して行う場合には、指定基準違反として指定が取り消されることがあり得る。 なお、指定居宅介護支援事業者は、居宅サービス計画原案を作成する以前に、特定の居宅サービス事業者に対しサービス利用の予約を行うことができないことは言うまでもない。

5.指定居宅介護支援事業者の広告

 指定居宅介護支援事業者に係る広告については、あくまで当該居宅介護支援事業の範囲にとどめるべきであり、運営の方針、職員の職種、営業日、営業時間、居宅介護支援の提供方法、内容及び利用料、事業の実施地域等の事業内容については認められるが、例えば、同一系列事業体のサービスの営業活動をも併せて行うことは、指定基準における特定の居宅サービス事業者等によるサービスを利用すべき旨の指示等の禁止、居宅サービス事業者のサービス内容等の情報の適正な提供の規程に違反する恐れがあり認められない。

6.要介護認定の認定調査の際の居宅サービス計画作成に係る課題分析の実施
 継続事例において、引き続き当該指定居宅介護支援事業者に居宅介護支援を依頼する意思があらかじめ明らかとなっている場合を除き、要介護認定の認定調査の際に併せて居宅サービス計画作成のための課題分析を実施することは原則として認められない。

7.要介護認定の認定調査の際の営業活動の禁止

 要介護認定に係る調査を指定居宅介護支援事業者等に委託する場合においては、調査自体が公平公正に行われる必要があることのみならず、その後の指定居宅介護支援事業者及び指定居宅サービス事業者の選択について、被保険者を勧誘し予断を与える行為があってはならないことは当然である。
 要介護認定の認定調査は、本来市町村が行うべきものであり、介護保険法上も、市町村職員に代わって認定調査に従事する者を刑法その他の罰則の適用については公務員とみなす旨定めている。認定調査実施時に、居宅サービス計画作成の予約を行うこと、居宅サービス利用の予約を行うこと、特定の指定居宅介護支援事業者の広告を行うこと等の行為は、指定基準に違反するものであり指定が取り消されることがあり得るものである。
 このため、市町村が認定調査を指定居宅介護支援事業者等に委託する場合にあっては、サービス選択に不適切な影響がある行為を行ってはならないことについて、ご指導いただくとともに、万が一認定調査員としてあるまじき行為があった場合には、必要に応じて認定調査委託契約の見直し等の対応を含め、厳正に対応いただきたい。
  第二章 人員に関する基準 2 人員に関する基準
 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援事業所に介護支援専門員を配置しなければならないが、利用者の自立の支援及び生活の質の向上を図るための居宅介護支援の能力を十分に有する者を充てるよう心がける必要がある。
 また、基準第2条及び第3条に係る運用に当たっては、次の点に留意する必要がある。
 (従業者の員数)
第二条 指定居宅介護支援事業者は、当該指定に係る事業所(以下「指定居宅介護支援事業所」という。)ごとに一以上の員数の指定居宅介護支援の提供に当たる法第七十九条第二項第二号に規定する介護支援専門員であって常勤であるもの(以下単に「介護支援専門員」という。)を置かなければならない。

2 前項に規定する員数の標準は、利用者の数が五十又はその端数を増すごとに一とする。
(1)介護支援専門員の員数
 介護支援専門員は、指定居宅介護支援事業所ごとに必ず1人以上を常勤で置くこととされており、常勤の考え方は(3)の1)のとおりである。常勤の介護支援専門員を置くべきこととしたのは、指定居宅介護支援事業所の営業時間中は、介護支援専門員は常に利用者からの相談等に対応できる体制を整えている必要があるという趣旨であり、介護支援専門員がその業務上の必要性から、又は他の業務を兼ねていることから、当該事業所に不在となる場合であっても、管理者、その他の従業者等を通じ、利用者が適切に介護支援専門員に連絡が取れる体制としておく必要がある。
 なお、介護支援専門員については、他の業務との兼務を認められているところであるが、これは、居宅介護支援の事業が、指定居宅サービス等の実態を知悉する者により併せて行われることが、より効果的であると考えられるためである。
 また、当該常勤の介護支援専門員の配置は利用者の数50人に対して1人を標準とするものであり、利用者の数が50人又はその端数を増すごとに増員することが望ましい。ただし、当該増員に係る介護支援専門員については非常勤とすることを妨げるものではない。
 また、当該非常勤の介護支援専門員に係る他の業務との兼務については、介護保険施設に置かれた常勤専従の介護支援専門員との兼務を除き、差し支えないものであり、当該他の業務とは必ずしも指定居宅サービス事業の業務を指すものではない。
(管理者)
第三条 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援事業所ごとに常勤の管理者を置かなければならない。

2 前項に規定する管理者は、専らその職務に従事する者でなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

 一 管理者がその管理する指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員の職務に従事する場合

 二 管理者が同一敷地内にある他の事業所の職務に従事する場合(その管理する指定居宅介護支援事業所の管理に支障がない場合に限る。)

   
(2)管理者
 指定居宅介護支援事業所に置くべき管理者は、専らその職務に従事する常勤の者でなければならないが、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員の職務に従事する場合及び管理者が同一敷地内にある他の事業所の職務に従事する場合(その管理する指定居宅介護支援事業所の管理に支障がない場合に限る。)はこの限りでないこととされている。この場合、同一敷地内にある他の事業所とは、必ずしも指定居宅サービス事業を行う事業所に限るものではなく、例えば、介護保険施設、病院、診療所、薬局等の業務に従事する場合も、当該指定居宅介護支援事業所の管理に支障がない限り認められるものである。
 指定居宅介護支援事業所の管理者は、指定居宅介護支援事業所の営業時間中は、常に利用者からの利用申込み等に対応できる体制を整えている必要があるものであり、管理者が介護支援専門員を兼務していて、その業務上の必要性から当該事業所に不在となる場合であっても、その他の従業者等を通じ、利用者が適切に管理者に連絡が取れる体制としておく必要がある。
 また、例えば、訪問系サービスの事業所において訪問サービスそのものに従事する従業者との兼務は一般的には管理者の業務に支障があると考えられるが、訪問サービスに従事する勤務時間が限られている職員の場合には、支障がないと認められる場合もありうる。また、併設する事業所に原則として常駐する老人介護支援センターの職員、訪問介護、訪問看護等の管理者等との兼務は可能と考えられる。なお、介護保険施設の常勤専従の介護支援専門員との兼務は認められないものである。
  (3)用語の定義
「常勤」及び「専らその職務に従事する」の定義はそれぞれ次のとおりである。

1)「常勤」
 当該事業所における勤務時間(当該事業所において、指定居宅介護支援 以外の事業を行っている場合には、当該事業に従事している時間を含む。 )が、当該事業所において定められている常勤の従業者が勤務すべき時間 数(週32時間を下回る場合は週32時間を基本とする。)に達している ことをいうものである。同一の事業者によって当該事業所に併設される事 業所の職務であって、当該事業所の職務と同時並行的に行われることが差 し支えないと考えられるものについては、その勤務時間が常勤の従業者が 勤務すべき時間数に達していれば、常勤の要件を満たすものであることと する。例えば、同一の事業者によって指定訪問介護事業所が併設されてい る場合、指定訪問介護事業所の管理者と指定居宅介護支援事業所の管理者 を兼務している者は、その勤務時間が所定の時間に達していれば、常勤要 件を満たすこととなる。

2)「専らその職務に従事する」
 原則として、サービス提供時間帯を通じて当該サービス以外の職務に従事しないことをいうものである。

3)「事業所」
 事業所とは、介護支援専門員が居宅介護支援を行う本拠であり、具体的には管理者がサービスの利用申込の調整等を行い、居宅介護支援に必要な利用者ごとに作成する帳簿類を保管し、利用者との面接相談に必要な設備及び備品を備える場所である。
第三章 運営に関する基準
(内容及び手続の説明及び同意)
第四条 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供の開始に際し、あらかじめ、利用申込者又はその家族に対し、第十八条に規定する運営規程の概要その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、当該提供の開始について利用申込者の同意を得なければならない。
2 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供の開始に際し、あらかじめ、
居宅サービス計画が利用者の希望を基礎として作成されるものであること等につき説明
を行い、理解を得なければならない。
3 運営に関する基準
(1)内容及び手続きの説明及び同意
 基準第4条は、基本理念としての高齢者自身によるサービス選択を具体化したものである。利用者は指定居宅サービスのみならず、指定居宅介護支援事業者についても自由に選択できることが基本であり、指定居宅介護支援事業者は、利用申し込みがあった場合には、あらかじめ、当該利用申込者又はその家族に対し、当該指定居宅介護支援事業所の運営規程の概要、介護支援専門員の勤務の体制、秘密の保持、事故発生時の対応、苦情処理の体制等の利用申込者がサービスを選択するために必要な重要事項を説明書やパンフレット等の文書を交付して説明を行い、当該指定居宅介護支援事業所から居宅介護支援を受けることにつき同意を得なければならないこととしたものである。なお、当該同意については、利用者及び指定居宅介護支援事業者双方の保護の立場から書面によって確認することが望ましいものである。
 なお、この場合、指定居宅介護支援は、利用者の意思及び人格を尊重し、常に利用者の立場に立って行うものであり、居宅サービス計画は利用者の希望を基礎として作成されるものであること、このため、指定居宅介護支援について利用者の主体的な参加が重要であることにつき十分説明を行い、理解を得なければならない。
 (提供拒否の禁止)
第五条 指定居宅介護支援事業者は、正当な理由なく指定居宅介護支援の提供を拒んではならない。
(2)提供拒否の禁止
 基準第5条は、居宅介護支援の公共性にかんがみ、原則として、指定居宅介護支援の利用申し込みに対しては、これに応じなければならないことを規定したものであり、正当な理由なくサービスの提供を拒否することを禁止するものである。
 なお、ここでいう正当な理由とは、1)当該事業所の現員からは利用申込に応じきれない場合、2)利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合、3)利用申込者が他の指定居宅介護支援事業者にも併せて指定居宅介護支援の依頼を行っていることが明らかな場合等である。
 (サービス提供困難時の対応)
第六条 指定居宅介護支援事業者は、当該事業所の通常の事業の実施地域(当該指定居宅介護支援事業所が通常時に指定居宅介護支援を提供する地域をいう。以下同じ。)等を勘案し、利用申込者に対し自ら適切な指定居宅介護支援を提供することが困難であると認めた場合は、他の指定居宅介護支援事業者の紹介その他の必要な措置を講じなければならない。
 
 (受給資格等の確認)
第七条 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供を求められた場合には、その者の提示する被保険者証によって、被保険者資格、要介護認定又は要支援認定(以下「要介護認定等」という。)の有無及び要介護認定等の有効期間を確かめるものとする。
 
 (要介護認定の申請等に係る援助)
第八条 指定居宅介護支援事業者は、被保険者の要介護認定等に係る申請について、利用申込者の意思を踏まえ、必要な協力を行わなければならない。
(3)要介護認定等の申請に係る援助
1) 基準第8条第1項は、法第27条第1項及び第32条第1項に基づき、被保険者が居宅介護支援事業者に要介護認定等の申請に関する手続きを代わって行わせることができること等を踏まえ、被保険者から要介護認定等の申請の代行を依頼された場合等においては、居宅介護支援事業者は必要な協力を行わなければならないものとしたものである。
2 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援の提供の開始に際し、要介護認定等を受けていない利用申込者については、要介護認定等の申請が既に行われているか否かを確認し、申請が行われていない場合は、当該利用申込者の意思を踏まえて速やかに当該申請が行われるよう、必要な援助を行わなければならない。 2) 基準第2項は、要介護認定等の申請がなされていれば、要介護認定等の効力が申請時に遡ることにより、指定居宅介護支援の利用に係る費用が保険給付の対象となり得ることを踏まえ、指定居宅介護支援事業者は、利用申込者が要介護認定等を受けていないことを確認した場合には、要介護認定等の申請が既に行われているか否かを確認し、申請が行われていない場合は、当該利用申込者の意向を踏まえて速やかに当該申請が行われるよう必要な援助を行わなければならないこととしたものである。
3 指定居宅介護支援事業者は、要介護認定等の更新の申請が、遅くとも当該利用者が受けている要介護認定等の有効期間の満了日の三十日前には行われるよう、必要な援助を行わなければならない。 3) 基準第3項は、要介護認定等の有効期間が付されているものであることを踏まえ、指定居宅介護支援事業者は、要介護認定等の有効期間を確認した上、要介護認定等の更新の申請が、遅くとも当該利用者が受けている要介護認定等の有効期間が終了する1月前にはなされるよう、必要な援助を行わなければならないこととしたものである。
 (身分を証する書類の携行)
第九条 指定居宅介護支援事業者は、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員に身分を証する書類を携行させ、初回訪問時又は利用者若しくはその家族から求められたときは、これを提示すべき旨を指導しなければならない。
(4)身分を証する書類の携行
 基準第9条は、利用者が安心して指定居宅介護支援の提供を受けられるよう、指定居宅介護支援事業者が、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員に身分を証する証書や名刺等を携行させ、初回訪問時及び利用者又はその家族から求められたときは、これを提示すべき旨を指導するべきこととしたものである。当該証書等には、当該指定居宅介護支援事業所の名称、当該介護支援専門員の氏名を記載した上、写真を貼付したものとすることが望ましい。
 なお、当該介護支援専門員は、当該証書等に併せて都道府県知事又は都道府県知事が指定した団体が発行する携帯用介護支援専門員実務研修修了証明書を携行するものとする。
 (利用料等の受領)
第十条 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援(法第四十六条第四項(法第五十八条第四項において準用する場合を含む。)の規定に基づき居宅介護サービス計画費(法第四十六条第二項に規定する居宅介護サービス計画費をいう。以下同じ。)又は居宅支援サービス計画費(法第五十八条第二項に規定する居宅支援サービス計画費をいう。以下同じ。)が当該指定居宅介護支援事業者に支払われる場合に係るものを除く。)を提供した際にその利用者から支払を受ける利用料(居宅介護サービス計画費又は居宅支援サービス計画費の支給の対象となる費用に係る対価をいう。以下同じ。)と、居宅介護サービス計画費の額又は居宅支援サービス計画費の額との間に、不合理な差額が生じないようにしなければならない。
(5)利用料等の受領
1) 基準第10条第1項は、利用者間の公平及び利用者の保護の観点から、保険給付がいわゆる償還払いとなる場合と、保険給付が利用者に代わり指定居宅介護支援事業者に支払われる場合(以下「代理受領がなされる場合」という。)の間で、一方の経費が他方へ転嫁等されることがないよう、償還払いの場合の指定居宅介護支援の利用料の額と、居宅介護サービス計画費又は居宅支援サービス計画費の額(要するに、代理受領がなされる場合の指定居宅介護支援に係る費用の額)との間に、不合理な差額を設けてはならないこととするとともに、これによって、償還払いの場合であっても原則として利用者負担が生じないこととする趣旨である。
2 指定居宅介護支援事業者は、前項の利用料のほか、利用者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域の居宅を訪問して指定居宅介護支援を行う場合には、それに要した交通費の支払を利用者から受けることができる。 2) 基準第2項は、指定居宅介護支援の提供に関して、利用者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域の居宅において指定居宅介護支援を行う場合の交通費の支払いを利用者から受けることができることとし、保険給付の対象となっているサービスと明確に区分されないあいまいな名目による費用の徴収は認めないこととしたものである。
3 指定居宅介護支援事業者は、前項に規定する費用の額に係るサービスの提供に当たっては、あらかじめ、利用者又はその家族に対し、当該サービスの内容及び費用について説明を行い、利用者の同意を得なければならない。 3) 基準第3項は、指定居宅介護支援事業者は、前項の交通費の支払いを受けるに当たっては、あらかじめ、利用者又はその家族に対してその額等に関して説明を行い、利用者の同意を得なければならないこととしたものである。
 (保険給付の請求のための証明書の交付)
第十一条 指定居宅介護支援事業者は、提供した指定居宅介護支援について前条第一項の利用料の支払を受けた場合は、当該利用料の額等を記載した指定居宅介護支援提供証明書を利用者に対して交付しなければならない。
(6)保険給付の請求のための証明書の交付
 基準第11条は、居宅介護支援に係る保険給付がいわゆる償還払いとなる場合に、利用者が保険給付の請求を容易に行えるよう、指定居宅介護支援事業者は、利用料の額その他利用者が保険給付を請求する上で必要と認められる事項を記載した指定居宅介護支援提供証明書を利用者に対して交付するべきこととしたものである。
 (指定居宅介護支援の基本取扱方針)
第十二条 指定居宅介護支援は、要介護状態の軽減若しくは悪化の防止又は要介護状態となることの予防に資するよう行われるとともに、医療サービスとの連携に十分配慮して行われなければならない。

2 指定居宅介護支援事業者は、自らその提供する指定居宅介護支援の質の評価を行い、常にその改善を図らなければならない。
(7)指定居宅介護支援の基本取扱方針及び具体的取扱方針
 基準第13条は、居宅介護支援が我が国にはじめて導入されるものであることから、その確立を図るため、利用者の課題分析、サービス担当者会議の開催、居宅サービス計画の作成、居宅サービス計画の実施状況の把握などの居宅介護支援を構成する一連の業務のあり方及び当該業務を行う介護支援専門員の責務を明らかにしたものである。
 (指定居宅介護支援の具体的取扱方針)
第十三条 指定居宅介護支援の方針は、次に掲げるところによるものとする。
 
一 指定居宅介護支援事業所の管理者は、介護支援専門員に居宅サービス計画の作成に関する業務を担当させるものとする。
1) 介護支援専門員による居宅サービス計画の作成(基準第13条第1号)
 指定居宅介護支援事業所の管理者は、居宅サービス計画の作成に関する業務の主要な過程を介護支援専門員に担当させることとしたものである。
二 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成の開始に当たっては、当該地域における指定居宅サービス事業者等に関するサービスの内容、利用料等の情報を適正に利用者又はその家族に対して提供して、利用者にサービスの選択を求めるものとする。 2) 利用者自身によるサービスの選択(第2号)
 介護支援専門員は、利用者自身がサービスを選択することを基本に、これを支援するものである。このため、介護支援専門員は、当該利用者が居住する地域の指定居宅サービス事業者等に関するサービスの内容、利用料等の情報を適正に利用者またはその家族に対して提供することにより、利用者にサービスの選択を求めるべきものであり、特定の指定居宅サービス事業者に不当に偏した情報を提供するようなことや、利用者の選択を求めることなく同一の事業主体のサービスのみによる居宅サービス計画原案を最初から提示するようなことがあってはならないものである。
三 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成に当たっては、適切な方法により、利用者について、その有する能力、既に提供を受けている指定居宅サービス等のその置かれている環境等の評価を通じて利用者が現に抱える問題点を明らかにし、利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上で解決すべき課題を把握しなければならない。
3) 課題分析の実施(第3号)
 居宅サービス計画は、個々の利用者の特性に応じて作成されることが重要である。このため介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成に先立ち利用者の課題分析を行うこととなる。
 課題分析とは、利用者の有する日常生活上の能力や利用者が既に提供を受けている指定居宅サービスや介護者の状況等の利用者を取り巻く環境等の評価を通じて利用者が生活の質を維持・向上させていく上で生じている問題点を明らかにし、利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上で解決すべき課題を把握することであり、利用者の生活全般についてその状態を十分把握することが重要である。

 なお、当該課題分析は、介護支援専門員の個人的な考え方や手法のみによって行われてはならず、その者の課題を客観的に抽出するための手法として合理的なものと認められる適切な方法を用いなければならないものであるが、この課題分析の方式については、別途通知するところによるものである。
四 介護支援専門員は、前号に規定する解決すべき課題の把握に当たっては、利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならない。この場合において、介護支援専門員は、面接の趣旨を利用者及びその家族に対して十分に説明し、理解を得なければならない。
4) 課題分析における留意点(第4号)
 介護支援専門員は、解決すべき課題の把握に当たっては、必ず利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならない。この場合において、利用者やその家族との間の信頼関係、協働関係の構築が重要であり、介護支援専門員は、面接の趣旨を利用者及びその家族に対して十分に説明し、理解を得なければならない。なお、このため、介護支援専門員は面接技法等の研鑽に努めることが重要である。
五 介護支援専門員は、利用者及びその家族の希望並びに利用者について把握された解決すべき課題に基づき、当該地域における指定居宅サービス等が提供される体制を勘案して、提供されるサービスの目標及びその達成時期、サービスを提供する上での留意点等を盛り込んだ居宅サービス計画の原案を作成しなければならない。 5) 居宅サービス計画原案の作成(第5号)
 介護支援専門員は、居宅サービス計画が利用者の生活の質に直接影響する重要なものであることを十分に認識し、居宅サービス計画原案を作成しなければならない。したがって、居宅サービス計画原案は、利用者及びその家族の希望並びに利用者について把握された解決すべき課題をまず明らかにした上で、当該地域における指定居宅サービス等が提供される体制を勘案し、実現可能なものとする必要がある。
 なお、当該居宅サービス計画原案には、提供される居宅サービスについて、その長期的な目標及びそれを達成するための短期的な目標並びにそれらの達成時期等を明確に盛り込み、当該達成時期には居宅サービス計画及び各指定居宅サービス等の評価を行い得るようにすることが重要である。
六 介護支援専門員は、サービス担当者会議(介護支援専門員が居宅サービス計画の作成のために居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者(以下この号において「担当者」という。)を召集して行う会議をいう。以下同じ。)の開催、担当者に対する照会等により、当該居宅サービス計画の原案の内容について、担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする。 6) サービス担当者会議等による専門的意見の聴取(第6号)
 介護支援専門員は、効果的かつ実現可能な質の高い居宅サービス計画とするため、各サービスが共通の目標の達成のため、具体的なサービスの内容として何ができるかなどについて居宅サービス計画原案に位置づけた指定居宅サービス等の担当者からなるサービス担当者会議の開催又は当該担当者への照会等により、専門的な見地からの意見を求め調整を図ることが重要である。なお、介護支援専門員は、利用者の状態を分析し、複数職種間で直接に意見調整を行う必要の有無について十分見極める必要があるものである。
七 介護支援専門員は、居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等について、保険給付の対象となるか否かを区分した上で、その種類、内容、利用料等について利用者又はその家族に対して説明し、文書により利用者の同意を得なければならない。 7) 居宅サービス計画の説明及び同意(第7号)
 居宅サービス計画に位置付ける指定居宅サービス等の選択は、利用者自身が行うことが基本であり、また、当該計画は利用者の希望を尊重して作成されなければならない。利用者に選択を求めることは介護保険制度の基本理念である。このため、当該計画原案の作成に当たって、これに位置付けるサービスについて、また、サービスの内容についても利用者の希望を尊重することととともに、作成された居宅サービス計画の原案についても、最終的には、その内容について説明を行った上で文書によって利用者の同意を得ることを義務づけることにより、利用者によるサービスの選択やサービス内容等への利用者の意向の反映の機会を保障しようとするものである。
八 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成後においても、利用者及びその家族、指定居宅サービス事業者等との連絡を継続的に行うことにより、居宅サービス計画の実施状況の把握を行うとともに、利用者についての解決すべき課題の把握を行い、必要に応じて居宅サービス計画の変更、指定居宅サービス事業者等との連絡調整その他の便宜の提供を行うものとする。
8) 居宅サービス計画の実施状況等の把握及び評価等(第8号)
 指定居宅介護支援においては、利用者の有する解決すべき課題に即した適切なサービスを組み合わせて利用者に提供し続けることが重要である。このために介護支援専門員は、利用者の解決すべき課題の変化に留意することが重要であり、居宅サービス計画の作成後においても、利用者及びその家族、指定居宅サービス事業者等との連絡を継続的に行うことにより、居宅サービス計画の実施状況や利用者についての解決すべき課題の把握を行い、必要に応じて居宅サービス計画の変更、指定居宅サービス事業者等との連絡調整その他の便宜の提供を行うものとする。
 なお、利用者の解決すべき課題の変化は、利用者に直接サービスを提供する指定居宅サービス事業者等により把握されることも多いことから、介護支援専門員は、当該指定居宅サービス事業者等のサービス担当者と緊密な連携を図り、利用者の解決すべき課題の変化が認められる場合には、円滑に連絡が行われる体制の整備に努めなければならない。
九 介護支援専門員は、利用者がその居宅において日常生活を営むことが困難となったと認める場合又は利用者が介護保険施設への入院又は入所を希望する場合には、介護保険施設への紹介その他の便宜の提供を行うものとする。 9) 介護保険施設への紹介その他の便宜の提供(第9号)
 介護支援専門員は、利用者がその居宅において日常生活を営むことが困難となったと認める場合又は利用者が介護保険施設への入院又は入所を希望する場合には、介護保険施設はそれぞれ医療機能等が異なることに鑑み、主治医の意見を参考にする、主治医に意見を求める等をして介護保険施設への紹介その他の便宜の提供を行うものとする。
十 介護支援専門員は、介護保険施設等から退院又は退所しようとする要介護者等から依頼があった場合には、居宅における生活へ円滑に移行できるよう、あらかじめ、居宅サービス計画の作成等の援助を行うものとする。 10) 介護保険施設との連携(第10号)
 介護支援専門員は、介護保険施設等から退院又は退所しようとする要介護者等から居宅介護支援の依頼があった場合には、居宅における生活へ円滑に移行できるよう、あらかじめ、居宅での生活における介護上の留意点等の情報を介護保険施設等の従業者から聴取する等の連携を図るとともに、居宅での生活を前提とした課題分析を行った上で居宅サービス計画を作成する等の援助を行うことが重要である。
十一 介護支援専門員は、利用者が訪問看護、通所リハビリテーション等の医療サービスの利用を希望している場合その他必要な場合には、利用者の同意を得て主治の医師又は歯科医師(以下「主治の医師等」という。)の意見を求めなければならない。 11) 主治の医師等の意見等(第11号・第12号)
訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療 養管理指導及び短期入所療養介護については、主治の医師又は歯科医師 (以下「主治の医師等」という。)等がその必要性を認めたものに限られ るものであることから、介護支援専門員は、これらの医療サービスを居宅 サービス計画に位置付ける場合にあっては主治の医師等の指示があること を確認しなければならない。
 このため、利用者がこれらの医療サービスを希望している場合その他必要な場合には、介護支援専門員は、あらかじめ、利用者の同意を得て主治の医師等の意見を求めなければならない。

 なお、医療サービス以外の指定居宅サービス等を居宅サービス計画に位置付ける場合にあって、当該指定居宅サービス等に係る主治の医師等の医学的観点からの留意事項が示されているときは、介護支援専門員は、当該留意点を尊重して居宅介護支援を行うものとする。
十二 介護支援専門員は、居宅サービス計画に訪問看護、通所リハビリテーション等の医療サービスを位置付ける場合にあっては、当該医療サービスに係る主治の医師等の指示がある場合に限りこれを行うものとし、医療サービス以外の指定居宅サービス等を位置付ける場合にあっては、当該指定居宅サービス等に係る主治の医師の医学的観点からの留意事項が示されているときは、当該留意点を尊重してこれを行うものとする。  
十三 介護支援専門員は、利用者が提示する被保険者証に、法第七十三条第二項に規定する認定審査会意見又は法第三十七条第一項の規定による指定に係る居宅サービスの種類についての記載がある場合には、利用者にその趣旨(同条第一項の規定による指定に係る居宅サービスの種類については、その変更の申請ができることを含む。)を説明し、理解を得た上で、その内容に沿って居宅サービス計画を作成しなければならない。 12) 認定審査会意見等の居宅サービス計画への反映(第13号)
 指定居宅サービス事業者は、法第73条第2項の規定に基づき認定審査会意見が被保険者証に記されているときは、当該意見に従って、当該被保険者に当該指定居宅サービスを提供するように努めなければならないこと、法第37条第1項の規定により居宅サービスの種類が指定されたときには、当該指定されたサービス以外のサービスについては保険給付が行われないことから、介護支援専門員は、利用者が提示する被保険者証にこれらの記載がある場合には、利用者にその趣旨(法第37条第1項の指定に係る居宅サービス種類については、その変更の申請ができることを含む。)について説明し、理解を得た上で、その内容に沿って居宅サービス計画を作成しなければならない。
十四 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成又は変更に当たっては、利用者の自立した日常生活の支援を効果的に行うため、原則として特定の時期に偏ることなく、計画的に指定居宅サービス等の利用が行われるようにしなければならない。 13) 計画的な指定居宅サービス等の利用(第14号)
 利用者の自立した日常生活の支援を効果的に行うためには、利用者の状態に応じて、継続的かつ安定的に居宅サービスが提供されることが重要である。介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成又は変更に当たり、継続的な支援という観点に立ち、計画的に指定居宅サービス等の提供が行われるようにすることが必要であり、支給限度額の枠があることのみをもって、特定の時期に偏って継続が困難な、また必要性に乏しい居宅サービスの利用を助長するようなことがことがあってはならない。
十五 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成又は変更に当たっては、利用者の日常生活全般を支援する観点から、介護給付等対象サービス以外の保健医療サービス又は福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等の利用も含めて居宅サービス計画上に位置付けるよう努めなければならない。 14) 総合的な居宅サービス計画の作成(第15号)
 居宅サービス計画は、利用者の日常生活全般を支援する観点に立って作成されることが重要である。このため、居宅サービス計画の作成または変更に当たっては、利用者及びその家族の希望や課題分析の結果に基づき、介護給付等対象サービス以外の、例えば、市町村保健婦等が居宅を訪問して行う指導・教育等の保健サービス、老人介護支援センターにおけるソーシャルワーク及び市町村が一般施策として行う配食サービス、寝具乾燥サービスや当該地域の住民による見守り、配食、会食などの自発的な活動によるサービス等、更には、こうしたサービスと併せて提供される精神科訪問看護等の医療サービス、はり師・きゅう師による施術、保健婦・看護婦・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練なども含めて居宅サービス計画に位置づけることにより総合的な計画となるよう努めなければならない。
十六 指定居宅介護支援の提供に当たっては、懇切丁寧に行うことを旨とし、利用者又はその家族に対し、サービスの提供方法等について、理解しやすいように説明を行う。 15) 指定居宅介護支援の基本的留意点(第16号)
指定居宅介護支援は、利用者及びその家族の主体的な参加及び自らの課題解決に向けての意欲の醸成と相まって行われることが重要である。このためには、指定居宅介護支援について利用者及びその家族の十分な理解が求められるものであり、介護支援専門員は、指定居宅介護支援を懇切丁寧に行うことを旨とし、サービスの提供方法等について理解しやすいように説明を行うことが肝要である。
 (法定代理受領サービスに係る報告)
第十四条 指定居宅介護支援事業者は、毎月、市町村(法第四十一条第十項の規定により同条第九項の規定による審査及び支払に関する事務を国民健康保険団体連合会(国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会をいう。以下同じ。)に委託している場合にあっては、当該国民健康保険団体連合会)に対し、居宅サービス計画において位置付けられている指定居宅サービス等のうち法定代理受領サービス(法第四十一条第六項(法第五十三条第四項において準用する場合を含む。)の規定により居宅介護サービス費又は居宅支援サービス費が利用者に代わり当該指定居宅サービス事業者に支払われる場合の当該居宅介護サービス費又は居宅支援サービス費に係る指定居宅サービスをいう。)として位置付けたものに関する情報を記載した文書を提出しなければならない。
(8)法定代理受領サービスに係る報告
1) 基準第14条第1項は、居宅介護サービス費又は居宅支援サービス費を利用者に代わり当該指定居宅サービス事業者に支払うための手続きとして、指定居宅介護支援事業者に、市町村(国民健康保険団体連合会に委託している場合にあっては当該国民健康保険連合会)に対して、居宅サービス計画において位置付けられている指定居宅サービス等のうち法定代理受領サービスとして位置付けたものに関する情報を記載した文書(給付管理票)を毎月提出することを義務づけたものである。
2 指定居宅介護支援事業者は、居宅サービス計画に位置付けられている基準該当居宅サービスに係る特例居宅介護サービス費又は特例居宅支援サービス費の支給に係る事務に必要な情報を記載した文書を、市町村(当該事務を国民健康保険団体連合会に委託している場合にあっては、当該国民健康保険団体連合会)に対して提出しなければならない。 2) 基準第2項は、指定居宅介護支援事業者が居宅サービス計画に位置付けられている基準該当居宅サービスに係る情報を指定居宅サービスに係る情報と合わせて市町村(国民健康保険団体連合会に委託している場合にあっては当該国民健康保険団体連合会)に対して提供することにより、基準該当居宅サービスに係る特例居宅介護サービス費又は特例居宅支援サービス費の支払事務が、居宅サービス計画に位置付けられている指定居宅サービスに係る居宅介護サービス費又は居宅支援サービス費の支払を待つことなく、これと同時並行的に行うことができるようにするための規定である。
 (利用者に対する居宅サービス計画等の書類の交付)
第十五条 指定居宅介護支援事業者は、利用者が他の居宅介護支援事業者の利用を希望する場合その他利用者からの申出があった場合には、当該利用者に対し、直近の居宅サービス計画及びその実施状況に関する書類を交付しなければならない。
(9)利用者に対する居宅サービス計画等の書類の交付
 基準第15条は、利用者が指定居宅介護支援事業者を変更した場合に、変更後の指定居宅介護支援事業者が滞りなく給付管理票の作成・届出等の事務を行うことができるよう、指定居宅介護支援事業者は、利用者が他の居宅介護支援事業者の利用を希望する場合その他利用者からの申し出があった場合には、当該利用者に対し、直近の居宅サービス計画及びその実施状況に関する書類を交付しなければならないこととしたものである。
 (利用者に関する市町村への通知)
第十六条 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援を受けている利用者が次のいずれかに該当する場合は、遅滞なく、意見を付してその旨を市町村に通知しなければならない。

 一 正当な理由なしに法第二十四条第二項に規定する介護給付等対象サービスの利用に関する指示に従わないこと等により、要介護状態等の程度を増進させたと認められるとき。

 二 偽りその他不正の行為によって保険給付の支給を受け、又は受けようとしたとき。
(10)利用者に関する市町村への通知
 基準第16条は、偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者及び自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失等により、要介護状態等若しくはその原因となった事故を生じさせるなどした者については、市町村が、介護保険法第22条第1項に基づく既に支払った保険給付の徴収又は第64条に基づく保険給付の制限を行うことができることに鑑み、指定居宅介護支援事業者が、その利用者に関し、保険給付の適正化の観点から市町村に通知しなければならない事由を列記したものである。
 (管理者の責務)
第十七条 指定居宅介護支援事業所の管理者は、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員その他の従業者の管理、指定居宅介護支援の利用の申込みに係る調整、業務の実施状況の把握その他の管理を一元的に行わなければならない。

2 指定居宅介護支援事業所の管理者は、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員その他の従業者にこの章の規定を遵守させるため必要な指揮命令を行うものとする。
 
 (運営規程)
第十八条 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援事業所ごとに、次に掲げる事業の運営についての重要事項に関する規程(以下「運営規程」という。)として次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 事業の目的及び運営の方針
 二 職員の職種、員数及び職務内容
 三 営業日及び営業時間
 四 指定居宅介護支援の提供方法、内容及び利用料その他の費用の額
 五 通常の事業の実施地域
 六 その他運営に関する重要事項
(11)運営規程
 基準第18条は、指定居宅介護支援の事業の適正な運営及び利用者等に対する適切な指定居宅介護支援の提供を確保するため、同条第1号から第6号までに掲げる事項を内容とする規定を定めることを指定居宅介護支援事業所ごとに義務づけたものである。特に次の点に留意する必要がある。

1) 職員の職種、員数及び職務内容(第2号)
 職員については、介護支援専門員とその他の職員に区分し、員数及び職務内容を記載することとする。

2) 指定居宅介護支援の提供方法、内容及び利用料その他の費用の額(第4号)
 指定居宅介護支援の提供方法及び内容については、利用者の相談を受ける場所、課題分析の手順等を記載するものとする。

3) 通常の事業の実施地域(第5号)
通常の事業の実施地域は、客観的にその区域が特定されるものとすること。なお、通常の事業の実施地域は、利用申込に係る調整等の観点からの目安であり、当該地域を越えて指定居宅介護支援が行われることを妨げるものではない。
 (勤務体制の確保)
第十九条 指定居宅介護支援事業者は、利用者に対し適切な指定居宅介護支援を提供できるよう、指定居宅介護支援事業所ごとに介護支援専門員その他の従業者の勤務の体制を定めておかなければならない。
(12)勤務体制の確保
 基準第19条は、利用者に対する適切な指定居宅介護支援の提供を確保するため、職員の勤務体制等を規定したものであるが、次の点に留意する必要がある。

1) 指定居宅介護支援事業所ごとに、原則として月ごとの勤務表を作成し、介護支援専門員については、日々の勤務時間、常勤・非常勤の別、管理者との兼務関係等を明確にする。
 なお、当該勤務の状況等は、基準第17条により指定居宅介護支援事業所の管理者が管理する必要があり、非常勤の介護支援専門員を含めて当該指定居宅介護支援事業所の業務として一体的に管理されていることが必要である。従って、非常勤の介護支援専門員が兼務する業務の事業所を居宅介護支援の拠点とし独立して利用者ごとの居宅介護支援台帳の保管を行うようなことは認められないものである。
2 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援事業所ごとに、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員に指定居宅介護支援の業務を担当させなければならない。ただし、介護支援専門員の補助の業務についてはこの限りでない。 2) 基準第2項は、当該指定居宅介護支援事業所の従業者たる介護支援専門員が指定居宅介護支援を担当するべきことを規定したものであり、当該事業所と介護支援専門員の関係については、当該事業所の管理者の指揮命令が介護支援専門員に対して及ぶことが要件となるが、雇用契約に限定されるものではないものである。
3 指定居宅介護支援事業者は、介護支援専門員の資質の向上のために、その研修の機会を確保しなければならない。 3) 基準第3項は、より適切な指定居宅介護支援を行うために、介護支援専門員の研修の重要性について規定したものであり、指定居宅介護支援事業者は、介護支援専門員の資質の向上を図る研修の機会を確保しなければならない。
 (設備及び備品等)
第二十条 指定居宅介護支援事業者は、事業を行うために必要な広さの区画を有するとともに、指定居宅介護支援の提供に必要な設備及び備品等を備えなければならない。
(13)設備及び備品等
 基準第20条に掲げる設備及び備品等については、次の点に留意するものである。

1) 指定居宅介護支援事業所には、事業の運営を行うために必要な面積を有する専用の事務室を設けることが望ましいが、他の事業の用に供するものと明確に区分される場合は、他の事業との同一の事務室であっても差し支えないこと。なお、同一事業所において他の事業を行う場合に、業務に支障がないときは、それぞれの事業を行うための区画が明確に特定されていれば足りるものとする。

2) 専用の事務室又は区画については、相談、サービス担当者会議等に対応するのに適切なスペースを確保することとし、相談のためのスペース等は利用者が直接出入りできるなど利用しやすい構造とすること。

3) 指定居宅介護支援に必要な設備及び備品等を確保すること。ただし、他の事業所及び施設等と同一敷地内にある場合であって、指定居宅介護支援の事業及び当該他の事業所及び施設等の運営に支障がない場合は、当該他の事業所及び施設等に備え付けられた設備及び備品等を使用することができるものとする。
 (従業者の健康管理)
第二十一条 指定居宅介護支援事業者は、介護支援専門員の清潔の保持及び健康状態について、必要な管理を行わなければならない。
 
 (掲示)
第二十二条 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援事業所の見やすい場所に、運営規程の概要、介護支援専門員の勤務の体制その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を掲示しなければならない。
(14)掲示
 基準第22条は、基準第4条の規定により居宅介護支援の提供開始時に利用者のサービスの選択に資する重要事項(その内容については(1)参照)を利用者及びその家族に対して説明を行った上で同意を得ることとしていることに加え、指定居宅介護支援事業所への当該重要事項の掲示を義務づけることにより、サービス提供が開始された後、継続的にサービスが行われている段階においても利用者の保護を図る趣旨である。
 (秘密保持)
第二十三条 指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員その他の従業者は、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはならない。
(15)秘密保持
1) 基準第23条第1項は、指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員その他の従業者に、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密の保持を義務づけたものである。
2 指定居宅介護支援事業者は、介護支援専門員その他の従業者であった者が、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らすことのないよう、必要な措置を講じなければならない。 2) 基準第2項は、指定居宅介護支援事業者に対して、過去に当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員その他の従業者であった者が、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らすことがないよう必要な措置を取ることを義務づけたものであり、具体的には、指定居宅介護支援事業者は、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員その他の従業者が、従業者でなくなった後においてもこれらの秘密を保持すべき旨を、従業者との雇用時に取り決め、例えば違約金についての定めをおくなどの措置を講ずべきこととするものである。
3 指定居宅介護支援事業者は、サービス担当者会議等において、利用者の個人情報を用いる場合は利用者の同意を、利用者の家族の個人情報を用いる場合は当該家族の同意を、あらかじめ文書により得ておかなければならない。 3) 基準第3項は、介護支援専門員及び居宅サービス計画に位置付けた各居宅サービスの担当者が課題分析情報等を通じて利用者の有する問題点や解決すべき課題等の個人情報を共有するためには、あらかじめ、文書により利用者及びその家族から同意を得る必要があることを規定したものであるが、この同意については、指定居宅介護支援事業者が、指定居宅介護支援開始時に、利用者及びその家族の代表から、連携するサービス担当者間で個人情報を用いることについて包括的に同意を得ることで足りるものである。
 (広告)
第二十四条 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援事業所について広告をする
場合においては、その内容が虚偽又は誇大なものであってはならない。
 
 (居宅サービス事業者等からの利益収受の禁止等)
第二十五条 指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成又は変更に関し、利用者に対して特定の居宅サービス事業者等によるサービスを利用すべき旨の指示等を行ってはならない。
(16)居宅サービス事業者等からの利益収受の禁止等
1) 基準第25条第1項は、指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が利用者に利益誘導のために特定の居宅サービス事業者等によるサービスを利用すべき旨の指示等を行うことを禁じた規定である。これは、例えば、指定居宅介護支援事業者又は介護支援専門員が、同一法人系列の居宅サービス事業者のみを利用するように指示すること等により、事実上他の居宅サービス事業者の利用が妨げられることとなり、居宅介護支援の公正中立性や利用者のサービス選択の自由が損ねられることを防止するための規定である。
2 指定居宅介護支援事業者及びその従業者は、居宅サービス計画の作成又は変更に関し、利用者に対して特定の居宅サービス事業者等によるサービスを利用させることの対償として、当該居宅サービス事業者等から金品その他の財産上の利益を収受してはならない。 2) 基準第25条第2項は、居宅介護支援の公正中立性を確保するために、指定居宅介護支援事業者及びその従業者が、利用者に対して特定の居宅サービス事業者等によるサービスを利用させることの対償として、当該居宅サービス事業者等から、金品その他の財産上の利益を収受してはならないこととしたものである。
 (苦情処理)
第二十六条 指定居宅介護支援事業者は、自ら提供した指定居宅介護支援又は自らが居宅サービス計画に位置付けた指定居宅サービス等(第四項において「指定居宅介護支援等」という。)に対する利用者からの苦情に迅速かつ適切に対応しなければならない。

2 指定居宅介護支援事業者は、自ら提供した指定居宅介護支援に関し、法第二十三条の規定により市町村が行う文書その他の物件の提出若しくは提示の求め又は当該市町村の職員からの質問若しくは照会に応じ、及び利用者からの苦情に関して市町村が行う調査に協力するとともに、市町村から指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。

3 指定居宅介護支援事業者は、自らが居宅サービス計画に位置付けた法第四十一条第一項に規定する指定居宅サービスに対する苦情の国民健康保険団体連合会への申立てに関して、利用者に対し必要な援助を行わなければならない。

4 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援等に対する利用者からの苦情に関して国民健康保険団体連合会が行う法第百七十六条第一項第二号の調査に協力するとともに、自ら提供した指定居宅介護支援に関して国民健康保険団体連合会から同号の指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
(17)苦情処理
1) 基準第26条第1項は、利用者の保護及び適切かつ円滑な指定居宅介護支援、指定居宅サービス等の利用に資するため、自ら提供した指定居宅介 護支援又は自らが居宅サービス計画に位置付けた指定居宅サービス等に対 する利用者からの苦情に迅速かつ適切に対応しなければならないこととし たものである。具体的には、指定居宅介護支援等についての苦情の場合に は、当該事業者は、利用者や指定居宅サービス事業者等から事情を聞き、 苦情に係る問題点を把握の上、対応策を検討し必要に応じて利用者に説明 しなければならないものである。
 なお、介護保険法第23条の規定に基づき、市町村から居宅サービス計画の提出を求められた場合には、基準第26条第2項の規定に基づいて、その求めに応じなければならないものである。

2) 基準第2項は、介護保険法上、苦情処理に関する業務を行うことが位置付けられている国民健康保険団体連合会のみならず、住民に最も身近な行政庁である市町村が、一次的には居宅サービス等に関する苦情に対応することが多くなることと考えられることから、市町村についても国民健康保険団体連合会と同様に、指定居宅介護支援事業者に対する苦情に関する調査や指導、助言を行えることを運営基準上、明確にしたものである。

3) なお、指定居宅介護支援事業者は、当該事業所における苦情を処理するために講ずる措置の概要について明らかにし、相談窓口の連絡先、苦情処理の体制及び手順等を利用申込者にサービスの内容を説明する文書に記載するとともに、事業所に掲示するべきものである。
 (事故発生時の対応)
第二十七条 指定居宅介護支援事業者は、利用者に対する指定居宅介護支援の提供によ
り事故が発生した場合には速やかに市町村、利用者の家族等に連絡を行うとともに、必
要な措置を講じなければならない。

2 指定居宅介護支援事業者は、利用者に対する指定居宅介護支援の提供により賠償す
べき事故が発生した場合には、損害賠償を速やかに行わなければならない。
(18)事故発生時の対応
 基準第27条は、利用者が安心して指定居宅介護支援の提供を受けられるよう事故発生時の速やかな対応を規定したものである。指定居宅介護支援事業者は、利用者に対する指定居宅介護支援の提供により事故が発生した場合には、市町村、当該利用者の家族等に連絡し、必要な措置を講じるべきこととするとともに、利用者に対する指定居宅介護支援の提供により賠償すべき事故が発生した場合には、損害賠償を速やかに行うべきこととしたものである。

このほか、以下の点に留意されたい。
1) 指定居宅介護支援事業者は、利用者に対する指定居宅介護支援の提供により事故が発生した場合の対応方法について、あらかじめ定めておくことが望ましい。
2) 指定居宅介護支援事業者は、賠償すべき事態となった場合には、速やかに賠償しなければならない。そのため、事業者は損害賠償保険に加入しておくか若しくは賠償資力を有することが望ましい。
3) 指定居宅介護支援事業者は、事故が生じた際にはその原因を解明し、再発生を防ぐための対策を講じる。
 (会計の区分)
第二十八条 指定居宅介護支援事業者は、事業所ごとに経理を区分するとともに、指定居宅介護支援の事業の会計とその他の事業の会計とを区分しなければならない。
(19)会計の区分
 基準第28条は、指定居宅介護支援事業者に係る会計の区分について定めたものである。なお、具体的な会計処理の方法等については、別に通知するところによるものである。
 (記録の整備)
第二十九条 指定居宅介護支援事業者は、従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録を整備しておかなければならない。

2 指定居宅介護支援事業者は、居宅サービス計画、サービス担当者会議等の記録その他の指定居宅介護支援の提供に関する記録を整備しておくとともに、その完結の日から二年間保存しなければならない。
(20)記録の整備
 基準第29条第2項は、少なくとも次に掲げる記録をその完結の日から2年間備えておかなければならないこととしたものである。

1) 指定居宅サービス事業者等との連絡調整に関する記録

2) 個々の利用者ごとに次の事項を編綴した居宅介護支援台帳

イ.課題分析

ロ.居宅サービス計画

ハ.サービス担当者会議等記録

ニ.居宅サービス計画作成後の継続したサービス実施状況等の把握の
記録

3) 基準第16条に係る市町村への通知に係る記録
   第四章 基準該当居宅介護支援に関する基準
 (準用)
第三十条 第一章から第三章(第十四条及び第二十六条第四項を除く。)までの規定は、基準該当居宅介護支援の事業について準用する。この場合において、第四条第一項中「第十八条」とあるのは「第三十条第二項において準用する第十八条」と、第十条第一項中「指定居宅介護支援(法第四十六条第四項(法第五十八条第四項において準用する場合を含む。)の規定に基づき居宅介護サービス計画費(法第四十六条第二項に規定する居宅介護サービス計画費をいう。以下同じ。)又は居宅支援サービス計画費(法第五十八条第二項に規定する居宅支援サービス計画費をいう。以下同じ。)が当該指定居宅介護支援事業者に支払われる場合に係るものを除く。)」とあるのは「基準該当居宅介護支援」と、「法第四十六条第二項又は法第五十八条第二項に規定する居宅介護サービス計画費の額又は居宅支援サービス計画費の額」とあるのは「法第四十七条第二項に規定する特例居宅介護サービス計画費の額又は法第五十九条第二項に規定する特例居宅支援サービス計画費の額」と読み替えるものとする。
4 基準該当居宅介護支援に関する基準
 基準第1章から第3章(第14条及び第26条第4項を除く。)の規定は、基準該当居宅介護支援の事業について準用されるため、1から3まで(「基本方針」「人員に関する基準」及び「運営に関する基準」)を参照されたい。この場合において、準用される基準第10条第1項の規定は、基準該当居宅介護支援事業者が利用者から受領する利用料と、原則として特例居宅介護サービス計画費又は特例居宅支援サービス計画費との間に不合理な差異が生じることを禁ずることにより、基準該当居宅介護支援についても原則として利用者負担が生じないこととする趣旨であることに留意されたい。
   附 則
 この省令は、平成十二年四月一日から施行する。
 

 


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