介護保険関係者だけの短編小説
(小説じゃあないって!)

第五話  介護支援事業者の悩み
〜コンピュータと情報提供のあり方〜
その3

 きわめてリアルな会話・・・・・・・・・・介護保険ノンフィクション即席小説
 介護保険関係者だけが解る楽屋受けだらけ
 日頃のアフターファイブの出来事を小説風におもしろおかしく書き綴った介護保険関係者のためだけの物語です。
 登場する人物、団体は全て架空のものです。

 無断転載を禁止します。

 作:野本史男 
 平成11年8月14日


感想お待ちしております。
小説の題材リクエストもお待ちしております。


fumio@as.airnet.ne.jp


コンサルティング再開
なんでソフト選びが難しいの?


田中の独演会が終わると、皆深いため息をついている。

北条
「システムの導入って、けっこう大変なことだったんですね。」

小島
「秋葉原で激安パソコン買ってくる感覚とは大違いね。」

山田
「何でショップで売っているようなソフトみたいな感覚でセットアップできないのかしら?だって、パソコンにソフトをCD−ROMでセットアップしてインターネットにつなげればいいだけじゃない?」

所長
「私もシステムが入ってしまったら動けばいいじゃないかなんて言いそうだった。どこの管理者も同じことを考えてしまうのかなあ?」


ソフトウエアの選び方

山田「田中さん、でも、どうして、普通のコンピュータを買うのと違ってソフト選びが面倒なの?」

田中
「例えば、表計算ソフトと比較してみようか?」

山田「エクセルとかロータス1−2−3とか、ですよね。」

田中「そう、表計算ソフトは自分で計算式を入れてその結果をだすもの。でも、市販表計算ソフトは、一般的な計算式や関数を書き込んでおいて、ファイルを呼び出して繰り返して処理することができる。でも、処理する範囲はそんなに大きくできない。ある程度の業務範囲まできちんと処理させていくためには、計算式が複雑になったり、データベース機能が必要になったりするわけです。また、一つの処理の次に何かの処理を自動的に連携させたいといった要望が出ると、計算式と計算式の間に一定の条件や計算結果の一覧を出力させたり、プルダウンメニューから選択肢を選ばせたくなる。こうなってくると、表計算ソフトではマクロ処理というプログラムを書き込んでいかなければならない。更に他のデータベースに大量のデータを送り込んで管理したり、参照したい。といった要求が出てくると、今度はマクロではやりきれなくなって、本格的なプログラムをしたくなるんだ。」
 何れにしてもマクロとは、プログラムに他ならない。言い換えれば、マクロを書くということは、システム開発していることと同じなんだ。マクロを書いてお客様の要望に適した処理を行うソフトを作ることを早く安く請け負う業者もあるくらいだから。」

山田「因みに、そのようなマクロで作り込むのと一から開発する方法を選択する方法やヒントは?」

田中「お客様の要望する機能を満足させるためには、どちらが効率的な手法か?ということに尽きる。当然お客様の要望には、導入予定のコンピュータで処理できる能力に対して将来見込まれるデータ処理速度等のパフォーマンスの考慮なんていうのも含まれる。レスポンスの評価なんていうと、お客様が待っている時に使用するコンピュータのレスポンスなんて言うと、3秒以上かかるのは使えないなんて言われちゃうんだよ。何れにしても、どちらを使うかといった判断時には、お客様側にもある程度プログラミング知識がないと業者の言いなりになっちゃう。」

山田「つまり、一言で言えば表計算ソフトじゃあ、みんなで定型処理を行うには処理範囲が小さければまだいい。一定の処理まで行わせようとするには何れにしても要望に見合った開発手法を採るということ?」

田中「そのとおり。」

山田「ところで、ケアマネジメントの市販ソフトを選ぶためには、小説の第2回目みたいな面倒なことを検討しなければならないの?」

田中「それは、みんながみんな全く同じ事務処理体系で仕事している訳じゃあないよね。」

北条「そのとおり。経理事務だって事業者毎に異なるだろうし、様式も異なる。実施している事業だってメニューがそれぞれあるし、雇用形態だって人数だって異なっている。」

田中「だから、お仕着せのソフトが自分たちの業務にどれだけ適しているかを見極めなければ、使えるかどうか解らない。ということ。でも、市販パッケージソフトを導入する場合、様式などは思い切って自分たちの様式を変更できるならしてしまえば解決するけど、自分たちの仕事をどこまで変更できるか、一つ一つ判断していくことが必要となる。例えば、市役所に提出しなければならない様式があって、それを変更するためには市の条例まで改正しなければならないといった課題が出てしまったとします。でも、市が応じてくれない場合、市販ソフトをカスタマイズといって、ユーザーの要望で市販ソフトの一部を改修して貰わなければ導入できないことになる。」

北条「でも、そんなことをしたら、また金と時間がかかっちゃうでしょ?」

田中「そう。金と時間だけじゃなくって、介護保険制度の一部が改正され、ソフトの修正が必要となった場合、ソフト屋さんはすぐにプログラム修正や一部作り直しをしてバージョンアップと称して販売することになる。でも、そのパッケージソフトをカスタマイズして利用しているユーザーでは、そのソフト屋さんにカスタマイズ部分への影響を確認して貰って、必要であればカスタマイズ部分も改修しなければならなくなる。そのチェックや改修経費は、バージョンアップ毎に絶対に必要となってくることなんです。」

小島「なんでずれるようなソフトを開発しちゃうの?」

田中「どうしてか、というと、業者だって苦労しているんだ。簡単な例を言えば、A市でZソフトウエアメーカーに開発委託を委託したとする。委託契約には低廉な価格で受託して、完成したソフトの版権は業者として他に販売するといった手法を採るんだ。でも、そのA市が全国レベルでどの程度標準的な業務体系か?といった課題もある。だから、大きなマーケットが見込まれれば、Zソフトウエアメーカーにしてみれば、タダでもいいから早く開発させて貰ってノウハウを吸収して、パッケージソフト開発部隊へノウハウを提供する。了解が得られやすい民間のクライアントであれば、そのままパッケージソフトの開発をしちゃうんですよ。
 そういうことから、ある機関にはぴったりしたシステムだけど、他の機関にはズレが発生することになる。」

小島「じゃあ、いいソフトが出るまで待っていたらいいじゃない?」


介護保険制度システム選びの苦悩

田中「介護保険では、システムがなければ運用できないはじめての制度とも言われています。市町村では絶対にコンピュータがなければ制度が運用できない。事業所でも、みんなシステムが必要と言っている。」

北条「確かに、既にコンピュータでいろいろな事務処理を行っていると、今更手作業って訳にもいかない。だから、コンピュータを入れざるを得ない。」

田中「そういう事情はよく分かるけど、でもでも、あと半年ちょっとしかないのに、ソフトウエアメーカーが競争して開発できる様な仕様提示や環境が整っていない。事業者側の部分は8月3日に出された資料で当面は考えて行くしか方法がない。そんなわけで、みんなある程度予測しながらシステム開発している。一言で言えば半年で開発できるかと言われれば、システムの開発や準備期間なんてほとんどないのが現状なんです。」

所長「8月3日の会議資料は、10日過ぎにインターネットからようやくダウンロードできたけど、なんだか、十分な資料とは思えなかった。どうしてですかねえ。」

田中「介護保険関係者である市町村やサービス提供機関の方々は、厚生省のシステム開発室の待合室に待機している状態です。なんていうか、待合室に時折開発担当者が出てきて開発途中の資料を提供されるといったイメージですね。検討経過が解らない資料だから、待合室にいる人たちは開発室から出てくる断片的な情報しか得られない。大手のシステム開発業者は、けっこう独自ルートで詳しい情報を得て開発している様だけど、殆どの開発業者は、胸を張ってシステムを発表できるか不安を持っているでしょうね。こんな状態だから皆さんのような導入する側の立場の方々は、どうすればいいのか解らないのが現状じゃあないでしょうか?
 自治体でも大型コンピュータシステムの導入が昭和38年頃から始まっていたし、昭和60年頃からは、パーソナルコンピュータが普及し始めて、営業部門では顧客管理や経理といった分野で使われているから、けっこうソフトも充実してきている。
 それに対して、福祉分野にコンピュータシステムが使われるようになったのは、ごく最近なんです。まして、介護保険の業務自体が運用されていないもの。それどころか、運用体制が確立されたものではないので、どのような問題が潜んでいるのか見当がつかない分野なんですよ。
 例えば、ケアマネジメントの部分なんて、ユーザー側の意見を聞いてもシステム化の要望範囲に大きなムラが発生してしまう。何でもコンピュータでやらせようと言う考え方がいたりで、ソフトウエアメーカーとしても、システム化の範囲が特定しづらいのが現状なんでしょうね。」

北条「そうそう、企業でやっていた20年前のコンピュータ論争と同じことを繰り返しているようにも見える。」

田中「私は、介護支援専門員の支援ソフトは、人とコンピュータが行う部分を明確に分ける必要があると言い続けている。でも、1年以上前に介護支援専門員のソフトを推進している人から『ケアマネジメントは難しいから、コンピュータが無ければ介護保険は回っていかない。田中さんのような人ばかりじゃあないから』、なんて皮肉っぽく言われたんですよ。ばかばかしいから、返事もしなかったけど、プランを作れない人が介護支援専門員になって作り方が解らないからコンピュータにやらせようなんて考え方って、30年前に国鉄の車掌が指定券のダブり切符を持った乗客に対して、コンピュータは間違えることはない!どちらかが偽造したんだろう!?と言った話をもう一度繰り返すんですよ。」

山田「介護支援専門員がアセスメントするときにどうしてこのようなプランができたのか聞かれたら、きっとコンピュータが作りました。って答えるんでしょうね。」

小島「そうそう、介護報酬は、コンピュータに支払わなければね。」

所長「少なくとも、中身は解っていて、それを効率的に処理するためにコンピュータを使う。コンピュータに使われるようなことって、許されないことです。まさか、山田さんはそんなこと考えてないでしょうね。もし、そうなら仕事を替わって貰いますからね。」

山田「大丈夫大丈夫。」

田中「それが解れば、安心して話を次に進められます。」

北条「ぼちぼち、結論が出そうですね」

田中「はじめてパソコンを購入する時に一緒に買うソフトを選ぶときの定石は、一番売れているソフトを買うことです。つまり、訳の分からないときは、一番売れているソフトを買えばいい。」

北条「それが答えですか?」

田中「そうなんです。と言いたいところですが、メーカーからプレゼンテーションされるソフトはまだ紙芝居状態のものが多い状態。まだベータバージョンというか、開発途中の状態と見受けられる。ましてや介護保険の実務が見切れないだけに、どれが良いとか、何が悪いとかは言えない。だから、一番売れているソフトを選ぶことすらできない。
だから・・・」

一同「だから・・・・・!?」


ソフト選定のポイント!

田中は、しばしの沈黙
一同田中の挙動を見守っている。
すると、田中は天を仰ぎながら語り始めた。
田中「やはり、ぎりぎりまで待って、買うしかない。」

一同「え〜!?たったそれだけ?」

田中「なんてね。そんなことは言えませんよね!状況に応じた対処方法を言いましょう。
 既にシステムを導入している事業者であれば、現状の業者に相談することが一番良い。何故なら、今の職場の状況がよく解っているからです。
 ただ、その業者が介護保険システムへの取り組みがどの程度か解らないから、その点をよく確認しておかなければならない。
 それと、よく話し合うことが重要。特に、どのような部分をシステム化したいのか。それが叶うシステムが販売されるのかということ。
 もし、業者が開発しましょう。なんて言っても、そのままお願いしますなんて言わずに、他の機関への販売状況などを確認して、どの程度のシェアを持つ可能性があるのかチェックしておいた方がいいです。
 なぜ確認が必要かというと、先ほど言いましたように、制度が一部変更されただけでシステム改修が必要となります。その時にどれだけ迅速にしかも安くバージョンアップして貰えるかが解るからです。」

 もし、業者が入っていない、又は業者が入っていても比較検討したいのであれば、やはり、リサーチが大切。
 業者が来所してくれるなら、自分たちがどんなシステムを期待しているのか、現状の業務体系と介護保険制度でシステム化したい部分を全部伝えましょう。そして業者からシステム化できる範囲を聞くようにしてください。万一もし、全部やります。と言ったら逆に気をつけた方がいい。パッケージに標準装備されているのか、カスタマイズするつもりで言っているのかが確認のポイントです。

 どちらにしても、経費と納品時期を確認して見積を出して貰いますが、忘れちゃあいけないのが、事前入力等といったものがどの程度あるのか?もし台帳のようなものを事前入力しておかなければならないのであれば、システム納品前にできるか?パンチ入力を委託するようなフォーマットを貰えるのか?そのようなことまで気をつけて下さいね。

 業者に来ていただくときに言うことは、介護支援事業者で行う業務の全般からみたシステム化の範囲を知りたい。と言って下さい。
 それでも、簡単なパンフレットのようなものだけしかなければ、特に開発スケジュールを詳細に説明して貰って下さい。
 開発スケジュールに無理があるような業者は一番下のランクにしても良い。ただし、システムテストの期間が短くても、人員体制というか、テスト要員がどの程度の規模で行うのかによっても異なってきますから、簡単に決めつけないようにして下さいね。
 スケジュールを教えて貰うときに、厚生省から出される情報が遅いと開発が間に合わなくなるといったような言い方をするかも知れません。これもランクを下げる要素。
 しっかりした業者なら、開発体制を強化して対応するとか、開発規模を最低限度にするとか、暫定システムで対応して後から正規版を無料でセットアップするとか、いろいろな対応方法の説明が聞ければランクアップです。

 まあ、大手ならそんなことを言わずとも信用問題としてやってくれるでしょうけど・・・。大手は、安心できるけど、販売本数が多いからサポートがどこまでしてくれるのか、簡単に言えばサポートセンターへの電話照会しか受けないという場合もある。
 だから、どのような業者でも統一的に確認しなければならないのは、研修会はやってくれるのか?インストラクターは来てくれるのか?といったことも要チェック。

 あとは、第2部で話したことですけど、セキュリティーやバックアップ運用方法、システムダウン時の障害対応などもポイントとして確認して下さい。
 このようなことを複数の業者に確認して、目的のシステムを提供してくれるメーカーのソフトを絞り込んで下さい。

 今思い当たるのは、この程度かな?あとは、皆さんが必要としているソフトの最低要件を見極めてみましょう。」


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