介護保険関係者だけの短編小説(小説じゃあないって!)

第九話  「Care-manager?それとも Care-money-ger?」
〜介護保険給付管理に思う〜

 きわめてリアルな会話・・・・・・・・・・介護保険ノンフィクション即席小説
 介護保険関係者だけが解る楽屋受けだらけ
 日頃のアフターファイブの出来事を小説風におもしろおかしく書き綴った介護保険関係者のためだけの物語です。
 登場する人物、団体は全て架空のものです。

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 作:野本史男 
 平成12年1月13日


〜序〜
 ここのところ、筆が運ばない・・・・
 その理由は大きく分けて二つであった。
 ひとつは、ホームページのサーバ容量が満杯になったこと。追加契約もできないほどのデータを抱えるようになったのである。

 年末になって、いよいよ飽和状態。あわてて条件にあったプロバイダ探しに奔走。サーバ容量無制限でリーズナブル、そして県内に本社のある事業所(これ、重要なポイント)という条件に叶うところを見つけて年末にようやく嫁入りしたのであった。
 しかし、その後がけっこう大変な作業である。

 まずは、URL変更のお知らせづくりである。メルトモにはその旨伝えればいい。でも、1日に100人近くの来訪者にブックマーク変更をお願いする訳である。これも手作りで仕上げたい。こんなの簡単に作ってしまえばいい。といわれるだろうが、こういった部分に凝りたいのが私の性格である。
 新旧URLにつながりのあるモノを作りたい。そんなことで、丸1日かけて作ったのが例のウエッブアニメである。

 そこでほっとしてはいけない。次は全てのページをチェックして新しいホームページへアップロードしなければならないのである。
 やり始めたら、サーバ内のディレクトリ構成もきれいにしたくなるし、サーバ容量のために我慢していたページも美しくしたい。メールアドレスを全部書き換えなければならない。ということで、けっこうページの変更やチェックで時間を費やしてしまったのである。

 もう一つは、自分自身今一番書きたい小説は、不服審査である。
 しかし、仕事にあまりにも直結するため、どうしても躊躇してしまう。
 なぜなら、つい職務上知り得た秘密をここで漏らしてしまうかもしれないし、フィクション化しても共通点を感じさせると言われるかもしれない。或いはフィクションを真実と誤解させてしまうかもしれない。やはり一呼吸ほしいところである。
 その一呼吸がちょうどサーバの移行ということで気を紛らわす結果になってくれた。
 勝手な言い方をすれば自分にとっては一石二鳥であったわけである。


小説の再開

山田 ハア〜ん。次回作が遅かったのはそんなわけだったの?もしかして、市町村の忙殺をよそに、温泉+スキーにでも行って勝手に羽を伸ばしているのかと思ったわ!

田中 いやいや、スキーは年末年始は避けますよ。行くなら平日だよね!それに、温泉は重要なアイテムではないんだ。だって、スキー仲間の家には温泉が引かれているのに、わざわざスキーに行ってまで温泉とは言わないだろうよ。

山田 あ〜ら、そんなことないわよ。だって、自宅の温泉じゃあ狭いじゃない。やっぱり、旅先の温泉は広い露天風呂と雪景色。これって、自宅に温泉があるか否かは関係ない話なのよ。

田中 すみません。理解不足でした。

山田 でもね、何年か前、田沢湖スキー場の奥にある温泉の露天風呂に行ったら、なんと、氷点下30度の吹雪。そこの露天風呂に入ったら、一生風呂から出られないと思っちゃった。やはり、スキーも露天風呂も、条件が整わないと快適とは言えないわねえ・・・。それに、忙しいとは言っても、徹夜してでも仕事を片づけて暇を作らなければ・・・・・といっても無理だろうなあ〜・・・・。

田中 今年ばかりはねえ。だから、ぼくも去年は行けるだけ行ったよ。でも、絶好調の頃と比較すれば1/3程度だしね。

山田 いったいどういう生活していたの?

田中 スキーは11月から5月の連休まで行っていたけどねえ・・・・。今じゃあ体力も持たなくなって、板だって今じゃあカービングかショートスキーだよ。

山田 昔が懐かしいでしょ?

田中 いやいや、年を取ればそれなりの遊び方があるから・・・

山田 そうよねえ、雪景色+温泉・・・・そうそう、介護保険制度なら、雪景色のきれいな老人ホームでショートステイ利用できるかしら??

田中 う〜ん。全国共通で利用できる制度だから・・・・でもイレギュラーなサービス利用になるからプランに乗らないだろうし・・・・償還払いならできるのかな・・・???

山田 半分冗談よ。そんなに真剣にならなくても・・・・。でも、半分は真面目。なぜって、介護保険には社会的理由も私的理由もないわけでしょ?
    それなら、たとえば、冠婚葬祭で東京から山形の実家に帰っている間のサービスはそちらで利用できるんじゃないの?この間は権利喪失なの?
    それができるのなら、リゾート地のデイサービスセンターで、ねたきり老人パック旅行なんて、旅行会社とタイアップして企画してもダメなんてことないんじゃないかしら?これ、素朴な発想なんだけどなあ。

田中 いいねえ。これこそ介護サービスを利用するために高齢者や家族を自宅に縛り続けていた措置制度からの脱却だよね。こういう発想があって、初めて介護保険制度が生きてくるんだよ。でも、なんでそんなすばらしい発想が生まれてくるの?

山田 だって、以前田中さんがぼやいていたじゃない。身体障害者福祉司の頃、人工透析患者が旅行先で透析を受けるのが大変だったって!それを置き換えただけ。自分で言っていたことを自由な発想に結びつけなければおしまいだよ。なんてことも言っていたわよね。

田中 はいはい。私もひとつ年を取りました。「門松や冥土の旅への一里塚」なんてね。


ケアマネの給付管理って?

山田 ねえ、今、田中さんが言っていた、イレキュラーサービスの場合、ケアプランに乗らない・・・・って言ったわよねえ。
    その部分って、ちょっと気になるんだけど・・・・・
    たしか、以前「はめての介護保険」という劇の中に出てきたケアマネジャーは、ケアプランとサービスの予約とは別と言っていたわよねえ。

田中 うん。たしかにそう言っていたね。ケアプランは介護支援事業者に依頼するわけだし、サービス予約は受給者が選択して契約するから、そうしてあったんだよ。

山田 でも・・・・最近、そういった整理がではなくなったみたい。たしか、給付管理票というのが必要になるんですよねえ。

田中 そう。昔の資料では、その部分は曖昧だったから、国保連にケアプランの写しを送ればいいような考え方だったよね。でも、そうは言っても上限管理をするんだから、そんな簡単な整理で良いのか心配していたんだ。
    たしか、2年前のことだけど、予約をキャンセルしたらどうなるの?予約日の変更したらどうなるの?それを調整する際に施設を変更したらどうなるの?・・・・。もしかしたら、そういう場合、全て償還払いになるんじゃあないの!?って考え始めたら、高齢者は蓄えがなければどんどんサービスを利用できなくなっちゃうなんて・・・・真剣に悩んじゃって・・・・。

山田 確かにそうよねえ。状態が悪くなればなるほど、今日は微熱があるから入浴サービスを中止します。とか、今日は不安定だから痴呆のデイサービスを中止しますとか。けっこうそんな話多いわよね。
    ヘルパーだって、中止があるし、給食サービスだって、おなか壊しているから・・・・なんて・・・アッ、給食サービスは介護保険にはなかった!
    でも、デイサービスの日程を変更しようとしたら、全部都合が悪くて、結局特別養護老人ホームのデイサービスを老人保健施設のデイサービスに変更しようとしたら・・・・これって、簡単にはできない仕組みになるみたいよねえ?

田中 そうそう。そうなんだよ。これまで言っていた給付管理という部分は、けっこうボリュームが大きくなってきた。
    まず、種類支給限度、区分支給限度、というのがあるね。そして、介護報酬に級地ができた。更に特別加算もできた。それで更に更に割り引き事業所もできた。これらをぜ〜んぶひっくるめて、上限管理に影響することになるんだ。

山田 更に・・・・低所得者の場合は、3%の自己負担額になる訳でしょ?ねえ、この全ての要素を一体誰がどうやって管理するのよ!?

田中 う〜ん。高齢者じゃあ絶対無理だよねえ。じゃあ、市町村保険者?それとも国保連?

山田 ・・・・ま、、、まさか介護支援専門員!?

田中 タイミングを考えてごらん?いつこの部分の調整を行わなければならないかを・・・・・

山田 え〜と・・・ @ 市役所から受給者の上限が決定されてくるわよねえ。
    そして・・・ A 種類・区分の支給限度額も示される。更にサービスが限定される場合もある。
    で・・・・・・ B 利用者のニーズを把握して・・・・
           C 斯くあるべきサービスのプランを組み立てていく・・・・
           D そして受給者の希望に沿ったサービス提供機関を選定して・・・・・
           E 実際に自己負担が可能かも含めて確認・調整して・・・・
           F 受給者がOKなら、正式予約。
           G 市役所の承認・・・・・・
    最後に   H 国保連に結果を送ればおしまい。

    でもさあ、上限管理に提供機関の適用級地と特別加算・・・・割引が上限管理に影響しなければプラン作成が楽になるし、サービス利用中に予約変更によって別の事業所や類似サービスに変更された場合でも償還払いにならずにすむかもしれない。

田中 確かにそうだけど、でもいろいろな情報を聞いていると、級地の差額は自己負担にも影響する。そうであれば、1ヶ月の自己負担だって、差額は馬鹿にならない。利用者がとても自己負担額を払えないというなら、プラン自体が使えない訳だから。その枠の中で考えなければならなくなる。

山田 そんなこと言ったら、全部ケアマネのところで調整しなければならなくなっちゃうじゃないの!


ケアマネは何をマネジメントするの?

田中 そうは言っても・・・たしか、割引は認めるけど、届け出て承認を得なければならない。ということだったよね。

山田 そのように報道されてたわね。それって、届ければよくて、クレームがなければどんどんコストを下げればいいということ?
    医療費は絶対に値引きができないけど、介護保険は良いなんて、どうしてなの?
    質を下げずに値引きするってことは、薄利多売と言うことよねえ。つまり、大規模店舗は値引きできるけど、パパママ産業というか、小さな商店は太刀打できなくなっちゃうってことだから、とどのつまり、商店街がスーパーの進出でつぶれちゃうということと同じじゃないの。
    結局、小売店は我が子をボランティアに使って配達させたりして凌いできたことと同じ。ボランティアだってノルマを課せられちゃう。ボランティアという名ばかりの勤労奉仕なんて、福祉の後退じゃないの!?

田中 まあまあ。それはそれで別の機会に話そうよ。今はケアマネの業務を話しているんだから、ちょっと話を戻すね。
    減額については、「届け出れば良い」という整理から類推すると、減額された状態で上限管理することになる。
    なぜなら、減額分を他の支給限度額まで引き上げられることになるということで、減額が利用者のメリットになる。そうしないと、減額が利用者側へ還元できないと言うことになるわけだよねえ。

山田 そうか!そういうことだったのか!って・・・ことは・・・・賢いサービス利用は、ケアマネのサービス提供機関の調整次第。ということになるの?
    でもね。でもね。それをやり始めたら、単純な表計算ソフトでも管理は大変になるんじゃない?

田中 そうだよねえ。ケアマネソフトは対応できるんだろうか?

山田 正確な情報がなければ手を付けられないでしょうから、ケアマネソフトを開発しているところは、戦々恐々としているんじゃないの?

田中 うん。仕様変更がここに来て頻繁に行われると言うことは、開発経費は急激にふくれあがるよ。そして人海戦術も限界に達して、とうとうシステム開発マネジメントができなくなって、最悪、撤退なんてところも出ちゃう。

田中 仮にケアマネソフトで対応できるようになったとしても、最適解を選択するソフトはできないと思うんだ。だって、様々な要素を持つ施設を選択して、支払可能額の範囲で調整するなんてこと。全ての組み合わせを検証する処理システムなんて、短期間に精度の高いシステムを作れるのだろうか?

山田 そうよねえ・・・・。でもそれができないと、ケアマネは一体何に力を入れて仕事すればいいの?ケアマネの顧客満足度を高めるのは、介護ニーズにあった施設を探すこと?自己負担を徹底的に下げることを考えることなの?

田中 それはねえ。利用者の費用負担と効果、つまり、コストパフォーマンスを高めることだから、結局のところ両方期待されちゃうんじゃないの?

山田 でも、50人の受給者を抱えて、介護保険制度スタートに両方を考慮しながら給付管理するなんてこと、一体できるのでしょうかねえ?

田中 とにかく、上限情報が無ければケアプランが作れない。ということは、介護報酬が1月下旬に出るとして・・・・市町村が支給限度額を定めて、保険証が出て、それから作り始めると言えば1ヶ月あるか無いか・・・ということだよねえ。

山田 とにかく、簡単に給付管理表ができるスーパーパソコンソフトができることを祈ってるわ。それがなければ、ケアマネはマネーをケアするマネジメントってことになっちゃう!?

田中 祈りは神に通ずるか????
    はたまた、予算が無くてソフトが買えないなんてね!

山田 お願い、もうやめて!


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