介護保険関係者だけの短編小説(小説じゃあないって!)
第九話の続き 「ケアプランと給付管理手作業ですか!?」
〜間に合うか!ケアプランソフト〜
きわめてリアルな会話・・・・・・・・・・介護保険ノンフィクション即席小説
介護保険関係者だけが解る楽屋受けだらけ
日頃のアフターファイブの出来事を小説風におもしろおかしく書き綴った介護保険関係者のためだけの物語です。
登場する人物、団体は全て架空のものです。
無断転載を禁止します。
誤解を招かぬよう、フォローを入れるか、全文を転載することを条件に、事前承諾をいただければ転載可能です。
作:野本史男
平成12年1月16日
〜序〜
センター試験問題が新聞に出ていたけど、とても私には解けません。
ところで、数Uって私が学生の頃やっていた数Ubとか、数Vとは違うんですか?すごく難しく感じるの・・・・
それって、私バカになっちゃったのかなあ?
そうそう、最近の子供達の学び方聞いて驚いちゃった。
円周率はもう3.14の時代じゃあないんですって?
今の子供達は円周率を3で求めるんだって!知らなかった!!
じゃあ、円周率はπと言わなくなっちゃうのだろうか?それともπの定義を変えるのだろうか?
「時代は変わる」もんだ。
そうだよね。今じゃあ電卓だって100円ショップで売っているくらいなんだから。
シャープの電卓が出た頃なんて、とてもこんな値段で売られるなんて思わなかった。
職場にそろばんの音が響いていた頃って、そんなに昔だったかなあ?
私が就職した頃は、さすがタイガー計算機の音は響いていなかったけど、計算機は備品として捨てられずにおいてあったっけ。
時代は変わる・・・ボブディランの歌とすぐに分かる人はおじいさんだって。
ところで、今の介護保険の情報の成熟ぶりを見ていると、3月までほとんど成熟せずにいて、4月1日にドラスティックに熟すのだろうか?と言いたくなってしまうほどなんですけど・・・。
電話が鳴った
山田 ねえ、田中さんの書いた第九話、そのものですね。
田中 え?どうしたの?
山田 あのねえ、この間業者の方が来られて、ケアプランソフトの話を聞いたんですけど、間に合わない様な言い方していたわ。
田中 それは困りましたねえ。
山田 そんな他人事の様な言い方して!
田中 ぼくもそう思うんですよ。あと3ヶ月だっていうのに、分からないところが多すぎる。これじゃあ、間に合わないよねえ。
ところで、私の情報が少ないんだろうか?業者の人たちはどのように言っていた?
山田 情報収集に躍起になっているけど、きっと田中さんの知っている情報と大差ないと思うわ。
田中 それじゃあ、無理だよ。
山田 どうして?
システム開発が遅れる理由
田中 去年の9月17日に暫定の給付管理に関する資料が出されたけど、12月に厚生省から出された「給付管理業務について」という資料では、介護報酬の割引についても計算式に含まれるようになったことは知っているよねえ。
山田 そうね。
田中 更に、この資料では、支給限度を超えた場合、全額自己負担額の部分の割り振りを地域特別加算にすると、自己負担額が変化するといった例示もある。
こういった部分は、ソフトウエア開発業者は既に知っていたのだろうかと思うんだ。
業者には十分な情報が別途渡されている。っていうなら別だけど、同じタイミングで知るのならシステム開発業者はバクチを打って開発しなければ間に合わないんじゃないかなあ。
山田 でも、一緒なら、まだ2ヶ月半あるから間に合うんじゃないの?
田中 ところがどっこい、そんな生やさしい話じゃない。
システム開発っていうのは、完成間近で仕様の変更が一部あると、完成させてから改修するか、開発途中の部分を止めて詳細設計の部分のあたりまで手戻りして開発し直すかのどちらかしかできないんだ。電車で言えば、次の駅で待つか、バックして乗せるか・・・っていうところ。
山田 ふう〜ん。けっこうめんどうなんだあ〜。走っている電車に飛び乗るように、追加部分を付け足せばいいっていうことは、ことはできないんだあ〜。
田中 飛び乗るなんて、電車に飛び込んで自殺するようなモノ。そうすれば、電車も止まるし、飛び込んだ方も死んじゃうし、電車の点検修理代やら乗っている人の代替輸送経費と運転士とかの経費で損害賠償金は孫子の代までかかる。
山田 なんとなく分かるわ。けっこう大変だってこと。
田中 さらにね、サービス計画作成時に一旦給付管理上で利用者負担額をチェック(シミュレーション)しなければならないわけだ。
山田 そうそう、9月の資料にも書いてあった。
田中 システム上完全に画面から機能やデータベースまで分けられるなら、オプションとして別のシステムにできるので、さほど問題がない。けど、この機能って、システムの前後の部分に影響するわけだよねえ。それに、一体的なデータ管理が必要になるんだよねえ。それって、システム全体を見直さなければならない。インターフェース上にも影響するし、データベースやらテーブルにも影響するわけだ。
山田 テーブル・・・って?
田中 まあいいや、難しい話だから。つまり、概要設計まで手戻りする可能性もあるってこと。
都合良くモジュールがそのまま使えるかもしれないけど、検証する時間もないから、場合によっては、運用開始以後に大きなバグが発生するかもしれない。
山田 じゃあ、使うのも危ないってこと?
田中 そんな危ないのを売ることはないだろうから、心配することはないと思うよ。それより、数ヶ月発売が遅れて、それまでの間手作業っていう方が心配。
山田 それじゃあ困っちゃう。
田中 だから、システム開発業者の方々は寝食をを削って頑張っているんだよ。
まだ見えない仕様
山田 ねえ、これ以外にもまだ追加仕様って出されるのかしら?
田中 まだあると思うよ。もしかしたら仕様も追加や変化することがあるかもしれない。
簡単な例で言えば、予定と実績の帳票。これって、加算部分の記述や時間単位で異なる業務は、どうなるんだろう?たまたま食事や送迎を利用しなかった場合は?
このほか、2人で訪問介護に行った場合、よく指導者の1級ヘルパーと3級ヘルパーがコンビを組む例が多いよねえ。どう実績登録するんだろうか?
こんなのを1行ずつ別記載するなら、1枚じゃあとても足らなくなる。追加帳票の仕様は出ていないよねえ。
山田 うんうん。このほかには?
田中 このほかにはね、予定と実績が早朝夜間と深夜帯を跨ったりずれたりした場合、どう請求するの?
訪問に入った時間?割合?明確な基準は?予定通りにしなければならないの?もし、予定通りにしか請求できないなら、深夜帯にしておいて早朝夜間帯に訪問しても多く報酬がでるんだよねえ。
あとねえ、基準該当の部分はどうなるのだろうか?
山田 けっこう確認事項があるのねえ。このほかには何かあるの?
田中 まあ、言い出したらきりがないよ。
ただ、例外処理って、何パーセント発生するならシステム化するといった基準を設けていく。ただ、仕様を作る人と開発業者共に例外が発見できなかったり、予測を誤ると、使えない。機能しない。っていうことになる。
山田 たぶん現場に強い人が入っているんでしょうねえ。
田中 たぶんね。入っていなければ、システム化はできないよ。
山田 このほか、気になることあるの?
田中 まだあるよ。たくさんある。でも、夜が明けちゃうからおしまい。
手作業でできます?
山田 ねえ、もし、システムの導入間に合わなかったらどうなるの?
田中 手作業ってことでしょうかねえ。
山田 手作業でできます?
田中 無理だよ。けっこう大変な作業だね。
山田 それじゃあ、どうすればいいのよ。
田中 だって、ケアプラン作成が集中する一番忙しい時期にシステムに慣れて運用できないんじゃあ、パニックだよ。
山田 そうよねえ。
田中 あのシミュレーション作業、簡単にはできないと思うよ。
山田 それが一番心配。
田中 自分でも今エクセルで手作業で行う場合の支援用に作ってみているけど、けっこう大変な作業だね。
山田 あっ、それ欲しい。
田中 自分の理解を深めるために作っているだけ。人様にご提供するなんて、滅相もない。
山田 私も知りたいから・・・・、責任取れなんて言わないから!
田中 じゃあ、できたらね。
山田 期待していますよ。
最後に、一番心配していることって何?
田中 システムを導入しようとしている所属はいいけど、システム導入やら、この業務のこと自体、あまり気にしていない組織って無い?
たとえば、市町村、生活保護担当者・・・・自分たちが作らなくても良いのかもしれないけど、問い合わせや自分たちの業務上検証することは無いのかなあ。
山田 あ、余計なこと聞いちゃった!いいです。眠れなくなるから・・・・。
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