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ライス大盛

私は日本人として当然のごとくごはんが大好きだ。というかそういう事にしておきたい、たとえ毎朝パンを食べていたとしても。今回はそんな私の社員食堂における食生活についての話である。

その日、私は寝不足でちょっとボーッとしていた。私が社員食堂の罠にひっかかるのは決まってこんな日である。

昼食の時間になり、部署の人たちと社員食堂に向かった私はいつもあまり代わり映えのしないメニューを眺めた。オムライスがあった。

「ガキじゃあるめーし、社食にオムライスかよ。」

心の中で毒づきながらもごはん好きの私はオムライスに心を決め、Bレーンに並ぶ。そして部署の先輩に

「社食のオムライスにケチャップで"LOVE"とか書いてあったら嫌ですね。」

とか軽口をたたきながらオムライスの皿を取った。それは卵とケチャップ、そして付け合わせのレタスの色も鮮やかな一皿だった。

しかしその一皿だけではとても私の胃袋を満たすには程遠い。そう思った私はまずスープを取り、次にライスのコーナーに行くといつも黙々と平皿にライスを盛り続けている社食のおばちゃんに言った。

「ライス大きい方お願いします。」

おかず、ごはん、スープ、盆の上に完成した完ぺきなそのランチに私はすっかり満足し、意気揚々とレジに向かうと会計をすませて席に向かった。

すでに部署の人たちが席を確保していた場所に向かった私は着席して再び盆の上のランチを見た瞬間に気付いた。

「あ、オムライスライスだ」

思わす口をついて出てしまったその言葉に部署の人たちが反応する。どっと笑いが起こる。「全部食えよ」とか「日本人の鏡だ」とか野次が飛ぶ。かわいそうに思ったのか先輩の1人が「おかずに」と肉団子をくれた、ありがたかった。

実は私がこの手の罠にかかるのはこれが初めてというわけではなかった。今までにも以下のような戦歴がある。

いや、いいわけはするまい。何も考えてなかった私が悪いのだ。しかし、私はあえて一言だけ言いたい。「どうして誰も注意してくれなかったのか」と。社食のおばちゃんもレジのおばちゃんも何で一言、「どっちもごはんですよ」と言ってくれなかったのだろうか。

私は暫くの間、目の前のオムライス&大盛りライスを呆然と眺めていたが、なんとか我にかえるとオムライスにとりかかり始めた。黄色い薄焼き卵を割ると中からケチャップライスが出てくる、それは紛れもなくオムライスだった。実はオムレツかも知れないという最後の淡い期待はあっけなく裏切られた。

オムライスをちょっと食べて、ライスを食べる、スープを飲んでまたオムライスに戻る、色々工夫をしながら私はなんとかそのランチをたいらげた。腹いっぱいだった。

そしてその日、私は夜遅くなるまでお腹が空かなかった。


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