「おーい!一回戦の対戦相手が決まったぞ!」      ルーファスが部室に駆け込んできた。     「どこなんや、ルーファス?」     「『お料理アカデミー』だ!」

「第二話 セシル、頑張る!」

      「なにぃ!?」(車○風)      部にいた者は皆一斉に叫んだ。      理由は2つある。まず『お料理アカデミー』というもろに文化系のクラブが参戦      していること(ウイザーズアカデミーも文化系なんだけど(^^;;;;))、      そしてもう一つは、         「え?おりょうりのあかでみーなの?」      シンシアがこのアカデミーに入ろうとしていたいきさつがあるからである。      「驚いてみたけれど、別に大した相手じゃなねえと思うけど?」      「いや、そうでもないらしいぞ・・・」      ジャネットの言葉に、デイルが答える。      「ど、どういうことなんでしょうか・・・?」      ミュリエルが恐る恐るデイルに問いかける。      「なんでもお料理アカデミーには武術学科の連中が結構ごろごろしているそうだ。     それも成績が優秀な奴ばかりという話だ・・・。」      「わくわくするなぁ・・・。ボク、楽しみだよ・・・」      「要するにそういう強い奴と戦うわけか・・・。     ようし!腕がなるぜ・・・」      「あほか、マックス。別にそいつらと殴り合いをするのとちゃうんやで・・・」      「喧嘩はいけません!神は争いというものを好みません・・・。」      (収拾がつかなくなってきたな・・・。いつものことだけど。とほほ・・・)      そうルーファスがため息をつき始めた時だった。      「あのぉ・・・。センパイ・・・」      「なんだい、セシル?」      「ちょっとピッチング練習に付き合ってほしいのですけど・・・。     ダメですか?」      「ん?まあ、いいけど・・・」      (このままこいつらを静かにしようとしても無駄だしな・・・)      ルーファスがそうっとセシルとともに部室を出ようとしたときだった。      「る・う・ふ・ぁ・す・?」       「で、デイル先輩?」      「君たち、そういう仲だったのかな?」      「せ、センパイ!」      「いや、練習そろそろとりかからないといけないかなぁって、ね?」      「ん、それもそうだな・・・。ようし!みんな道具を持ってグラウンド      にGOだ!」      ルーファスの言葉には耳をなかなか貸さない部員達だが、     何故かデイルの言葉には従う。      ルーファスは今更ながら己のカリスマ性のなさにがっくりと肩を落とした。           いよいよ大会当日。W・アカデミーの部員達は開会式に臨んだ後、     試合に備えてグラウンドの隅で軽い練習を行うことにした。      「Bグラウンドの第3試合だよな、ルーファス」      「ええ。そうですよ」      先発のセシルとキャッチボールをしながらルーファスは答える。      「まあ、あれほどの練習をやったんだ。負ければどうなるかわかっているよな、      ルーファス・・・」       「・・・・」      「でたな、諸悪の根元!」      沈黙したルーファスに代わって大きく声を張り上げた者がいた。      「げっ!生徒会長!」      その声の主は生徒会長・エリザ・マーガレットであった。      「それにしてもこんなところまで邪魔しに来るとはな・・・      貴様達は我らをそっとできないのか?」      「別に邪魔しに来たわけではないぞ。それに参加を許可したのはお前達     生徒会じゃないのか?」      デイルが生徒会長に反論する。      「アカデミーそのものではない。デイル・マース!卒業したはずのお前が     ここにいることについて言っているのだ!」      「いいじゃないか。別にかわいい後輩の応援に来ているのがどこが     悪いというのだ?」      「ともかくだな・・・」      「あのぉ・・・」      「何だ!」      デイルと生徒会長が同時に問いかけてきたルーファスを睨み付けた。      その瞬間、      ゴン!           上空からのボールが生徒会長の後頭部に直撃した。      「ボールが落ちてくるから危ないって、言おうとしたのに・・・」      「お、おのれ・・・。ウイザーズアカデミー・・・」      倒れた生徒会長この後生徒会役員によって担架で運ばれたのは     言うまでもない。      「基本的には普通の野球のルールと同じ。延長も基本的には無制限だ。     魔法・マジックアイテムの類のものの使用は禁止。     もしそのような行為が確認された場合は即刻そのアカデミーは     反則負けにする。それでは・・・     プレイボール!」      セシルがロージンバックに手をやってボールを握りしめる。      しかしその汗をたっぷりかいた面持ちからは極度の緊張が見られる。      (大丈夫か、セシル?)      ミットを構えるルーファスはその様子に不安に思った。      が、その予感は不幸にも的中してしまった。      セシルの右手から放った第一球がスピードのないど真ん中のボール     だったからだ。            カーン!          相手バッターがそれを見逃すことはなかった。      打球はレフトに向けてぐんぐん伸びていく。      (まずい!)      グラウンドにいるナインも、ベンチで観戦しているデイルも皆そう思った。      が、相手バッターがあまりの絶好球にわずかに打ち損じたのか、     打球はレフトフェンスに張り付いたラシェルのグラブにすっぽりおさまった。      「アウト!」    この瞬間、W・アカデミーの面々はほっと胸をなでおろした。     たった一人を除いて・・・。     マウンドにいるセシルであった。     顔を青ざめさせ、がたがたと体を震えさせ、    誰の目から見ても明らかに動揺している。       (まずいな、このままでは・・・)    そう思ったルーファスはたまらずマウンドのセシルに駆け寄った。     「おい、セシル!」       「せ、センパイ・・・。ぼ、ボク、もう・・・」     「セシル!思いっきり深呼吸するんだ!」     「え、え?センパイ?」     セシルはとりあえずといった感じで大きく深呼吸した。     「どうだ?多少は緊張が取れただろう?」     「え?は、はい!センパイ!」     「それじゃあピッチング頼むぞ、セシル」     そう言うとルーファスはマウンドから去ってしまった。     (せ、センパイ・・・。ん?)     セシルはいつの間にか自分の体から緊張や不安といったものが    抜けているのに気づいた。     (ありがとう、センパイ・・・)     ここからのセシルのピッチングがすごかった。     2番・3番をコースいっぱいに決まる変化球で連続三振に仕留めたのであった。     「おおっ!」     スタンドから、グラウンドから歓声が揚がる。     「何はともあれ、偉いぞ、セシル!」     デイルがセシルにねぎらいの言葉をかける。     「そ、そんな・・・。全てルーファスセンパイのおかげです」     「よし、今度は攻撃だ!行け!シンシア!」     「はーい!」     1番のシンシアがバッターボックスに・・・。     「おーい!シンシア!バット忘れているぞ!」     「ごめーん!おにいちゃん」     (大丈夫かなぁ・・・)     ルーファスは一回表と同じようにまた不安になるのであった・・・。     (第二話 完) 
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