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ウィンナホルンとは何なのか。その構造の特徴をフレンチホルンと比較しながら解き明かします。
これさえ見ればあなたも立派なウィンナホルン通!('98/3/9改訂)

フレンチホルンウィンナホルン解説
全体形状
アレキサンダー アンケル 左がフレンチホルン(アレキサンダー103G)。F管とB♭管の2つの調性管が付いたいわゆるダブルホルンである。現在最も一般的に用いられているタイプの楽器と言える。
右がウィンナホルン(アンケル)。F管のみのシングルホルンである。
マウスパイプ
マウスパイプ ボーゲン ウィンナホルンのマウスパイプ(吹き込み管)はボーゲンと呼ばれる円形管で、脱着可能なものであるのに対し、フレンチホルンのマウスパイプは、ストレートで管体に固定されている。ボーゲンはナチュラルホルンの"なごり"で(ウィンナホルン自体がナチュラルホルンの"なごり"のようなものだが)、これを取り替えることで調性を変えることができる仕組みである(要するに写真のボーゲンはF管用のものということ)。
管形状
フレンチメカ ウィンナメカ 音程変化用のバルブが、回転式(ロータリーバルブ)か並行式ピストン(ウィンナバルブ)かによって、当然、音程管(?:一応そう呼ぶが)の形状は変ってしまう。キーの近くにロータリーバルブの付くフレンチホルンは、上から下に音程管が伸びるが、キーから遠い位置にバルブの付くウィンナホルンでは、音程管が下から上に伸びる感じになる。
メカニック
ロータリー クロイツ 再三書いているが、フレンチホルンの音程変化用バルブはロータリー式と呼ばれるものが一般的である(稀に1本ピストン式もある)。レバーを押すことで、ロータリーが90度(そうでない場合もあるが)回転し、吹き込まれた空気を音程管に流し込む。それに対して、ウィンナホルンは2本のピストンが平行に上下し、それによって音程管に空気を流し込む。写真は、その最先端部分で、2本の管の真中に見える十字型の部分が、レバーを押すことによって下に押し下げられ、管内の空気の流れが変化する。
ロータリーバルブの方が、バルブの開閉(?)にあたっての抵抗感は少なく、吹き手にとっては扱いやすい構造である。ウィンナバルブは、バルブの開閉による吹き込みの抵抗感がかなり違ってくるため、コントロールが非常に難しい。また、早いパッセージでの息のスムーズさや音の変化のスピードなどにも差が出る。でも、それこそがウィンナホルンなのであり、そこを乗り越えて吹くところに、ウィンナホルンを吹く楽しみがあるのでもある。
ベル
フレンチベル ウィンナベル ウィンナホルンのベルはその直径がやや小さめで、外周部分が二重になっている。この二重部分をクランツと呼び、一般的に「響き止め」とされているが、アトリエハーロー木村氏によれば、「響きは少しも止まりません」とのこと。では何のためについてるのか、ということについては明らかにされていないのだが、以前のヘグナーのインタビューによれば、あるものとないものでは音の"まとまり"が違うのだとか(ある方が"まとまる")。クランツ部分は洋白で作られのが一般的で、ハンダ付けはせず、ただ単純に端を折り返して付けるのが正解とか。
マウスピース
マウスピース アダプター 左の2本のマウスピースは、右が以前使っていたフレンチホルン用のもの(TilzのT5)、左がウィンナホルン用(Stiegler-Pizka)である。ウィンナホルン用のマウスピースの特徴は、リム(唇にあたる部分)が薄めで、カップはV字型で深め、といったところ。薄いリムによって唇のコントロールを容易にし、深いカップで息を無駄なく管内に供給するというイメージだと思う。事実、私自身、以前のマウスピースで吹いていた時よりも、ウィンナ用での方が無理なく息が入り、コントロールもとてもしやすく感じている。
なお、右の写真だが、これはマウスピースにアダプターを付けてボーゲンに差し込んでいるところである。古いタイプのボーゲンは太く作られているために、フレンチホルンに合わせて作られているマウスピースでは、場合によっては緩すぎてきちんとはまらないことがある。そこで、このようなアダプターを付けて、差込口の径を合わせているのである。
内バネと外バネ
内バネ 外バネ 最後にウィンナホルン同士での違いについて一点だけ。キーを動作させるためのスプリングなのだが、ご覧のような2タイプがある。左は、丸いドラムの中に板バネが仕込まれているタイプ(内バネ式)で、右は、一般のフレンチホルンでも使われているコイルタイプのもの(外バネ式)。一般的には外バネ式の方が動きが良いとされるが、内バネでも遜色ないと言う人もいる。メンテナンス(油を注すとか)は、圧倒的に外バネ式の方が便利。

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