鑑定物件 No.8

パイシュタイナーさんご購入ゴルフクラブのサイン入りチラシ

依頼人:北海道 高野るみさん


サイン薄くてすみません。それから、サインは逆さまに書いてありますので、悪しからず。(フォルカー)


本人評価額:50円

(相棒のルリ@フリークタウンの評価です。わたしには値段はつけられません)ちなみに原価は当然タダです。


入手のいきさつ

98年5月14日〜15日と東京でウィーン弦楽四重奏団公演があり、友人達と北海道からわざわざ聴きに行って参りました。14日の演奏会終了後に楽屋でお会いした折に連絡先をいただき、翌16日の11時に待ち合わせして、パイシュタイナーさんのショッピングにお付き合いさせていただきました。これまでも演奏会後や移動中など、日本でのパイシュタイナーさんのオフの顔は拝見していましたが、いつも時間に追われていて、昼間に自由時間をとれる機会ははじめてのこと。今回は東京に5泊されたので、連日会場をかえての演奏会とはいえ、日中は比較的余裕があったみたいです。

地下鉄を乗り換えて東銀座へ。日産のショールームに立ち寄った後は三越でフレグランスやカジュアルウェアなんぞを物色しながらゴルフ売り場へ。パイシュタイナーさんは大のゴルフ好きで、確か96年のカザルスホール公演の時もクラブを持ち歩いておりました。日本のお知り合いの方からのプレゼントだとか。わたしはもっぱら主人が「お土産に」と持たせてくれるゴルフボールで済ませていますが。フィルハーモニカーでゴルフをするのは長いことパイシュタイナーさん一人だったのですが、最近になってヴィオラのクドラックさんとトロンボーンのヨーゼルさんが仲間に加わりました。まだ3人でパーティを組んだことはないそうですが、今年の夏はザルツブルグのゴルフコース(あるんでしょうか?)に3人の姿を見ることが出来るかもしれません。(おそらく誰も気にはとめないでしょうけど)
「ゴルフ売り場なんて退屈でごめんね。ちょっとの間だからこの買い物袋を持っていてもらえる?」と、さっそくクラブを手にとって試し振り。ゴルフの話しはずいぶん聞かされていましたが、クラブを振り回す姿を見るのははじめて。でも日本人ビジネスマンにまぎれてゴルフスウィングをするパイシュタイナーさんは、どこから見てもただの「オヤジ」。その場でまったく違和感ないんだもの。フィルハーモニカーでも音楽家でもない肩書きのない普通の人。
5分、10分と過ぎてもウィーンのお父さんは熱心に物色を続けているので、わたしは他の売り場に。20分くらいして戻ってみると姿がないので、探しに行っちゃったかな〜っと思ったら、奥の方から「カコーン、カコーン」という音。試し打ちができる人工芝の上で、お父さんは上着も脱いで、汗かきながらボールの打ちっぱなしをやってるんだな。
結局1時間くらいそこで過ごして、店長ご推薦のサウンドウェッジを1本ご購入。今年1月に新発売のニューモデルに「これを持っているのはウィーンじゃ、いやオーストリアでは自分だけだよな」ってご満悦なんだけど、「でも夏までゴルフする暇なんかないんだよな。今年は夏も忙しいしな〜。やっとグリーンに出る頃には型落ちのセールス品になってるのかもな〜」とはお気の毒。とりあえずヴィオラケースに忍ばせて楽屋で注目を集めるしか。

せっかくのオフに音楽の話なんか無粋だろうから、ほとんど話題にしなかったのですが、「どこかあなたの行きたいお店があったら」と気にしてくれるので、山野楽器のクラシックCD売り場へ。パイシュタイナーさんはCDプレイヤーは持っていないので、おそらくここははじめて。
「こんなにたくさんのジャンルが一緒になってる中から、どうやって選ぶんだ?」と呆然となっているお父さんを見捨ててさっさとお目当てのCDを購入。ヴェロニカ・ハーゲンとパウル・グルダのブラームスを輸入盤で。「彼女は知ってる」とのぞき込むパイシュタイナーさんに「ほら同じCDでも輸入盤は2100円で、国内盤は3000円なのよ」と教えると「なんで?どうして?」とまたびっくり。
レジにいってる間にピアノ協奏曲のコーナーをのぞいていたので好きなピアニストを尋ねたら「とっさに思いつかないけど、、、そうだな、こないだ定期で弾いたブレンデルのベートーヴェンは良かったな。イギリス人のなんとかいう若い指揮者だったけど、、、」とのことでした。(以上が唯一の当団の演奏に関する話題でした)

その後、松坂屋のゴルフ売り場では「ご熱心でいらっしゃいますね。お連れ様は一昨日もお見えになっておりました」などと店員さんに言われてしまった。他に気晴しなんかないもんな。でも東京の銀座でこうして買い物袋をかかえて、お父さんのクラブ選びを眺めているだけの私も間抜けなミーハーだよな〜とは思ったの。いろんな反省も含めてね。今夜の演奏会をいったいどんな気持ちで聴いたらいいのか、、、って。

鑑定品は銀座三越ゴルフ用品売り場の店長さんが持たせてくれたパイシュタイナーさんご購入クラブの製品紹介のチラシ。地下鉄ホームで別れたときに「これはゴミになるから」と捨てる場所を探したので「それじゃ記念にもらっていくわ」と。半日歩いて足は疲れるし、待ちぼうけくってる間のむなしさも手伝って「いっそ、このチラシにサインをもらって、間抜けなミーハーの記念品にしよう。そうだ鑑定団にも出して、うんと情けない評価額にしちゃえ」と、よからぬ計画をめぐらせていました。本当に演奏会の直前まで、ろくでもないこと考えていたんです。

でも。こうしてフォルカーさんに、わざわざホテルでカラーコピーまで作ってお渡ししたチラシは、既に私にとってかけがえのない宝物になってます。だって舞台に上がったパイシュタイナーさんは昼間のオヤジぶりなぞ微塵にも感じさせない素敵な紳士で、その演奏は私の「最愛」を裏切らない至福の音楽だったのですから。そのあたりのことは私のHPにも詳しく述べてますので、おヒマな方はご覧ください。
「そうだね、これにサインしなくっちゃね。ゴルフショッピングに付き合った記念だからね」と、楽屋で無邪気にサインをしてくれたパイシュタイナーさんは、案外プロゴルファー気分だったかもしれません。だけど私には音楽家パイシュタイナーさんとの貴重な体験の記録です。プライヴェートでもどこか「特別」を感じさせる音楽家やソリストは確かにいます。でも神様でも聖人君子でもないごくごく普通の人が音楽で人を魅了する、その不思議と1日を過ごせたことが私の幸運です。
フォルカーさんなら、当団の魅力の一端をこのチラシからもきっと酌んでくださると信じて、ご鑑定をお願いいたします。



鑑定結果

鑑定額:500円(10倍増!)

当団ビオラ奏者のクラウス・パイシュタイナー氏と、氏の弾く楽器ビオラに限りない愛情を注ぎ続けるホームページ、サウンド・ポストを運営されている高野さんからのご投稿です。
で、この依頼品の鑑定ですが、まぁ、この「いきさつ」をお読みいただければ、私が何のかのとコメントすることはなかろうと思います。とにかく、これだけ"深く"当団メンバーと関わられている方も珍しいはず。遥々、演奏会を聴くために北海道から上京され、そして、買い物にもお付き合いする。そのバイタリティーにはただただ脱帽です。
で、早々と結論を出すわけですが、その行動力に敬意を表して、鑑定額は10倍増の500円! これでいかがでしょう。ま、額は低いですが、元々はタダのものだしってことでね。

パイシュタイナー氏にとって、高野さんは"日本の娘"なんですよ、きっと。
遠くに嫁いだ娘と久しぶりに再会した父。ところが、せっかく会えたものの、仕事が忙しくでなかなか娘と一緒にいる時間を作れない。ようやくできた休日に、さて、どうして娘と過ごそうかと思ったものの、これといった案が浮かばない。そうだ、買い物に付き合わせよう。で、その"ご褒美"という名目で、アイツにも何か買ってやるんだ。そうだ、それがいい。お父さんにとっては、これ以上ない"名案"が浮かんだわけです。で、娘に買い物に付き合ってもらい、さて、そろそろアイツの"おねだり"も聞いてやろうかな、と思った時に、ゴルフ売り場が目に入ってしまった。瞬間、お父さんは娘のことなど忘れ、本能の赴くまま、クラブの試し打ちに興じてしまったのであった...。
もちろん、私の勝手な作り話ですが、そんな感じで上の「いきさつ」を読めば、パイシュタイナー氏と高野さんの、それぞれに寄せる"愛情"がよくわかるのではないかとも思うわけで。

それにしても、当団メンバーでゴルフをやっているのが3人だけってのは、ある意味"驚き"ですよね。まぁ、世界一多忙なオケのメンバーですから、ゴルフをやってるヒマは無いのかもしれないし、元々、聖地のゴルフ事情ってのが、我が国とは比べ物にならないものなのかもしれないし(っていうか、我が国が「猫も杓子も状態」なんだろうけどね)。
今後、聖地方面でゴルフをする予定のある方(いないだろうなぁ、そんな人^^;)。ゴルフ場で、真新しいゴルフクラブを振っているパイシュタイナー氏を見かけたら、「日本で買ったそのクラブの調子はいかがですか?」と声をかけてみてください。「なんでそんなこと知ってるの?」って驚いたらシメたものってことで(^^;



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