依頼人:神奈川県 佐々木直哉さん(つまり、私、フォルカーっす ^^;)
入手のいきさつ
1990年のウィーン管楽合奏団(この時の団体名は「ウィーン木管八重奏団」)来日の折のこと。11月28日、サントリーホール小ホールで行われた演奏会は、神谷郁子のピアノリサイタルという形のものでした。トゥレチェク、シュミードル、ウェレバ、アルトマンが、神谷郁子女史とモーツァルトとベートーヴェンのピアノ五重奏曲を共演。
当日は自由席で、開演ギリギリに到着した私は、結局舞台の目の前ど真ん中という席に座ることになり、いつもとは違う"景色"の中で演奏を楽しんでいました。そして、当日最後のプログラムであったベートヴェンの演奏中に、その"事件"は起ったのでした。
いつものように、上体を大きく揺すりながらノリノリで演奏していたトゥレチェクの、パンパンに膨れたお腹の部分のシャツのボタンが弾け飛んだのです!ボタンはコロコロと舞台の床を転がって、客席寄りの端まで来て止まりました。そう、要するに私の目の前というわけです。当のトゥレチェク氏、まったくそんなことには気づかずに熱演を続けています。回りのお客さんも気づいてない様子。ひとり私だけが、弾け飛んだボタンを注目し続けたのでした。
演奏会は無事終了し、お客さんは会場から出て行きます。しかし、私の視線は、相変わらず舞台上のボタンに注がれたままです。---どうする?誰も見てないぞ。気づいてないぞ。でも、これ持ってっちゃったら、トゥレチェクが困るんじゃないか?いや、まさか替えのボタンくらいホテルにでも頼んで付けさせるだろう。---しばらくの間続く葛藤。さぁ、どうする、どうするんだ!? 次の瞬間、私の手にはボタンが握りしめられていたのでした...。これってドロボウでしょうかね?でも、もう時効ということで、許してトゥレチェク氏!
というわけで、本人評価額は、当日の演奏会のチケット代の7000円。もちろん、ボタンとしての価値はそんなにないでしょうが、トゥレチェク氏の"熱演"の産物ということで、その演奏に敬意を表してのお値段。フォルカー先生、いかがでしょうか!?
鑑定結果
いやぁ、これは実に珍しい逸品です。おっしゃる通り、ボタンとしての価値はたいした物ではないでしょう。材質はプラスチックのようですし、どこにでもあるボタンです。
しかし、入手に至った経緯が素晴らしいじゃないですか。トゥレチェクのあの太鼓腹と、そして、彼のあの"身のこなし"があってこそ弾け飛ぶに至ったもの。このボタンの存在は、まさに彼の熱演の産物。そう、そうなんです。トゥレチェクだから起ったこと。私の目には、彼の身をよじる吹き姿と、今にも弾け飛びそうなお腹のボタンが見えますよ!(←当たり前だ、ほんとに見たんだから)
サインをもらうとか、一緒に飲むとか、あわよくば吹いていた楽器を譲ってもらう(ワタシか^^;)なんてことはあっても、シャツのボタンをもらうなんてことはまずありません。そういった意味からも、他にはない、貴重な品であると言えます。ご本人評価額の7000円、十分にその価値はあるのではないでしょうか。よって、鑑定額は、ご本人評価通り7000円に決定!
なーんて、もっともらしいこと言ってるけど、自分のモノを自分で鑑定するんだから、鑑定額が違っちゃいかんよね(^^; ジャンジャン!