1998年まとめ
−CDの部−


<<言い訳>> いずれは「観た!聴いた!…」に正式に載せようと思いつつ、感想の「とりあえずバージョン」をWhat's New!?に書いていたわけですが、そのリライト作業が思うように捗りません。そこで、What's New!?に書いたものを、ほぼそのまま掲載することでお茶を濁させていただくことにした次第。よって、文脈がおかしかったりする部分もありますが、何卒ご了解のほどを。
※文末の( )内はWhat's New!?記載の日付です。原文は「駄文の墓」でご確認いただけます。

メータ/ニューイヤーコンサート1998

コマッタやっぱり厚化粧

■早くも出ましたよ、ニューイヤーコンサートのCDが(ただし輸入盤)。確か、一昨年のマゼールとの時から、この「即刻発売」が始まったはずだけど、それにしても早い。例年盤同様、パンフレット等は事前に作っておいて、CD本体だけを急ぎプレスしての発売という形式のようだけど(よって、演奏時間表記は無し)、それにしたって、この短期間に製作〜発売(さらに"輸入"だ、日本の場合は^^;)という作業を実現するってのは大変なはず。発売元のBMG社の社員は、「ったく、新年早々無茶させんじゃねーよ!」とか毒づきながら仕事してたに違いないよ、きっと(^^;
■演奏については、基本的に、テレビで見た時と同じ印象。ただ、当団諸氏の弾き姿(吹き姿)を見ながら聴くテレビと違って、CDは音だけで勝負の世界だから、テレビの時以上に"厚化粧"ぶりが気になったのも事実。特に、ワルツなんかで、フレーズの途中でテンポを揺らすってやつ。メータは、これを多発するんだけど、あまりに作為的だし、はっきり言ってちっとも「粋」ではない。ウィーンの人たちがやるウィーンの音楽って、こっちが勝手に思い描いているものよりも、ずっとサラっとしたものだと思うんだけどねぇ。「メータ君よ、先般復刻されたクリップスの演奏を聴いてみたまえよ。テンポ揺らすとか、歌い込ませるとか、そんなことなーんにもやってないのに、すごーく粋な演奏になってるよ」と、誰か言ってやって(自分で言わんかい!って?^^;)。でもあれか、メータって、学生時代は、そのクリップスやクラウスのウィンナワルツを"生"で聴いてたんだよな、きっと。なのに、なんでこうなっちゃったんだろね? そうそう、このCDは、"当然"1月1日のライブ録音ということになるわけだけど、実際には、前日のジルヴェスター、および、それ以外の演奏(リハーサル?)の録音も使っての、"つぎはぎ"であるようだ。だって、「南国のばら」の最後の部分で、ウィーン少年合唱団の子供たちが、会場内でばらの花を配った時に起こった拍手が入ってないもの。いくら技術が進んだといっても、演奏中の拍手だけを消すってことは無理でしょ?(01/15)

BMG CLASSICS(09026 63144 2)


ハンス・ガンシュ&ライプツィヒ放送吹奏楽団/トランペット・カーニバル

ニコニコギンギンにしてノリノリ

■ハンス・ガンシュ@元当団首席ラッパの"新譜"は、ライプツィヒ放送吹奏楽団(Rundfunkblasorchester Leipzig)を従えての「Trompetenkarneval」。耳馴染みの良い曲を集めた小品集だ。すべてが彼のソロではなくて、バンドだけで演奏した曲(シュトラウス物の編曲とか)も間に入る作りからして、おそらく、放送用に録音されたものをCD化したものと思われる。ジャケットには、ロータリートランペットを抱えるガンシュの写真。それを見ながら1曲目の「Capriccio brillante」に針を落とすと(死語^^;)、事前に思い描いていた"ロータリートランペットの音"から大きくかけ離れた"ギンギン&ノリノリ"(これも死語?^^;)の音が聞こえてきて、度肝を抜かれるはずだ。ビブラートこそほとんどかけていないが、ストレートかつパワフルなその音は、とてもロータリーの、しかも、ウィーンフィルのそれとは思えないもの。「あぁ、ガンシュは、もうずいぶん"遠い世界"に行っちまったんだなぁ」と、一抹の寂しさを覚えつつ、パンフレットの録音データを見て、またまたびっくり。なんと、この演奏、'89年の録音だというのだ。'89年といえば、ガンシュはバリバリの現役当団員。中堅団員として、当団の伝統を継承しつつ、新しい時代の音を作り出そうと活動していた(はずの)そんな時期に、一方で、こんな音世界を作っていたなんて...。彼は、クラシックの勉強をする前から、ジャズなんかに慣れ親しんでいたそうだから、"ノリ"自体は、きっと"地"のものなんだろうけど、それにしてもこの"音"はすごい...。今さらながらに、彼の多才ぶりに驚くばかり。うーん、やはり、こういう方向性を当時から持っていたのだったら、「当団退団→ソリストへ」という展開は必然だったのかも...。録音が良くなくて(なんとアナログ録音!)、全体的に薄っぺらい音が聞こえてくるCDだけど、ガンシュの"魅力"を知るには欠かせない1枚かも。ファンの方は必聴ね(^^;(01/30)

ATEMMUSIK(ATMU CD 97004)


ウィーン・ヴァルトホルン合奏団/ファンファーレ集 その他

ニコニココマッタウィンナホルン吹きは必聴なれど

■アマチュアウィンナホルン吹きの「総本山」、ウィーン・ヴァルトホルン合奏団(Wiener Waldhornverein)の久々の新譜(たぶん)を入手。シューベルトを中心に、ワグナーチューバも加わってのワーグナーやブルックナーの編曲物などを収めた「WWV ROMANTISCH」、王様や貴族のために書かれたファンファーレを集めた「Die Fanfaren des Makart-Festzuges」(全50曲!)、オリジナル曲を中心とした「WWV fast MODERN」の3枚がそれ(いずれもARICORDレーベル)。すべてを聴いたわけではないんだけど、中で一番"聴ける"のはファンファーレ集かな。何せ短い曲(1〜2分程度)ばかりだから、アラが目立たないので...。妙な理由を言うようだけど、アマチュア主体(ホルヴァート@当団ホルン奏者ら、一部プロ奏者も参加)のこの団体の場合、その辺が一つのポイントになる。ホルンという楽器を通しての表現力というか、音楽の質というかが、やはりイマイチ弱いのだ。だから、"ちゃんとした曲"になればなるほど、その辺の"つらさ"が見えてしまう。ファンファーレ集以外の2枚は、言ってみれば"ちゃんとした曲"ばかりだから、その辺の弱点が露呈される部分が増えてしまうわけで...。もちろん、いい響きのところや、音楽的に"聴かせる"ところもたくさん(かな?)あるんだけどもね。でもまぁ、とにかく彼らの初CDですから(レコードは数枚あった)、ウィンナホルン吹きの皆さんには"必聴"のCDではありますが(^^;(02/09)

ARICORD(CDA-19601, CDA-29408, CDA-29601)


ケンペ/小品集

ニコニコとても楽しい

■TESTAMENTレーベル(EMIの"影武者"?)から出たケンペ指揮の「Vienna Philharmonic 'On Holiday'」という復刻盤CD('62/'63年録音)。だいぶ前に入手はしていたんだが、ここにきてようやく聴くことができた。しかし、これは"良い"でっせ!シューベルトの「ロザムンデ」(序曲と間奏曲)やオッフェンバックの「天国と地獄」序曲なんか以外は、それほど知られていない小品ばかりを集めたものなんだけど、あの当時の当団の"持ち味"が十二分に発揮されているとでもいうか、とにかくいい意味で肩の力の抜けた演奏で、聴いてて実に楽しく、かつ嬉しくなる音楽だった。ケンペが当団を指揮して残した録音は、他に「ハーリ・ヤーノシュ」があるくらいなんだけど(これも名演!)、こういうのを聴いちゃうと、もっともっと録音してほしかったと思うよ、ほんと。あと、こういう「小品集」も、今の当団は録音しなくなっちゃったけど、やればやったで、きっといい演奏になると思うんだよね。どっかのレーベルで作らないですかね、「小品集」。(02/19)

TESTAMENT(SBT 1127)


新星堂 「栄光のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団U」シリーズ

ニコニコ古き佳き当団の調べ

■「栄光のウィーンフィル」シリーズ。さっそく購入してきましたよ、わざわざ横浜まで行って。近くにも新星堂はあるんだけど、横浜にあるクラシック専門店舗の方が在庫が確実だろうと思ったんでね。ステレオ盤を中心に10枚を購入。さっそく、サージェントとのロッシーニ序曲集ってのから聴いてみたけど、いやぁ、これは"笑える"演奏だ。特に最初の「セビリアの理髪師」。今時の指揮者は絶対に使わない(?)、大編成の編曲版でやってるせいもあるんだろうけど、なんとも大時代的。かなり速いテンポでやってるにもかかわらず、軽妙というには程遠い演奏で、途中のロッシーニクレッシェンドなんて、なんか重戦車が高速で近づいてくるが如き。昔の当団の「クサーい」雰囲気も濃厚で、ほんと、あの時代('60年録音)にしか成立しなかった演奏でしょう、これは。というわけで、このシリーズ、一応「限定盤」ですから、ご興味ある方は、お早めに確保されますよう(新星堂の回し者?)。(03/23)

■新星堂の「栄光のウィーンフィル」シリーズ。ぼちぼちと聴き進めていているのだが、ケンペとの一連の演奏が実に素晴らしい。一部は、以前出た同シリーズや、先般書いたテスタメントレーベルのCDにも入っていた曲なのだが、今回初めてCD化された演奏を含めて、ほんと、どれもいい演奏だ。実に自然な、そして朴訥とした音楽の「味」。これがたまらなくいい。前に、ケンペとの録音はほんの数曲だけって書いたんだけど、結構いろいろ録音していたみたいで、その辺も改めて勉強になったし。でも、これだけ「名演」揃いだと、もっともっといろんな曲を録音してほしかったって思うよ、ほんとに。(03/27)

■「栄光のウィーンフィル」シリーズのケンペ盤。先般「どれも良い」と書いたけど、昨日になって聴いた「シュトラウス一家モノ」は、ちといただけなかった。いや、演奏自体は悪くないですよ。相変わらず朴訥とした音楽で、オケもいい音でそれに応えてるしね。でも、あれは"ウィーンの"シュトラウスではない。あまりに無骨すぎる、いや、作為的すぎるという方が適切かな。ワルツにしてもポルカにしても、本来は踊りの音楽だから、あんまりいろいろ「策」をめぐらさないのが"正解"だと思うのね。が、ケンペは、あくまでも「楽曲」として捉えたかったみたい。だから、曲の中で、いろんなことを仕掛けている。でも、それがどうにも「粋」じゃないんだな。オケが当団だから、まだ"それらしさ"は残ったと思うんだけど、あれ、ドイツのオケとかでやったら、なんとも「ダサい」(死語!?)シュトラウス物になっちまったんじゃないかなぁ。ま、人には向き不向きがあるということですかね。でも、別CDに入っている、スッペの「ウィーンの朝・昼・晩」やニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」なんかは、すごーくいい演奏なんだけどねぇ。(03/30)

新星堂&東芝EMI(SGR-8229, SGR-8230, SGR-8231, SGR-8232, SGR-8233, SGR-8234, SGR-8235, SGR-8237, SGR-8242, SGR-8245)


ラトル/マーラー 交響曲第9番

コマッタ今ならもっとできるはず

■静岡出張初日の一昨日。夕方、中心街にある取引先を訪ね、挨拶を済ませて外に出る。と、すぐ近くにCD屋を発見。「もしかしたら、ラトル&当団のマラ9が既に並んでるかも」と思って立ち寄ってみると、案の定置いてある。「この後、夜遅くまで仕事だから、ここで買っておくしかない」と、CDを手に取り、レジに並んでいると、"トントン"と肩を叩かれた。誰だろうと振り返ると、なんと重鎮F氏。で、開口一番、「何もここまで来てCDを買ってることないでしょうに!」。でも、仕方ないじゃないですか、「買わねばならぬ」ものなんだからさ...。そういうF氏も、予約しておいた同じCDを引き取りに来たっていうんだから、これは"おあいこ"でしょう。なんでも、勤め先が目と鼻の先だから、しょっちゅう立ち寄ってる店なんだって。しかし、そういう店に引き寄せられた私も私だけど、そこにF氏が姿を現したってのもすごいよね。これぞまさしく、「類は友を呼ぶ」ってやつ?
■で、そのマラ9なんだけど、さっそくホテルで聴きましたよ、スコア見ながらCDウォークマンで(スコアまで持参してる!?)。ただ、その感想を述べるのは、もう少し後にしたいと思う。なぜかというと、CDウォークマンで聴いた時と、今し方、自宅のCDプレイヤーで聴いた時とで、演奏の印象が結構違っているから。正直言うと、ホテルで聴いた時は少々ガッカリしたのですよ。イマイチしっくり来ない演奏で、指揮者・オケ共に「確信」を持ち切れずに演奏しているような感じだったのでね(FMでの放送を聴いた時も、同じような印象だった)。が、自宅で聞き返してみると、そうでもない感じがしてきた。ただ、時間がなくて全曲を聞き返してはいないので、ちゃんとスコアを見ながら聞き返してみて、それから物を言おうと、そう思ったわけで...。でも、やっぱあれですな、音を聴く環境ってのは大事ですな。CDウォークマンだけで聴いてたら、私、「これはイマイチの演奏です」って書いちゃったと思うもの。っていうか、実際にそういう文を書いて、慌てて差し替えたんだけどね、実は...(^^; (05/21)

■地元のCD屋に久々に立ち寄った。当団関連の新譜は、ラトルとのマラ9以外は見当たらず、結果、何も買わずに帰ってきたんだけど、そのマラ9の並んだ棚にはコメントカードが付いていて、これが「大絶賛」。「ラトルの音楽作りにウィーンフィルがいつになく熱く反応した超名演」って感じの論旨だったんだけど、そりゃまぁ、ファンとしては、クソミソに言われるよりは嬉しい。が、やっぱりねぇ、少しずつ聴き返しているところなんだけど、私には未だに「イマイチ」の思いが拭い切れないのです。確かに素晴らしい演奏なの。それは間違いない。でも、"今"、両者が同じ曲を演奏したら、もっともっとすごい演奏になったはず、と思えてならないわけ。前にも書いたけど、お互いに対しての「確信」を持ちきれないまま演奏してしまったという感じで...。1年半後に演奏したマラ7、その後のオケコン、幻想、昨年のベートーヴェンのピアノ協奏曲(ブレンデル)といった演奏を聴き(録音で)、その見事なコラボレーションに感嘆した身としては、この演奏内容では今一つ物足りないのですわ。だから、私の気持ちは、「惜しい」。この一言。初顔合わせではなく、もう少しお互いを理解してから取り組んでほしかった...。ま、もうちょっと聴き返してみて、それからまた、いろいろ語ろうと思うけどね。(05/27)

■月末恒例「パイパーズ」ネタ。今月号のCD評に、ラトル&当団のマラ9が登場。木幡氏の評は、「ライブ故(?)、オケの演奏精度には問題があるものの、演奏自体はとても良い」というもの。ま、耳の鋭い氏もそう評価してくれたんだから、巷の「好評」も、あながち"御祝儀"ばかりとは言えないということでしょう。何よりです。が、何度も言うけど、私は、あの演奏、イマイチ不満です。"絶対評価"をすれば、それなりの成績を付けても良いと思う。けれど、このマラ9以後の、いろんな演奏を聴いてしまった今となっては、「今ならもっとできるはず」との思いを捨てて聴くことができない。"相対評価"すると、これは決して高得点をあげることのできない演奏だと思うのね(もちろん、"合格点"はクリア)。「ラトルらしさ」「当団らしさ」が、いずれも中途半端にしか出ていないような...。今の彼らなら、お互いの「語法」を理解して、もっと大胆に、もっと深く切り込んで、マーラーの世界を描けるはず。せっかくのラトル&当団のマラ9が、こういう"手探り状態"の演奏で世に出てしまったというのがなんとも惜しくて。だって、もう当分(永久に?)、このコンビのマラ9がCD化されることはないんだから...。あと、これは初めて書くんだけど、1番ホルンを吹いているロナルドがね、これもイマイチで。いや、そりゃもう大健闘してますよ。立派なもんです。が、彼の、いや、あえて言えば、"当時の彼の"欠点である、「力み吹き」に終始しているのがね、私、気に入らないのですよ。小排気量の車が、アクセル全開で一生懸命高速道路を走っているような...。これ、結構つらいものがありますよ、聴いてると。(06/23)

EMI CLASSICS(TOCE-9701-2)


ムーティ/モーツァルト 交響曲第25番、第39番

ニコニコこれはこれでよろしいのでは

■ようやく、ムーティ&当団のモーツァルト交響曲25番&39番のCD(PHILIPS)を入手。が、じっくり音を聴く時間を作れない。でも、我慢ならないので、パソコンのCD再生機能で音を出しながらこの文を書いているところ。で、その演奏なのだが、結構いいね、これは。ムーティの指揮である以上、解釈自体に目新しさは感じられないだろうと予想し、それはその通り当っているのではあるが、音楽自体はとても生き生きとしているし、当団の演奏も実に伸びやか、かつ、キビキビしたもので、聴いていて大変心地良い。久々に、"当団ならでは"のモーツァルト演奏を聴いたって感じかな。まぁ、パソコン付属のスピーカーでの音だから、"正式な"装置で再生してみると、また印象が変るかもしれないけどね...。というわけで、詳しい感想は、また後日(いい加減に、「観た!聴いた!…」を更新しろって?^^;)。(07/12)

PHILIPS(454 443-2)


セル&ギレリス/ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番、交響曲第5番「運命」他

ニコニコ男臭〜い演奏

■「エグモント」と「運命」を聴いたところだが、芳名録に重鎮F氏が書いておられた通りで、なかなかに"痛快"な演奏だった。最近のベートーヴェン演奏に見られる、"様式美の追求"というスタイルではなく、当時のオーソドックスな解釈であったであろう、"ロマン的"かつ"重厚系"のベートーヴェンだが、その骨太な音楽は十分に魅力に溢れたもの。当団も、実に"熱い"演奏でセルの音楽作りに応えており、なんとも「男臭い」ベートーヴェンとなっていた。良くも悪くも、今の当団にはできない演奏。いや、今の指揮者にはできない音楽、の方が正解か?ところでF氏、確かに「エグモント」における"ベルガー大魔人"のラインマーカー演奏は爆笑モノでしたが、「運命」の方は"アシ"のような感じしません?(10/13)

■昨日書いた"新譜ネタ"の続き。未聴だったセル&ギレリスのベートーヴェンPf協3番を聴く。いやぁ、こりゃ「凄い」演奏だわ。かたや「鋼鉄のピアニスト」、こなた「完璧主義者」。こういう2人が、正面からぶつかりあっての「一騎打ち」なんだから、激しい火花が飛んで当たり前。終始ハイテンションで、かつ極めて前向きな音楽が展開され、聴き終わった時には、さすがに"疲れ"を覚えた。昨日も書いたけど、オケも含めて、実に「男臭ーい」演奏だ。で、こういう音楽は、今はもう、誰にもできないだろう。ある意味では、音楽家にとって幸せな時代だったのかも。しかし、セルはこの翌年に死んだはず(大阪万博記念にクリーブランド管と来日したのが最後の演奏だったとか)だから、この演奏は"最晩年"のもの。なのに、この"かくしゃく"ぶりはどうだ。ショルティもそうだったけど、ハンガリー人てのは、「死ぬまで元気」って人たちなんでせうか??(^^;(10/14)

ORFEO(C 484 981 B)


シャイー/ヤナーチェク「グラゴル・ミサ」 他

ニコニコ充実した演奏

■当団のヤナーチェクは、アバドとの「死者の家から」のビデオ収録を除けば、'70年代後半〜'80年代前半のマッケラスとの一連の録音以来久しぶり(のはず)。「久しぶり」と言えば、シャイーとの録音もそうで、こちらは'80年(?)のチャイ5以来か(たぶん...)。それはそれとして、演奏自体はなかなか充実したものになっていて、十分に堪能した。"ボヘミア色"を前面に押し出す解釈ではなく、また、ことさらに"劇的"な方向性を狙うのでもなく、どちらかというと、「淡々」とした感じで音楽が進んでいくのだが(マッケラス&デンマーク放送響ってのを持ってるけど、はるかに「劇的」)、それが却って、"ロマン派の延長線上にある正統的ヨーロッパ近代音楽"(長い!)という雰囲気を醸し出していて、新鮮な感じを受けた(そういうところが「物足りない」と思う人もいるかも)。当団の「音」がまた良くてね。特にホルン会の、"ヤナーチェク独特の和音構成における音色感"(これまた長い!^^;)とでも言うべきものは、ほんとに素晴らしい(トップはラルスか?)。私には、やっぱ、この「音」が基本です。あと、この曲の"要(かなめ)"であるティンパニも見事(ハルトルか?)。ところで、余白には、ツェムリンスキーとコルンゴルトの、それぞれ「Psalm(「詩編」と訳せばいいのかしら?)」という曲が収められているのだが、この2曲がどちらもいい曲で楽しめた。こういう「隠れた名曲」をどんどん録音して欲しいんだけど、世界的「クラシック離れ」状況の中では、無理な願いかなぁ、やっぱり...。そうそう、ツェムリンスキーの下吹きホルン会の音は素晴らしいでっせ(他の曲も素晴らしいけど、特にね)。ああいう存在感ある音が出せるのは、これはもう御神体しかいらっしゃらないわけで、少なくともツェムリンスキーには参加されていたはずと、こう確信する次第であります(違ってたらショック...^^;)。(10/13)

DECCA(460 213-2)


ヤイトラー&フィルハーモニック・ウィンド・オーケストラ,ウィーン/ロマンティック・ブラス

ニコニコ"ヤング・ジェネレーション"の凄さ

■フィルハーモニック・ウィンド・オーケストラ,ウィーンの新譜「ロマンティック・ブラス」をさっそく購入。先般、ラルス他3名がソロを担当している曲が何であるかは不明、と書いたが、結局、ヒューブラーの「4本のホルンのための協奏曲」だったことが判明。"ゲスト"で"それなりの活躍"どころか、れっきとした「ソリスト」であったというわけで、それなら、ジャケットに写真と名前が載るのも納得だ。で、時間もないので、とりあえずそのヒューブラーのみを聴いてみたのだが、ソロの4人はいいねぇ。素晴らしい演奏ですよ、これは。「4本のホルン」と言っても、シューマンのコンチェルトシュトゥックのような"超絶"曲ではないのだけど、しかし、要所要所に難しそうなパッセージも登場するこの曲(実際に譜面を見たことがないので推測だけど)。でも、この4人は、実に事も無げに吹いていて、とても安定感のある演奏に仕上がっている。少なくとも、テクニック的に「ウィンナホルンだから」という"ハンデ"はまったく感じられない。でも、音はまさにウィンナホルンの"それ"。リズム処理の統一感、フレーズ感なども、紛れもなく"ウィーンの伝統"に即したもの。この辺が、ラルスをはじめとする「ヤング・ジェネレーション」ウィンナホルン奏者たちの「凄さ」ということなのだろう。時代は確実に変った。ウィンナホルンは決して特殊な楽器ではないし、ラルスやロナルドだけが特別な存在でもない。その「次」に控えている若手奏者たちも、相当にレベルは高い。
■で、その「次」の奏者たち、ラルス(1番ホルン)以外のソリストだが、2番マイヤー(Sebastian Mayr:国立歌劇場舞台オケ)、3番イェブスル(Thomas Joebstl:フォルクスオパー首席)、4番ラムザー(Hannes Ramser:トンキュンストラーオケ)という布陣となっている。マイヤーは、'95年'97年の当団来日公演にも帯同していたからすでに"お馴染み"だとして、あとの2人は、私にとっては"初顔"。が、4番のラムザーについては、写真の感じからして、'92年の当団来日公演(クライバーキャンセルでシノーポリになった"あれ")に帯同し、「巨人」やブルックナー7番の4番ホルンを、メチャクチャでかい音で吹いていた巨体奏者である可能性も高い。彼が彼なのか?まぁ、ボチボチ確かめてみることにしますが。残るイェブスルについては、まったく初めて名前を聞いた。が、しかーし、こヤツ、なんとまだ20歳なのだ!('78年生まれ)。それなのに、フォルクスオパーの首席を務めてるってんだから、すごいねどーも。そういや、以前ラルスが「フォルクスオパーにすごく巧い若手が入団した」って言ってたっけ。彼のことだったというわけだね。ところで、このイェブスル君、順当に行けば、近い将来当団に入団するのは間違いないでしょうな。ヘグナー引退で入れ替わりにとりあえず3番奏者として。トムベックの体調如何では、いきなり首席もあるかも(トムベックが3番に異動って形)。うーん、このCDからだけだとその力量を掴みきれないから、フォルクスオパーに行って確かめてみようかなぁ(って、すっかり"入団内定"にしちゃってるよ>在日代表 ^^;)。(11/26)

CAMERATA(30CM-540)


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