南国調(?)ばらの騎士
で、今回の旅の最大の目的(?)が、シンガポール交響楽団(SSO)の演奏会。それも、わざわざ「ばらの騎士」組曲をやる日を選んだ理由は、「東南アジア随一」のレベルを誇ると言われているSSOの実力を知るのに、「ばらの騎士」なら"打って付け"ではないのかと思ったから。
会場のビクトリア・メモリアル・ホールは、今世紀初頭に建てられたという年代物。パイプオルガンもあるホールだが、音響的にはややデッド。キャパシティは、たぶん1,000席くらいで、フル編成のオケにはちょっと狭い。聞くところでは、新しいコンサートホールを建設中の由。
当夜のプログラムは次の通り。
さて、肝心の演奏だが、全体を聴いて感じたことは、表現意欲は旺盛だがその方向性がなんか違うんじゃないか、ということ。某国の多くのオケのように、「で、何が言いたいわけ?」と言いたくなるような無味乾燥系の演奏ではないのだが、出てくる音楽は、ちょっと何かが違ってる。例えるなら、"標準語"をちゃんとしゃべろうとしてるんだけど(本人はしゃべってるつもりだけど)、なんかナマってないか?みたいな感じかな。
その辺が顕著だったのが「ばらの騎士」(既存の出版譜ではなく、要所をピックアップした特別版)。出だしから豪快かつ快調に進むのだが、R.シュトラウスの世界とはちと違う。そう、なんていうか、やっぱり明るいのですよ。それも一本調子に。2幕の例のワルツにしても、やたら元気がいいんだけど、その中でいろいろ遊ぶというような仕掛けがなくて、ぐいぐい進んでしまう。違う違う、それはウィーンの音楽じゃないよ!と叫びたくなることしきり(特にラッパKenneth Olson@アメリカ人?、あんたは勘違いしとる!)。
一方で、古典系の曲では、彼らの"表現意欲"が触発されないのか、イマイチつまらない(やる気のない?)演奏に終始。オケ全体に、フレーズの終わり方の処理が概して"お座なり"なので、シューベルトやベートーヴェンでは、音楽の構成感が出て来ず、聴いてて辛い。そこに持ってきて、指揮者の解釈がまさに「巨匠」そのもので、音楽を大柄に作るし、テンポも変に揺らすので、余計にオケのお座なり感が強まってしまう。
"気持ち"はあるわけだから、それをいい方向に引き出してくれる指導者(トレーナー)がつけば、いい線行けるのではないかなぁ。少なくとも、古典系の曲については、早急にトレーニングする必要あり。その辺が功を奏すれば、力はまだまだ上向くはず。そんな感じのするオケだった。
まぁ、でもね、南国調の「ばらの騎士」が聴けたってのはいい思い出。「アゴン」も初めて聴いた曲だったし、これもいい経験でした。
オマケの"おやじネタ":打楽器に、実に魅力的な女性奏者がいらした(←なんで敬語なんだよ!?)。「ばらの騎士」でシンバルを担当していたのだが、胸元の大きく開いたドレスをお召しで、そのお姿はなんとも"妖艶"。おまけに叩きっぷりがカッコいいもんだから、いやぁ、おじさんの目は釘付けでありやした(^^;。SSOを聴く機会があったら、彼女にも注目してあげて。
どうでもいい話題
世界中どこでも、訪れた場所では必ずCD屋に立ち寄ることにしているワタクシ。今回も、謹んでタワーレコード・シンガポール店を表敬訪問させていただいた。店の規模は同じタワーの新宿店くらい。でも、クラシック売り場は新宿店や町田店よりも広く、品揃え的にもまずまず。同じ東南アジアでも、以前行ったバンコク店よりは充実していた。値段は、日本で言うところの輸入盤の"レギュラープライス盤"が、20ドル台半ば〜後半といったところで、要は2000円〜2500円見当。これなら日本とそれほど変わらないが、現地での物価水準からすれば、ちょっと高いという感じだろう。
ところで、私が手にしているCDは、シノーポリ&当団の「エレクトラ」(DG)。発売を今か今かと待ち続けているこのCDが、シンガポールでは発売されていたノダ。オーマイガッ、なんてこったい!この前日、町田と新宿のタワーに寄ってから空港に向ったのだが、いずれにも入荷されてなかったのに...。その訳を現地在住T氏が解説。曰く、「ここは港に近いからね」。なーんだ、そうか、そういうことかぁ...って納得してどうすんの!?→結局、この後すぐに日本でも発売された(^^;
さらにどうでもいい話題
この写真、なーんだ?宿泊先T氏宅近くの小学校前の歩道上にあった"イラスト"なのだが、あたしゃ最初、"宇宙人が書き残していった自分の似顔絵"かと思いましたよ(←んなアホな...)。でも、このイラストが歩道上に点々とあるのね、反対向きのも含めて。で、気がついた(←遅いって?)。これは"靴底"なんだ。そう、小学生に「ここ(歩道)を歩きましょう」って注意する『標識』だったんだ!
しかし、この靴底はユニークだぞ。どう見たって"ヘンな顔"だ。シンガポール全土に渡ってこの意匠なのか、はたまたここだけなのかはわからないが、いずれにしても"VOW@宝島ネタ"であることは事実。いいなぁ、こういうの。