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呪いが恋しい?

中野隆行
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まさかこれが『ヒビ割れ修復記』だなんて。まだ曳航ははじまっていないのに。橋たない。冗談で傷つく者の存在に思いをはせる話をこれからしようというときに。下駄履きとは不謹慎な。しかもここは、ペンちゃんの部屋であって筆者の部屋では断じてないのだ。後方より竹製の目隠し――塀を補うための――の風に吹かれて軋む音。倒壊寸前なのだ。貨物列車がゆく「ヨ」。地球派の人達の後ろ盾で修復作業などというとちょうど十年前のことになろうか。いわば個人的な信頼関係の確立に奔走していたあのころの記憶を。矯正がらみの施設でほぼ毎日のように修復していた某ハンタイ氏も今では休戦協定に向かってまっしぐらとの報告が上がっている。しばらくこうして当てっこクイズに狂し真似へ。一時は大統領専用機(直滑降で玉を砕く――こりゃ痛そうだ)に心傾いていた某ハンタイ氏ではあるが、よりによってデュシャンなぞを特使として派遣? かえって決裂しそうだ。構わない。修復隊は踏み台昇降の合間に手を洗う。そのまま休めの姿勢で聴き入るはずだ。よいか、この問題に深入りする前に、我々の使命を再確認しておく必要がある。いまどき何が敵で何が味方なんだかわかりゃしねえ、こんな嘆き節が他の隊員の密告で某ハンタイ氏の耳にも到達している。この者、駆除芳香剤でラリっているようだ。情けをかける暇もすき間もありやしない。報告一本まるまるつき合わされる前に、ヘルメットのまま「御休憩」を口実に脱出する。アボガドロ数も顔負けと一面に舞っていたが、そこまで「すさまじい」比重に気づかされる前にこうして、お見舞を延期しておいて正解であった。記録係もそれまで待機処分としよう。読者なんかいらない。筆者が生まれるほうが優先だ。ユービンNILをチェックしてそれからどうするというのか。八六〇四のフェンダーミラーをかち割ったのも筆者であろうか。緑の町を復元せよとの横断幕であるが、あそこには以前雑草が生い茂っていた。野菊を摘む者のかたわらでイヌどもが草臥れて威張り散らすのが見られた。ピペットと呼ばれてもこの頃は気にならない。注射器らしさを求めての旅が開始されようというこのときに。注射器はここ数年来、日々こうして筆者を旅へといざなう以外にもはや何もすることがないというからおどろきだ。いきなり環状線が丸い搭乗口を開いて待ちうけている。形状に注意して、注射器らしさを求めての旅が、初っぱなからつまずいてしまっては。うしろのほうに台車が立ててある。そこを中心に攻めを組み立ててゆこう。構築的アプローチというわけだ。誤解してはならない。破壊せぬよう最大限の敬意を払おう。だがしかし平凡なオデコだけでは通行許可はおりない。拙者が一本一五〇円で植えて進ぜよう。無許可営業の林立する通りだ。ここを行く者はみな植樹祭のゴム長だ。台車をたたんで「御休憩」に終止符をうがて。注射は専門の職員が少なくとも腕まくりまでは助けてくれるはず。物質の支配する午後である。のれんを挙げての大歓迎を誰が予想しえたであろう。皿の気配に椅子が緊急避難。声をため込むまでの勝負だ。泡の数というより、カルマン渦の中にもがき苦しむ青春よ、おれの名は「垢」だぞ。バカもん、美貌の中将のクセしやがって。そいつを注射器の中に「おゝ、ロード!」する。「スタッフ募集」と言い換えてもよい。だまされる前にだまし返してやれ。西から時間を支配せよ。若干「くの字」ではあるが、ここでビックリしておかないともう二度とビックリする機会なんかないかもしれない。もったいないから食べてしまえ。環状線の中で? そう、すでに予感していたらしい。感じ合ってくれるものと信じていたらしい。ヨブ記なんか面白いわけなかろう。比較するだけお気の毒というもの。エレミアの哀歌も、世が年末上陸作戦に突入した証であろうか、眠くて仕方がない。Dデイ? 決まってるだろ。いつだって戦争なのだ。この勢いだけ手で追ってほしい(キミ、かっこいいゾ)。ここまで恋し、巧みにかわし、遅くもまぁ、よくもまぁ、ぶつからずにここまで万事「縁」であると済ますほうが、本当は本当なのだから、本当に安いと何度でも言わせるがいいさ。さて、前回八重洲ウラの見学まで申込むも、よくわからぬ理由によりキャンセルされた「カリスマ問診」計画。深い理由がなかったから? だがビックリしようにも、新しい計画がアナウンスされてしまって、しかも古いほうのはもう誰も聞きたくないとぬかしよる。一人位パンクがいても、大して興味がないらしい。今の時期なら、少しぐらいうれしくても皆が破り捨てるであろうから。そうでもないとこの挑発的な価格設定はどうにも説明がつかない。しかも隣の建物のエプロン道場は相変わらず「声が高え」とほかでもない、彼ら自身の高い声がそうみとめるのだから。声というのは一般に、高いという以前に「かわいい」ものなのだ。困ることもなかろう。これ以上ドスのきいた声だと聴診器こわれちゃうからね。それでも「大声コンテスト」の会場へと向かうべくあらかじめメニューが組まれているのだ。しかも内接円の円周上を周回中の競馬博士殿と紳士協定に基づく勝負をせねばならぬ。湯島聖堂というより昌平坂学問所(この二つはほぼ同義、念の為)。これは着眼点の問題。濁っているのは諸君のお茶だろう。「聖堂わき」の坂ではなく、むしろ学問所のほうが坂にちなんだ名前なのだ。ついでにいうと「湯島」のここはどちらかというとはずれに位置している。格言・はじめに坂ありき。パンクの諸君、これだけは御記憶ねがいたい。レイアウトとはそういうものなのだ。下北南口の小田急オックスではいきなり頭突きにあうことを。苦労の話をしよう。こぼれ落ちるのを拾い上げると、みんなの耳がいい仕事をしている様子を手にとって感じ入るのは自分だけ? 桜全開のことをfull blownというが、呪文の際限ない繰り返しには人々の心をとらえてやまない魅力があるという。幸せな日々のことは蔵王も仁王もみな忘れた。哲人は顔が大きすぎて帽子がハマらない。浅くかぶるぐらいなら立ち去ることを選ぼう。とりあえず「大声コンテスト」の会場にカサヤンが来ている。荷物はコンパクトでなくてはならない。言葉の瞬発力だなんて、作品第一主義が聞いてあきれる。節目節目で転調のすすめ。本年レゲエ元年である。われエムらんことを。これまた超小型の帽子だが、ほかのはどれもやたら背が高い。周囲を見回すも、全員翼(よく)丸出しで何とも浅ましき光景。ネジ式連結器の大写し。鉄道ファンの奥義である。そうか、気前の「ええ」赤サトー君も無銭飲食か。矛盾してはいまいかね赤サトー君よ? まぁ流会も仕方あるまい。今回だけ松ヤニ抜きとでも思われたのだろうか。尻尾をこスりつけにいつも行く「フラジオ会館」で生涯学習の会。英語でCEと綴って「セ」ではなく「ケ」と読ませるのは「ケルト」ぐらいのものだ。赤毛唐君? これが隣の席の、額のひっかき傷が意味あり気な、話から察するにファン待望の駅員さんの名前。本人はおしゃれのつもりらしいが、髪の毛いっぱいに赤唐辛子をまぶしているのだ。グラサン(黒眼鏡)を取り出しさらに近づくとやはり、フラジオ会館で長年スってきただけのことはある。いちいち解説してくれるもんだから、こっちもフォロー電話に地の果てまで追いまわされて本当いい迷惑。だが諸君、聞け。雄叫びクラブ荒らしは昨日今日の話ではないのだ。曳航記を綴るようになってかれこれ高校以来になるのだろうか。戻りたければ今のうちだ。大交差点のほうへ。監禁なんて反則だ。地下のタコ部屋では医師が一言「よかったね」。ちっとも。対岸にそびえるセンセイの雄姿に。やだなぁ、じっと動かぬ「手」を握って生まれるのは誰? 地平線でガラム吸ってら。苦労話が聞きたいか。おかえり。器用な子だから、何度床に叩きつけても帰ってくる。よし、対岸は対岸でも線分の折返点。スノッブの是非を論ずる自信のなさに思わず声の裏返る自身スノッブな野郎。あら、奥さん、そうじゃないのよ。新世界より机がとどけられる。ロケット打上げの欠点といえよう。掃除機が巨人――わざわざ考え込んでから「貴君は」「モクを」吸うのかね等々、もって回った言い方に追いうちをかけられて――に対抗して巻き返しに出るのであろう。これまた異状に小さいやつが、ノドに一号発射! そこそこの距離に見えてくる。不思議なのだ、誰に対してすごむわけでもないのに。とりあってもらえずに資料をばらまく。一旦はセンセイとの肩並べの約束を正式にここで破棄しよう。これ以上、肺はいっぱいだけど、明けるのは夜ばかりである。広場(プラーツ)でのフォトセッションをのぞき込むと、 ガキのクセに(地下にいるのは「もぐり」だ、注意されたし!)、媚び笑いのまたいやらしいこと。「ビッチ」って「グッチ」の仲間だと思う?(でも意味わかった上でならどうぞ御自由に。) 買ってみてほしい。おッ、超かっこいいゾ。三つ星下品館にいたる線路下のこのあたり、穴倉がじっとこちらの表情をうかがっている。実に危険な香りだ。なにわナンバーの白のハッチバック車。中でヒゲ面の男が白い煙の中で陶酔している。よく見ると白い煙は皆「ニャン子(猫)」なのだ。動物実験用に売り飛ばすのであろう。某ハンタイ氏からの匿名の依頼で「芳香剤」の空き箱を埋めに行くのもこの辺ではあるまいか。歪んでいるから「床」なのであって、塩臭さの元を訪ねてもここまではふつう来ないぞ。亡命しようにも荷物が多過ぎて、靴ヒモに昔っからある瘤(りゅう)になぞかかわっているヒマはない。 楽しいね。 外電(イタリア発の場合、とくべつに「イタ電」という)はいう、五秒でつぶせなかったら負けだと。姉はクスッと笑う。立ち読み防止にクーラーのフィルターを三分ごとに交換。まぁ黙って読め。秋になっても商人を追出せない場合は月謝制へ移行せよとのことだ。ラオスの旧領事館前。居間でゲームをやるのが好きなのか。ヒマをつくることから学ぶとしよう。靴ヒモ同士で通じ合うことからはじめよう。そうか靴下は二階か。『L音のエチュード』に耳が泣きだす。浅草に旭が昇りまくる。矢を射ると彼方に天がドサッと墜ちる、そんな橋を失のうて我々は既に久しい。身体のほうも再点検せねばならぬ。釣った魚をあとでゆっくりチェックすると、これは掲示だけなのだが、参拝記録のビリビリに引き裂かれた断片。「前にかがむと何に見える?」「そうねゾウさんかしら。」 後者の率いる十二万の軍隊に包囲されて終結を宣言。下水道の流れる橋まで引き継ぐための決意。ご存知であろうが、どこまで歩こうとも。親切のおよろこびを。ヘドロはないか? カメラは何でも写す。十年前の定期乗車券につづき、二十年前の石けん。もし溶けていなかったらの話。三十年前、旧西ドイツのとある街で、チェコからミュージシャンを呼んでこっそり行われた室内楽の録音セッション。ピアニッシモの合間を見はからって外で(そ外(がい)つ、そ外(と)へと?)バイクのエンジンをふかす不届者あり。忌み有り下頭(げとう)。ゴマ出せ。なるべく醜い客の背中ばかりを狙うように。はい。千石で下車して「好意に挑め!」の大合唱。大好き。歯が上下段ともいぢめに加担する向きに干物じじい。た、頼む。三時半ごろだってちっとも惜しくはない。カリスマ性なんかいつでも手放そう。耕してみるのも、某ハンタイ氏のためにすぎない。身にまとうはただ一枚のエプロンのみである。喰ふべからず。下が汚ねえと因縁つけられて。どの身分にも満足はありえない。ますます呪いが恋しい。

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Composed 16-23 November 1996

中野隆行
Takayuki Nakano
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