ダイビング

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海の現実

会社を休んで潜りに行った。

天気は雨、透明度は5m、そして水温は14度とコンディションはこれ以上無いぐらいに悪かった。

真っ暗な水底でアンコウが出ないかとガイドさんとマンツーマンで探索していたら遠くに真っ白な大きな影が見えた。

何かと思って近付いてみたら、マンボウの死体だった。内臓が切り取られ、大きな巻貝が付いていた。

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マンボウの死体

次にガイドさんが見つけたのが白骨化したイルカの尻尾。標本の様な骨にはロープがくくりつけられていた。

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イルカの骨

どちらももちろん漁師の仕業である。マグロ等の回遊魚を狙った定置網にかかってしまった「売り物にならない」獲物は海上で解体されて捨てられてしまう。

「なんとかして助けてあげられないのか」

「ダイバーの入る海へ捨てるべきではない」

「イルカは知能の高い、人間の友達なのに」

非難の言葉はいくらでも考えられる。しかし真っ暗な水底でその光景を見た時に私が感じたのは「これが海の現実なんだな」という気持だった。

海で生活している漁師にとっては網にかかった物は全てが獲物、食べられる部分は無駄にせず、その死体は水底で他の生き物の餌になる。ここでは人間は自然の一部だ。

「奇麗な海、可愛い魚達」という使い古されたイメージでいまだに集客しようとするダイビング業界。

「キャッチ&リリースは自然に優しい」などと言いながらバスを放流して日本の環境を破壊した責任を取ろうとしない釣り業界。

私にとって許せないのは人の目から現実を隠そうとするこういった行為や、小手先のごまかしである。

そういった商業主義優先の、自然と向き合わない人間の醜い所行、現実を隠蔽して作り上げられたイメージだけを伝える態度がどれだけ無意味で愚かしいか、現実の自然と向き合い、潜り続けていれば痛切に知る事ができる。

最悪のコンディションでこんな経験をした時にでも、「今日、潜って良かった」と思う事ができた。その事を誇りに思いたい。

2005/05/11

東京湾に出没して人気を集めていたコククジラが定置網にかかって死んでしまった。知識があればこうなるであろう事は充分予見できたはずである。船で追いかけ回してスクープを撮る以外に、湾の外へ逃がしたり、できることはいくらでもあったはずだ。


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