いつ、いかなる時にでも私は「何か面白い事は無いか」と考えている。それはスクーバダイビングと並ぶ私のライフ・ワークと言う事もできる。どんな状
況でも、どんな小さな事でも、面白可笑しく考えられる、それこそが私が幸福になるための最高の方法だと信じているからだ。それは資源を浪費する必要も無
く、環境を破壊する事も無く、そして誰にでも、いつでも始められる事なのだ。
そんな私の思考は疲れて仕事から帰る時に入るコンビニですら止まる事はない。今回はそんな私のコンビニでの体験を紹介したい。
コンビニの店員さんには色々なタイプがいる。例えば私の家の近くのファミマの店長らしきおじさんは常連の私に毎朝挨拶をして地域住民とのコミュニケーションを図ろうとしているらしいが、私はここ1年以上それを冷たく拒み続けている。
お釣りが表示される瞬間である。
例えば以前セブンイレブンで買い物をした時、小銭が無くて1000円を出した所、
女子店員:「1000円お預かりで、お釣りは、、、ぶぶっ」
突然店員さんが吹き出したのだ。
不審に思った私はお釣りの表示を見てみた、すると、、、
666円、、、
あんた悪魔の数字で吹き出したらあかんやろ。
背が低くてちょっとぽっちゃり気味の店員さん、きっと明るくてツボにはまり易い性格だったのだろう。
それから私はお釣りの額に注意するようになった、そしてある日、セブンイレブンで買い物をした時、
店員:「1000円お預かりで、お釣りは 777 円です」
777円キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
内心で「2ちゃんねる」的な興奮を感じながら、私はこの感動に同意を求めて店員さんの目を見た。ところが、、、
なんであんたそんなに冷静やねん。
そこには四角眼鏡をかけた年齢不詳の男性店員がいた。「あんた何興奮してんの?」という顔をしていた。私の興奮は一気に冷め、屈辱感と共にセブンイレブンを後にした。
このようにコンビニのお釣りにはある種ギャンブル的な要素があり、そして「当たり」が出た時の反応で店員さんの性格まで分かってしまう、正に一石二鳥の面白さを秘めたイベントなのだ。
そしてある時、そんなお釣りイベントの集大成とも言える出来事に私は出会う事ができた。人生において2度と無いだろうその出来事のおかげで私は奇跡の存在を信じる事ができるようになったと言っても過言ではない。
その日仕事帰りに寄ったセブンイレブンで、私は夜食にと思いデザートを買おうとしていた。食事は会社の社員食堂で済ませていたので350円のお菓子だけを単品でレジへと持って行った。
レジにはどう見ても「バイト見習いの中学生」という出で立ちの少年が立っていた。落ち着きの無い態度、不安げな表情、彼は全身全霊で「ぼく、はじめてなんです、、、」と訴えていた。
短い髪、細長い顔、細い目、何と言えばいいのだろうか。言わば「典型的な田舎の中学生」という感じだろうか。コンビニの制服の下がジャージであったとしても何の不思議も無い雰囲気、伊豆等でジャージ姿で自転車で疾走していそうな少年だった。
小銭が無かった私は仕方なく1000円札を出し、お釣りと商品を渡してくれるのを待った。慣れない手つきで商品を袋に入れ、レジを操作する少年の姿
にいら立ちを感じた私は別の商品棚の方を見て時間を潰す事にした。そしてそろそろお釣りが来るだろうと思って振り向いた時、私はそこに予想外の光景を見
た。
何で凍り付いとんねん、、、
そこにはレジの前に立ち尽くし、キーの上でおろおろと両手をまごつかせる少年の姿があったのだ。その瞳はディスプレイの表示を愕然と見据えていた。
どうしたのかと思った私は自分の側に向いているレジのディスプレイを覗き込んだ。そしてそこに信じられない表示を見たのだ。
釣り \999,633、、、
店長、100万円入りまーす!!
一昔前のカップ麺のCMのフレーズが頭をよぎった。どうやら "1000" と入力するのに "0" の代わりに "00" を3回押してしまったらしい。
どうすんのかな、、、
一瞬の驚きから素早く立ち直った私は好奇心もあらわに少年を見た。その視線を感じたのか、少年はさらに狼狽し、一瞬何かレジを操作しかけ、また一瞬今度は別の店員さんの方に声をかけようとし、そして最終的に再びレジに向かって引出しを空け、お釣りを出しはじめた。
「まずは大きい方、99万円から」って言うかな、、、
期待しながら待っていた私に、少年は633円と、下の写真のレシートをくれたのだ。「ちゃんと修正しないとだめだろ」と思いながらも私はそれを受け
取ってコンビニを後にした。後で考えてみると100万円の表示された珍しいレシートを手に入れる事ができて良かった。これもあの純朴そうな少年のおかげ
である。
今でも私はレジのお釣りをいつも楽しみにしながら観察している。しかしその反面、これ以上の体験はもう二度と会えないのではないだろうかと寂しくも
感じるのだ。こんな素晴らしい経験をさせてくれたあの少年に心から感謝しながら、いつかそれ以上の奇跡に出会える事を夢見ていきたいと思う。
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最後に、30過ぎの独身男が夜、あんみつを単品で買っていた事に付いて何も言ってはいけない。人にはそれぞれ事情があるのだから。