出羽灯火採集の風景
(北陸東北ツアー6日目)

採集地:山形県置賜地方

2006.8.17

舞台は会津から出羽へと・・ ■8月17日(木) 昼の部

この日はゆっくり9:00頃目を覚まし、10:00に清水氏親子と共に会津の宿を後にした。この日から場所を移しての山形ラウンドとなる。清水氏が移動がてら、旧知の方の所数件へ挨拶して回るというのでご一緒することになった。私のような年に1度程度しか訪れないものはなかなか地元の方とは接点が無いのだが、こういった機会にお話も伺えて良かった。
なかでも地元の年輩採集者の翁の話では「ヒメオオはここ数年極端に♀の見られる数が減った。」とのこと。
私も以前ひとりごと(Vol.19)の中で書いたが、♀の絶対数が不足して個体群の維持に影響が出ている事の現れなのではないだろうか。それとも温暖化などの影響も関係しているのかもしれない。

挨拶回りも一息つき、気が付くと11:30を回っていたので、昼食をとって移動することにした。私が食堂で頼んだのはカツ重だった。今夜も採集で勝ちを収めなくてはならないからなのはいうまでもない。

昼食の後はひたすらに会津の高原を抜け出羽の国を目指して走った。地図上ではそれほどでも無いが、国道は1車線区間が多く、なかなか時間もかかるものである。

ようやく山形県へ入ったのは15:00近くになっていた。しかしまだここから2時間ほどは走らないと目的地へは辿り着けない。思ったより時間がかかるものである。このあとも清水氏はまた山形で挨拶回りをしてから入るというので、私のみ一足先に目的地へ急行させていただく事にした。

16:30頃に目的の林道へ来ることが出来た。しかし、前方になにやら生き物が・・もしや・・・・。私もゆっくり車を近づけるとその黒い大きな生き物は斜面をゆっくり登っていった。それは紛れもなく熊だった。ここから灯火トラップをやろうと思っている場所までは100Mと離れていない距離での遭遇である。

どうしたものか悩んだが、2003年にこの地を訪れ大雨に見舞われて、満足に灯火採集ができなかった思いのあるポイント。その時の雪辱のためにわざわざ来たのもあったので、熊にびびって引いてしまったのではなんとも情けない。なので、そのまま進んで予定場所へ到着し、シートと脚立を降ろして陣取りを済ませると早々に清水氏の待つ宿へと急いで戻ったのである。

親分の車とツーショット!
植生も申し分無いが、熊は勘弁

■夜の部
17:30宿に到着すると清水氏親子も既に到着していた。早々に夕食を頂くことにした。今夜はすき焼きである。だんだん夕暮れの時が近づいていた。時間があればひと風呂浴びてと思っていたが、あまり薄暗い中で灯火のセッティングをするのも不気味なので食事後早々に私は出撃することにした。清水氏はこの晩は街灯回りのみに徹するとのことである。
18:50先程の林道ポイントへ到着。獣の気配を気にしながらの設置作業に入った。最悪の事態に備え、腰にはナイフを着用した。準備も終わり、程なく辺りは暗くなっていた。19:15いよいよエンジンを始動し点灯したのであるが、無情にも大粒の雨が落ちてきた。そういえば3年前の山形入りの晩に清水氏と偶然お会いした晩も雨の晩だった。しかし、今回は雨だからと諦めて場所を移動してしまっては前回と同じ轍を踏む事になると思い、ライトの後ろで忍んで待つことにした。
この日の1号はアカアシクワガタ♀ミヤマクワガタ♀ノコギリクワガタ♂
20:00頃だっただろうか、清水氏が地元山形の採集者の悟空氏と有人のA氏を連れて様子見に来てくれた。私としても虫の飛来もほとんどなく、獣の恐怖と雨に打たれて凹み気味だったので採集者の方と話ができて嬉しかった。やがてゴールデンタイムもほとんど飛来の無いまま終わりを迎えてしまった。気温もまだやたら高いままである。街灯回りをしている清水氏らはどうなのだろうか・・・。

早々に撤収するべきなのだろうかといろいろ思いは巡るのであるが、以前清水氏が言っていた「雨の日は普通種は飛ばなくなるけどオオクワは飛びます。」という言葉を信じてライトの後ろに座り続けた。

時折林道の方へ出て獣が近づいてこないかチェックしていると、なにやら光る目がこちらに近づいてくる。そんなに大きな生き物ではない。やがてライトで確認できる距離まで近づくと猫だった。何をするのかと思ったら、ライトの前に落ちている大きなヤママユガをくわえて斜面へ消えてしまった。エンジン音や明るさに警戒することもなく、ああして近寄ってくるということは警戒心が強いといわれる熊とて近づきかねないと思った。
22:00を回った。エンジンが切れる時間まであと1時間、その頃には撤収をしようと思っていたので終了の時刻が刻々と近づいてきていたのだった。

22:30黒く光る虫が目の前へ飛来してきた。待望のオオクワガタ♀だった。半ば諦めかけていただけにこの1頭は感動である。思わず「よっしゃー!!」と拳を握りしめ独りで叫んでしまった。雨の中待った甲斐があった。ここまで来た甲斐があった。3年前に地図で見て選んだポイントでの飛来だけに感無量である。その後は23:00過ぎに予測通りに1台のエンジンが停止し素早く撤収。一旦宿まで引き上げ、シャワーだけ浴びて着替えを済ませさっぱりし、街灯へと出かけたのである。
待望の山形産オオクワガタ♀
時間は0:00を回っていた。清水氏もまだ戻ってないという事は相当遠くまで回っているのだろうか・・。
とりあえず、近くの灯りから1カ所ずつ車から降りて見てゆくことにしたのであるが、あまり虫が確認できない。そんな中でもポツポツとノコギリクワガタやカブトムシは転がっていたり、隠れていたりする。晩の気温も高かったのがようやくいい気温になってきている感じだった。
2:00を回った頃に一台の車とすれ違った。すぐに清水氏と気が付いた。成果を尋ねるとこの晩は全然駄目とのこと。
「私の方は・・1頭♀が来ましたよ。」と灯火の成果を報告すると「良かった〜」と私の事ながら本当に喜んでくれた。
合流後は2車で街灯を見て流すことにした。結局それ以降もカブトとノコギリクワガタしか見られず、宿へ戻ることになった。宿では清水氏親子と軽く祝杯の後、寝ることになったのだが既に外は明るくなっていたのであった。

◆本日の採集成果:ALF
灯火/街灯採集
オオクワガタ成虫♀1
アカアシクワガタ♂1♀2
コクワガタ♂2
ミヤマクワガタ♂4♀2
ノコギリクワガタ♂7♀5
カブトムシ♂3♀6
合計31頭