介護保険関係者だけの短編小説(小説じゃあないって!)
第17話 「ケアマネ、ちゃんとお給料もらえるかしら?」
〜最近の動向とやっている仕事を分析すると〜
きわめてリアルな会話・・・・・・・・・・介護保険ノンフィクション即席小説
介護保険関係者だけが解る楽屋受けだらけ
日頃のアフターファイブの出来事を小説風におもしろおかしく書き綴った介護保険関係者のためだけの物語です。
登場する人物、団体は全て架空のものです。
無断転載を禁止します。
誤解を招かぬよう、フォローを入れるか、全文を転載することを条件に、事前承諾をいただければ転載可能です。
登場人物の紹介
田中 コンピュータ屋さんと間違われる県職員。実はケースワーカー
山田 とある介護保険事業所のケアマネージャー(社会福祉士さん)
鈴木 市役所介護保険課職員
木村 町役場保健福祉課老人福祉担当職員。実は、かつて企業の人事部に勤務していたこともある。
斎藤 老人ホーム職員
作:野本史男
平成12年6月4日
〜序〜
介護保険が施行されて2ヶ月に入ったけど、最近のニュースは選挙一色だし、介護保険関係の話題はめっきり少なくなりましたね。
目を引いた最近の話題は神奈川県内の特別養護老人ホームにおける要介護認定の改竄と入所者の所持金に絡む不祥事かな?
ところで、私たちの仲間内でもこのことについては、息を潜めて成り行きを見守っているんです。
息を潜めすぎて、その他の話題にからむ情報交換も少なくなっているので、ちょっと山田に電話を入れてみました。
〜おーい元気か?〜
田中 頑張っているかねえ?
山田 ぼちぼちでんな〜
田中 最近悩み事の電話も少なくなったけど、落ち着いてきたの?
山田 落ち着いている訳じゃあないわよ。コンピュータシステムも入ったから、軌道に乗ればこれからもやっていけるかなあ?って思っているところ。そうそう、今度の土曜日に最後のシステム講習会があるの。インストラクタがすごっくかわいい子なんだ。見に来ない?
田中 インストラクタがかわいいって、これ必須アイテムだよねえ。どんなに難しくても、一所懸命きいちゃうよね。
山田 ところで、生徒が女性ばかりの場合だったら、インストラクタは格好良い男の子にしてくれるのかしら?
田中 それも一案だよね。ただね、インストラクタだって、教えるシステムの操作方法を覚えなければならないから、よほどインストラクタの人材が豊富じゃなければ叶わないよね。
山田 そうかあ、ヘルパーを指名制にしたいって言っても無理なのと同じなんだ。
田中 ちょっと違うなあ。
山田 あ、そうだ、悩みといえば、たくさんコンピュータが入ったけど、パソコンさわるのが初めての人がいてさあ、運用が心配なんだ。操作者は年輩の方も多くてさあ。40の手習いというか、大丈夫かしら?
田中 そうそう、講習会はどんな感じだったの?昔ね、パソコンが入ったとき、20歳代は何も見ずにパソコンを触りはじめる。30歳代はマニュアルを読み始める。40歳代は腕を組んで後ろで眺めている。50歳代は頑張ってくれと言い残して部屋を後にする。と言われていたんだ。
山田 う〜ん。ウチの場合はちょっと違うかしら?
20歳代は難しいことを言い出してインストラクタをからかって困らしちゃうでしょ。
30歳代はインストラクタの話を聞き惚れている。ただ、理解できているかは判らないわ。
40歳代がポカ〜ンとしているのよ。
それより、50歳代が真面目かしらねえ。
もしかして、今の40歳代はパソコン落ちこぼれ組だったのかしら???
田中 う〜ん。苦手意識がついちゃっているのかもね。昔はMS−DOSのコマンド打ちから覚えなければならなかったんだから。今じゃあGUI画面だから、操作性も感覚でできるのにね。
山田 な〜に?MS−DOSって、GUIって、なによ?
田中 そうかあ〜!今じゃあMS−DOSなんて知らなくても済んじゃうからねえ。
山田 そうよ!年に似合わずコンピュータ歴はたったの3年よ。でもさあ、昔話も面白そうね。
田中 それじゃあ今度ゆっくり教えてあげるよ。1946年2月15日にペンシルベニア大学で初めて開発された電子計算機のENIAC(エニアック)の話からね。
山田 あ、やめとく、私歴史弱かったんだ。
田中 ははは、そうしておこうか。
〜悩みと言えばケアマネ事務〜
山田 そうそう、悩みって言えばね、このあいだ「介護保険最新情報」で国保連からエラー一覧が出たでしょ?あれって、返戻されちゃうのかしら?
田中 知り合いの国保連の人に聞いたんだけどさあ、4月分は50%近くがエラーだって。今回は大目に見るけど、来月分からは厳しくするって言っていたよ。
山田 ラッキー!安心したわ
田中 でもさあ、知り合いの人って、近畿方面なんだ。こっちの国保連はどうだか判らないよ。
山田 なにさあ!方針は全国統一にしてもらわなければ!
田中 そうだね。そうあって欲しいよね。
山田 それじゃあ、契約なんだけどさあ、どこの業者さんも締結しているのかしら?遅れているのウチだけなのかしら?
田中 速やかに締結してください。と言いたいけど、どうも、できていない事業所が多いみたいだね。
山田 ちゃんと痴呆気味の一人暮らしの方等は後見制度の活用とか手続始めようとしているのかしら?
田中 そのあたりはまだまだ時間がかかるみたいだね。
山田 法律は動き出したけど、ってことよねえ。まあ、世の中契約だって、契約修了までに遡って締結することだってよくあることだから・・・・・・みんなが遅れれば怖くない!
田中 それが常識になっちゃあマズイよ。ただね、そのあたりを指導するところが国も法務と厚生省っていうように異なるから、ちゃんと連携を取って、低所得者対策を含めて対策や運用通知を早く出して欲しいものだね。
山田 わかるわあ〜でもさあ、こういう部分も、ぜ〜んぶケアマネの仕事にされちゃったらやってられないわ。
田中 ケアプランの作成とモニタリングが本来の仕事だったのに、事務やら調整やら、やらなければならない仕事がぜ〜んぶケアマネに来ちゃったら、やってられないよねえ。
山田 なんとかして欲しいわ。
田中 そうだよねえ、以前にもこの小説で「振り向けばケアマネ」(第六話)っていうのを書いたけど、その傾向があるよねえ。
山田 う〜ん。ケアマネはどこまで仕事すれば良いんだろう?
田中 給付管理の業務範囲って、福祉畑でずっと仕事していた人たちと、新規参入事業者の人たちと温度差があるだろうねえ。
山田 例えばさあ、給付管理と言ったって、本来は、現在のサービスでちゃんと生活ができているのかを確認することが必要でしょ?そのためには、表面的な部分で判断せずに、ちゃんと家庭訪問して、生活がどうなっているのかをチェックすることが必要よねえ。
田中 確かに。指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準の13条の各号に記載されている内容をどこまできちんとするかということだよねえ。
山田 でもさあ、ケアマネがそこまでやっている時間がない。ただ、予定されていたサービスがちゃんと利用されていたかを確認すればいいんだし、最悪、ケアプランを実体に合わせて作っちゃっても修正しても判らない訳よ。だって、事前にケアプランを作ってあっても、結果を給付管理票として請求すれば良いんだから、何だってできちゃうじゃない。支給限度額の範囲ならいいんだからさあ。
田中 まあ、自分のサービス提供機関ならいくらでも修正できちゃうってことだよね。
山田 そうはっきり言われちゃうと困るけど、そんなことがあってもチェックのしようがないから、ばかばかしくなっちゃう。
田中 ケアマネの研修は何だったの?課題分析はどうだったの?て言いたくなっちゃうよねえ。
山田 私はちゃんとケアプラン作成時に課題分析をしているわよ。でも、頭の中でやりました。と言えばそれまでだし、何も考えずにやっても結果しか表に出ないんだからさあ。
田中 う〜ん。あまりケアマネに仕事を押しつけたら、結果的にそうなっちゃうよねえ。
〜短期入所も大丈夫?〜
山田 そう言えばさあ、今、短期入所の利用率が低すぎるんだ。
田中 なになに?これまでの措置の時代じゃあ短期入所利用したくても空いているところを探すのに相当苦労していたじゃない?
山田 それがねえ、これまで90%以上の利用率だったのが、今じゃあ50%程度なの。
田中 どうしか分析してみた?
山田 みんなで話しているんだけど、ケアプラン作成時に予約してしまうわけじゃないでしょ?利用者さんが利用し辛くなっているのか?拡大措置ができてしまって、ケアマネもどのように対処してよいのか判らない?それとも無ければ、今ためておいて、ケアプランが終了する間際で利用が集中するのかもしれない。私は、盆暮れや農繁期等に集中するんじゃあないかと心配しているんだ。
田中 考えることが皆同じなら、利用できずじまいって言うことになりかねないね。まあ、拡大措置等の関係をちゃんと理解して調整しないと後で困ったことになるかもね。
山田 そうなの。予約争奪戦になっちゃうと困るからさあ・・・。ショートは勿体ないから取っておきましょう。っていうことであればね。ただ、上限との関係で、通常の訪問通所でいっぱいになっていて、いざとなれば自己負担でといったプランになっているのかもしれない。
田中 まあ、在宅で安定できるのならいいけど、家族の方にしわ寄せにはなっていない?
山田 そうかあ、確かにプラン作成は本人中心よねえ。でもさ、従来の短期入所は家族のための制度だったんだ!
田中 そのとおり。旧措置時代の要綱を読めば分かるよね。
山田 それじゃあ家族不在でも良いほど訪問通所サービスが充足していて、家族に精神的肉体的負担がかからない状態ならそれでよし。というならいいんでしょ?
田中 それだけじゃあないんだなあ。短期入所は、お互いのリフレッシュのためにいいんだ。高齢者の食生活も体調も安定させることができるし、全身のチェックや体調チェックにはもってこいなんだよ。それに家族だって、精神的なリフレッシュができる。
山田 そうねえ。それじゃあ、短期入所がダメなら、うまく入所と在宅を繰り返させてしまえば・・・・・・
田中 あのさあ、それって、利用者のため?施設のため?
山田 うふふふ!
〜ちゃんとお給料いただけるのかしら?〜
山田 わたしさあ、今の仕事していても残業代も出ないのよ。5月の請求までは連日深夜まで勤務よ!
田中 どの分野でも、今時ちゃんと残業代出ている事業者はないよ。公務員だって残業代カットされているんだからさあ。このあいだ運送会社の人と話したんだけど、土日出勤だし、サービス残業で徹夜もありだってさ。労働基準監督署が聞いたら怒るだろうね。
山田 だからさあ、万一請求したプランが全部返戻されちゃったとするじゃない?そうしたら、返戻された請求事務にかかった時間分はお金にならないんだし、組織に損害を与えたことになるでしょ?給料もらえ無いどころかペナルティーで給料引かれちゃうなんてことないかしら?
田中 ああ、大丈夫だよ。給料から損害を天引きしてはいけないんだ。全額支払いの原則があるからね。ただ、一旦払ってくれるけど、請求が来たりして・・・?
山田 そうじゃあなくって!首になったら海外旅行もでき無くなっちゃう!
田中 そもそも海外旅行いける暇ないでしょ?
山田 ちがうってば!
田中 まあ、解決策とすれば、介護報酬分の仕事をきちんとしていればいい訳だよね。
山田 そうか!え〜と、私の時給を給料から換算すると2,000円程度だから・・・・給付管理は1件3時間程度で、てことよね。
田中 時給換算はどうやってしたの?
山田 とりあえずさあ、年収÷{週40時間×52週−(休日+年休)×8時間}って感じ。
田中 まあ、そんなところかな?概ね半日で1件が良い見当だと思うよ。1ヶ月20日なら40件程度。要領よくやって50件だからね。
山田 それじゃあ、ケアマネは、先ほど田中さんが言っていた国の基準の範囲を超えて仕事をするなら、サービスで行うか、その分の金をもらえっていうこと?
田中 もらうべきか否か、どちらが正しいかは別にして、そういうことになるよね。
山田 たださあ、私の給料自体が満足しているかどうか、ということもあるわよねえ。
田中 そりゃあそうだよ。責任とプライドをもって仕事ができるだけの給料がもらえていればそれでいい。福祉だから給料は安くていい。というのは通用しなくなるよね。
山田 そうそう、以前田中さんが言っていた「マクドナルドのアルバイト賃金とヘルパーの賃金、どちらを選ぶ?」っていうことにつながるのよね。
ところでさあ、業務量が増えたらどうすればいいの?
田中 みんな雇用契約しているはずだから、そこに記載されていない部分の仕事が入ってきたら、その分は契約変更なんだから、ちゃんと給料も交渉しなくてはね。
山田 世知がないというか・・・福祉も金次第っていうことかしら?
田中 ただね、ケアマネの部分だけで採算を見る訳じゃあないだろうから、収益は全体で考えてもいいのかな?まあ、端から損失部門を作るようじゃあ、経営者としては失格だけどね。
山田 介護保険関連企業はどこも業績が悪いっていうから・・・・撤退や倒産も出ちゃうかもね。
田中 そんなことになったら国の責任だよ。とにかく、そうならないように自分の持ち場のところは公正に全力で頑張るしかない。そのかわり、言うべきことは言っていくことが必要。
山田 わかりました〜!
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