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私はゴジラが好きだ。あの巨体、有無を言わせぬ破壊力、それは沈滞した日本の社会状況さえも打ち破ってくれそうではないか。いや、打ち破ってほしいのは私の日常だろうか。
私もどうせでっかく生まれるんならこんな半端なでかさじゃなく、ゴジラぐらいでかく生まれたかったと思う程だ。
そんな訳でこの正月に「ゴジラ2000ミレニアム」を見に行った。今回はそんな私が出会ったつらく切ない事件を紹介したい。
まず一人で映画を見に行くというのはなかなか寂しいものがある。私が考える寂しい映画の行きかたランキングは次のようなものだ。
女性は一人だとものすごく寂しくなる。歌謡曲にもある通り、女性が一人だと失恋したことになってしまうからだ。「恋に破れた女が一人」という訳である。余計なお世話である。
そういうわけで女性はほとんど一人では見かけない。しかし女性は複数になると一気に楽しそうになるのが不思議だ。反面男は一人でも行けるが複数でも寂しいのにあまり変わりはない。
何にしても一人者は映画館では影の存在なのだ。その上いい歳してゴジラを見るとなるとなかなか敷居の高いものがある。
だから私も一人で映画を見に行く時にはでかい体をできるだけ小さくして目立たないように心掛けている。こつは平常心、なんでもない風を装って行くことだ。
今回ゴジラを見に行った日もロードショーから1か月程を狙い、空いている時間帯に映画館に向かった。チケット売場は空いている。予定通り、完璧だ。
しかしその日、悲劇はチケット売場で起こった。
私はチケット売場の売り子さんに低い声で言った。
私:「ゴジラ、一般、一人お願いします」
すると聞き取りにくかったのか、あろう事か彼女はマイクを使って確認してきたのだ。
売り子:「ゴジラですね」
私:「はい」
売り子:「一般、一人ですね」
私:「はい」
いちいちでかい声で確認すんじゃねえ!!
さっさと目立たずにチケットを買う私のもくろみは台なし。涙が出そうだった。私は売り子の差し出したチケットを奪うように受け取るとそそくさとその場をはなれた。
しかし悲劇はそれで終わらなかった。私がエスカレータで地下の劇場に向かうと、そこに口論しているカップルがいた。
男:「懸賞当ったからっていい歳してなんでゴジラなんだよー」
女:「いいじゃないのもー」
擦れ違う瞬間、その男と目があった。一瞬交錯する視線、ばつが悪そうに男が目を逸らす。だが傷ついたのは私の方だった。
こっちは懸賞にも当ってないのにいい歳してゴジラ見にきてんだよ。しかも一人でな。
目がうるんでいたのに違いない。映画見る前からこんな気分が悪かったのは初めてだった。
そして屈辱感にまみれながら私は映画を見た。親子連れがいっぱいいて楽しそうだった。
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