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仮定法、それは多くの高校生にとって最も理解し難い英文法ではないだろうか。少なくとも私にはそうだった。そして多くの学生がこう考えているのではないか、「こんな言い回し、一生使わないから大丈夫」と。
しかし、決してそうではない。それは日常の簡単な会話の中に潜み、君が油断するのを虎視耽耽と狙っているのだ。
今回は海外出張中の私を襲った英文法の罠をお伝えしたい。
ある日、出張中の私は仕事場とは別のビルにあるラボに行くため会社の敷地内の歩道を歩いていた。ふと見ると同じ職場で以前見かけた事のある女の子が荷台を押しながら歩いていた。その子は名前をモニカと言い、その職場ではまあアイドル的な存在だった。
私はただ追い越すのも何だと思ったので、とりあえず聞いてみる事にした。
私 : Hi, do you need some help?
モニカ : Oh, no thank you, I can handle it.
私 : OK, see you.
そして私はそつなく会話をこなしたことにそれなりに満足すると、彼女を追い越して目的のビルに向かった。
しかし、結局のところ彼女の働いているラボと私の向かっていたラボは同じビルの同じ階にあったため、彼女はそのビルのエレベータ・ホールで私に追いつき、我々は同じエレベータで3階に向かう事になった。
そして悲劇は3階のエレベータ・ホールで起きた。
そのエレベータ・ホールと廊下との間には両側に二つの扉があり、私と彼女の目的地は互いに逆の扉の向こうだった。彼女は荷台を押しながら扉の前で私の方をうかがうようにして言った。
モニカ : I could have some help right here actually.
私はその時、よく意味は分からなかったが「この辺からは誰か助けてくれるから大丈夫」と言ったのかと思い、
私 : See you.
とか言ってさっさとその場を後にしてしまった。
しかし、目的のラボに到着し、椅子に座ってコーヒーをすすり始めたところで私は漠然とした違和感を感じ始めていた。どうも何かがおかしい。
私は先ほどのやり取りをもう一度よく思い出し、そしてある一つの恐ろしい結論に達した。
まさか手伝ってくれって言ってたんじゃねえの。
「仮定法過去は現在の事実に反する仮定を述べる」、つまり彼女が言いたかったのは、
「ここで助けてくれたらなぁ(実際にはないけれど)」
意訳すれば、
「自分でできるって言ったけど、ここでは助けて欲しいな」
という事だったのだ。その事実を理解するにつれ、私は情けなさに呆然とした。
むっちゃ冷たい奴やんけ、俺。
はっきり手伝ってくれと言ってくれれば、、、日本人にその言い回しは通じないんよ、モニカちゃん。
いかがだっただろうか、いつか皆さんが同じような事態に直面し、この話を思い出して悲劇を繰り返さずに済めば幸いである。
確かに日本の教育レベルは世界一かもしれない。しかしそれは「憶えて、テストで良い点数を取る」事に終始してしまっている事は周知の通りである。
どういった状況でその教育が生かせるのか、必要になるのか、はっきりと教えてやらなければ向学心の起こりようもない。昨今の学生の数学力の低下もその辺に起因していることは明白である。
仮定法という言葉を知っているアメリカ人はいない、しかし彼らはそれを使っているのだ、日常的に。
追記
1週間後、ほとんど同じシチュエーションで彼女に会った。説明して謝ると笑って許してくれた「きっとそうだと思ったわ」。
そして今度は最初から手伝う事にした、「君が何と言っても今度は手伝うよ」。
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