1998年まとめ
−LIVEの部−
ウィーン室内合奏団/ベートーヴェン 七重奏曲 他
自在なアンサンブルを堪能。が...
■ウィーン室内合奏団の演奏会に行ってきた(於:サントリーホール)。2年前の来日公演の時は、当日券で入るという"無礼"を働いたので、今回は、ちゃんと"前日に"電話予約して出向いた次第(前日じゃ一緒だって^^;)。モーツァルトのディヴェルティメント10番(弦楽とホルン2本)とホルン五重奏曲、そして、メインがベートーヴェンの七重奏曲という、なかなか"立派な"プログラム。メンバーは前回同様で、Vnのヘル、ヴェヒター、Cbのマイヤー、Clのトイブル、Fgのウェレバ、Hrnのゼルナーという当団組に、Vaのバイエルレ(元アルバンベルクQ)、Vcのスコチッチ(元当団)、Hrnのティルヴィルガー(ミュンヘンフィル)が加わっての9人編成だった(ちなみに、中プロのホルン五重奏のソロはティルヴィルガー)。前回公演の模様についてはここに書いたが、あの時は、期待して行かなかったことで、結果的には「嬉しい誤算」を味わうという展開だった。今回は、前回の内容を踏まえて出掛けたわけだが、結果的には、前回同様、彼らの自在なアンサンブルを楽しむことができ、満足して会場を後にすることができた。個人的に一番楽しかったのは、1曲目のディヴェルティメント。なかなか聴く機会のない曲だが、優雅さと洒落っ気に溢れた、まさに「彼らならでは」という演奏で、曲の持つ魅力を十分に堪能させてもらった。この曲のみの"出番"だった(実際には、アンコールにも登場したけど)ゼルナー氏の2番ホルンも良かった。おっさん(失礼!^^;)、だいぶ「下吹き」が板についてきたって感じ('93年秋のホルン会大人事異動までは3番吹きだったので)。ただ、音程というか音色というか、その「落とし所」が、フレンチ(アレキ103)を吹くティルヴィルガー(アメリカ人だから、やっぱ"ターヴィリガー"なのかなぁ、本当は)とゼルナー氏では微妙に違っていて、噛み合うようで噛み合わない、という感じで終始してしまったところは残念。まぁ、これについては、楽器が"違う"以上(どっちが「正解」なのか、という問題は置いといて^^;)、仕方がない問題なのかもしれんがね。メインの七重奏曲は、前回も聴いた曲。曲の基本的なアプローチに変化はなかったが、今回の方が、どちらかというと「喜遊曲」的なノリを強くしていたかもしれない。いろいろな「仕掛け」を繰り出して、各自が丁々発止とやりあうような場面が随所で見られた。が、それが、私の感じ方からすると、「やり過ぎ」の嫌いがあったのも事実。この曲については、私、もう少しシンフォニックな、カッチリとしたアプローチの方が好きなんでね。そういう意味では、夏に草津で聴いた、ラルス参加の同曲演奏の方が、"趣味"に合ってたな。
■それにしても、ティルヴィルガーは上手かったなぁ。多彩な音色と、揺るぎないテクニック。弱音から強音まで、"ダイナミクスレンジ"もものすごく広いから、音楽の幅が非常に広いし、音楽の作りがとても大きい。ホルン五重奏なんて、「自由自在」って感じで吹いてたもんなぁ(1楽章は、少々ズレぎみだったけど)。たいしたもんです。が、しかし(はい、もう、何が言いたいかおわかりですね?^^;)、あのホルンは、私の"趣味"ではない(ほら来た!)。当団ホルン奏者の誰が吹いても、あんなには吹けないはず。ウィンナホルンの歴史上、相当腕の立つ部類に入るであろうラルスやロナルドだって、絶対にあんな風に吹けない(たとえフレンチで吹いても)。でもねぇ、それがどうした?って気になっちまうんですよ。あんだけ達者に吹かれても、そこに(私の)「ウィーン」が感じられない以上、私としては「心底堪能」という域には至らないの。プログラムの解説文なんかでは、「すっかりウィーン流儀をマスターし…」なんて書いてあるけど、それは「違う」よ。断じて「違う」。あの「音」と「芸風」は、どう聴いたってウィーンの"それ"ではないもの。如何なる理由から彼が参加することになり(すでに6〜7年経ってるはず)、ずっと居続けてるのかは知らないが、できることなら、ウィンナホルンを吹く若手に席を譲ってやってほしい。でないと、このアンサンブルを聴く度に、演奏を楽しみつつも、どこかに「居心地の悪さ」を感じてしまうことにもなるから。まぁ、そう書けば、私の「わがまま」って感じになるけど、そういう問題だけではないとも思うし...。(11/08)
1998年11月07日(土)19:00 サントリーホール