八犬傳 観察日記 1

---筆者の師匠から、夏休みの宿題が出た。
師匠: この「南総里見八犬傳」のビデオを見て、図解つきでレポートにしなさい。 観察日記ってやつだね。
筆者: はぁ。
師匠: 道節が何回笑ったかをメモしておくといいだろう。とにかく よく笑うから。
筆者: はぁ。

「南総里見八犬傳」って?

このビデオ、実は古いものである。多分 40 年くらい前のものなんじゃないだろうか。 表記だって今なら「南総里見八犬伝」である。碧也ぴんく氏のマンガ版『八犬伝』の 後書きにこのビデオが紹介されていたことがあったが、筆者はその紹介の内容を はっきり覚えていない。よって、以下の記述にそれとダブる部分があるかも しれないが、ご容赦いただこう。それから、八犬伝の作者が誰かといった細かい話も 省かせていただく。ついでにいうと、『里見八犬傳』という映画はもう 1 本あって、 そっちは 5 部構成である。

もうひとつ。以下の文書では、グラフィック対応のブラウザなら筆者の手による 荘厳な絵もご覧いただけるが、内容はビデオの中身ではなく、作品のパロディみたいな ものなので、実際に見た人にしかわかってもらえないたぐいのものだ。 わかってもらえても、笑ってもらえるとは限らないのだが。

ビデオを再生するの段

で、「八犬傳」である。この作品は三部作である。始まって最初に出てくるのは 「予告編」であるが、ここでまず「あれっ」と思うはずだ。 青比丘・白比丘 (あおびく・しろびく) という「妖女」が登場する。こんなやつ 原作にいたっけ? しかしもっと驚いたことには、どうみても特撮 SF としか思えない 映像が流れ、なんと半魚人が登場するらしいのである。 なんだそりゃ。いきなり度肝を抜かれた筆者を無視して、ビデオはオープニングに入る。

ウルトラ怪獣登場の段

そう。最初のシーンは着物を着たおじいさんが「殿ぉ、殿ぉ」と叫びながら 山の中を歩いているのだが、ここでほっとしてはいけなかったのだ。 次は特撮シーンなのだから。ウルトラマンなどの 60 年代特撮を 想起させる大蛇が登場。いきなり「オイオイオイ」といいたくなる。 どうやって体を支えてるんだというくらい細い。おまけに、 火を吹く。そして何よりウルトラ怪獣なのは、 その動きと声である。くにゃー、くにゃーとゆれながら、「ぴぎゃー、ぴぎゃー」と ヘビが (!) 鳴くのだ。ここで筆者は「いかん、やっぱりこれは時代劇じゃないんだ」と 認識を新たにするのであった。

J リーグ開幕記念の段

ヘビを倒した殿さま (里見義実) らは城に帰り、おつぎは シミュレーション・ゲームの世界である。関東管領の子分が攻めてきたというので、 戦闘になるのである……と書くとまじめなシーンでしょ? いや、事実まじめなシーンで、 妻を守ろうとした旅芸人が斬られるトコなんか、涙を誘いそうなのだが、 「だまされないぞ」と心に決めた筆者は、ついあとにオチがあるんじゃないかと思って 顔が笑ってしまう。でも、それでよかったのだ。なまじ感傷に浸っていたら、 製作者の思惑に引っかかって次のシーンで再び驚いていただろう。

次のシーン、それは、管領軍の場内だが……ここで例の青比丘、つまり ヘビ女が登場する。彼女が「エイッ」と 気合いを入れると、なんと顔に模様が現れる。 あ、ペイント。そう、彼女は J リーグの サポーターなのだ。なぜそう言い切れるかって? なぜなら、その後ヘビの正体を顕して 里見の瀧田城に入った青比丘は、なんと打ち上げ花火となって散ってしまうのである。 みょーに安そうな花火だから、爆発ではない。彼女はやっぱりサポーターさん だったのだ。

なお、青比丘のカレシは犬の八房である。彼は J リーグには興味がないらしいが、 酔ったカノジョがあまりに執拗に絡んでくるので、一緒に花火を打ち上げてやる (「いーじゃなぁい。花火、ね、はぁなびぃ」「わかったわかった。花火ね、 ハイハイ」)。彼も、原作とは扱いが違う。元々は強く賢い霊犬だったのだが、本作では ただの犬。伏姫を妻にすることもない。原作では神秘の中心的な存在である 伏姫と八房だが、『八犬傳』ではなんと伏姫のフの字も 出てこない。けど、脇役キャラのただの犬が死ぬと、八つの玉が 飛び散る。何で? と聞いちゃいけないのだろうな、うん。

発煙筒盗まれるの段

で、いきなり 20 年過ぎる。過ぎるとどうなるかというと、「ヘビ幼女」が 「ヘビ妖女」になっている。え? だめ? そうですか。いや、ただね、 白比丘も J リーグサポーターになりました。

次なる怪しげなアイテムは「名刀・村雨丸」である。この刀は、発煙筒として使える 便利な刀である。作中では「霧」と言ってるし、原作でもそうだけれど、 村雨丸からたちのぼるそれは、やっぱり「煙」に見えて仕方がない。八犬士のひとり 犬塚信乃が持っていたものだが、おじ・おばの夫婦がすりかえて隠してしまう。 するとそこから煙が出て、信乃の恋人である浜路が見つける。 「まぁ大変。火事だわ」と言ったかどうかは ともかくとして、彼女は刀を抱えて信乃を追いかける。

結局、おじこと蟇六が追いかけて浜路にあっけなく追いつき、峠で 浜路を突き落として刀を取り返す。と、突然暗くなって、笑い声が響き渡る。
「はははははは、はははははははは、あはははははははは」
筆者の師匠が予告した、犬村道節 (らしき男) である。演じるのは里見浩太郎。 わかいねぇ。

「えーい斬れ斬れぃ」ってあんた悪代官かよの段

倒れていた浜路を一人の青年が見つける。 「あ、庄屋様のお嬢様!」って、これが荘助? ひどい扱いだなぁ。もっと中心人物じゃなかったっけ。

と思っていると、スクウェアが演出したと思われる大立ち回りのシーンである。 無限ループする音楽の中、偽の村雨丸を献上したといって斬り捨てられようとしている信乃と、 刀をもって逃亡する犬川荘助(らしき男)と浜路が、それぞれに立ち回る。あ、いま侍の横に 「32」ってダメージ表示が出てたでしょ。え? そんなことない? そうかなぁ。

とにもかくにも、たまの真面目なシーンである。と思ったら、芳流閣の上で 信乃と犬飼現八 (こいつは名前が出た) と組み合ってるところに、 いきなり「続」の文字が。えーっ。こんな中途半端な。 といっても、とにかく第 1 部は終わっちゃうのだ。




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