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私が水中デジカメをはじめて4年が経ちました。経験本数も200本に近くなり、もはやデジカメ無しで潜る事は考えられないという状態です。また最近の水中デジカメの普及によってどこで潜ってもオリンパスやソニーの純正ハウジングを見るようになり、一人前にアドバイスなど求められるようにもなりました。そこで今回はこれまでの知識と経験からデジカメ撮影について書いてみたいと思います。
結論を先に言えば、「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」、自分が撮りたい被写体の特徴、そのために必要なデジカメのスペック、そして自分のデジカメの特性と限界を理解してその範囲内で撮るということでしょうか。
デジカメには銀塩カメラ(フィルムカメラ)にはない特徴が幾つもあります。それが水中での撮影にどう関わってくるのでしょうか。
これはメモリの量と画質設定によりますが、一般的にフィルムカメラを超える枚数が撮影可能です。デジカメを選ぶときにメモリの種類と対応している容量をチェックすることも大事です。私はいつもコンパクトフラッシュの機種を選んでいますが、それは容量が他より多いのと高い容量が発売になったときに多くの場合デジカメ本体を変更せずに対応できるためです。
液晶ファインダーによる撮影こそがデジカメ最大の特徴だと言えるでしょう。顔の前にカメラを固定してファインダーを覗いて撮るという水中写真の制限はデジカメにはありません。手を伸ばして体からカメラを離して撮ることで魚に寄り易くなります。片手で取れるコンパクトさもデジカメの特徴です。その反面、手ぶれには注意が必要です。
マクロ(近接撮影)に強いのもデジカメの特徴です。マクロ物(ウミウシ、エビ、ハゼ等)の撮影にはパワーを発揮します。マクロモードでどこまで寄れるかもデジカメのチェックポイントです。また最短撮影距離もズームのテレ(望遠)側、ワイド側どちらでの値なのかによって、マクロ撮影での倍率が変わってきます。
デジカメはメモリに画像を記録するのでフィルム代がかかりません。何枚でも撮っていらないものはどんどん消せるのもデジカメの利点です。
これは液晶ディスプレイが原因です。時々潜水中ずっと表示させっぱなしの人を見ますが、こまめにディスプレイを非表示にしましょう。ハウジングのボタンで表示・非表示を簡単に切りかえられるかどうかも重要なポイントです。
これも主な原因は液晶ディスプレイです。ハウジング内部が曇る原因にもなるのでこまめに切りましょう。
デジカメはシャッターを切ってから実際の撮影が行われるまでのタイムラグが一般的に長くなります。つまり「シャッターチャンス!!」と思ってシャッターを切ったはずなのに結果を見ると魚の頭や尾が欠けていたり、ハゼなどの背ビレが開いた瞬間を撮ろうとしてもなかなかタイミングが合わなかったりします。つまりデジカメでシャッターチャンスをモノにするためには魚の次の行動を読む必要があります。
これは明るさに対する許容量(ダイナミックレンジとも言う)が狭いという事です。実際には明るいところが真っ白になる「白とび」という現象が起こります。次の写真を見てみましょう。
上の水面部分が白くなってしまっています。人間の目はデジカメをはるかに上回るラチチュードを持っているので、目で見て綺麗な風景でもデジカメで綺麗に撮るのは難しい場合があります。
対処法としては後述の露出補正を用いる方法があります。また必要な部分以外はあきらめるという思いきりも必要です。
デジカメでの撮影はほとんどの場合オートフォーカスに頼ることになりますが、ピントが合うまでの時間はデジカメによってまちまちです。速く泳いでいる魚を撮ったりする場合などはすばやく焦点の合うデジカメが有利です。また魚がちょろちょろしてなかなかピントが合わせられないような場合はマニュアルフォーカスや置きピンで撮る方法もあります。マニュアルフォーカスを使いたい場合はデジカメとハウジングにその機能があるかどうか確認する必要があります。
前述のようにデジカメはラチチュードが狭いため、綺麗な写真を撮るには露出補正が必要になってきます。細かい調節が可能か、簡単に調節できるかという点、そして撮影する前にどの程度補正する必要があるかを見極める必要があります。またその日の透明度、陽射しの量などによって露出補正を決め撃ちにするという方法もあります。
まずデジカメによってはフラッシュの発光量を制御できるものがあります。色の明るい被写体や光り物の魚などの場合、フラッシュの光が強すぎて真っ白に写ってしまう場合があります。そんな場合に発光量を少なめにする事が有効です。
またデジカメの内蔵フラッシュを使う場合、浮遊物の反射が写る「雪降り現象」が問題になります。その場合でもフラッシュの発光を必要最低限に抑えることで雪降りを防ぐことができます。
またデジカメのフラッシュ発光量を決定する方式に「プリ発光方式」というものがあります。フラッシュの本発光の前に軽くフラッシュを発光させて本番の発光量を制御しているのですが、これが問題になる場合もあります。ハゼやスズメダイなどの中にはとても臆病な種類があります。一生懸命寄って撮ろうとした時にこのプリ発光によって魚が隠れてしまい、本番の撮影では何も撮れなかったという事があります。その反面、プリ発光方式のほうがマクロでは適正な発光が得られて綺麗な写真が撮れます。
またハウジングのフラッシュの前に白い拡散板がついている事がよくありますが、これはフラッシュの光を緩めてくれる効果と、マクロ撮影でレンズ筒のせいで被写体が影に入って光が届かなくなることを防いでくれる効果があります。
デジカメによるワイド撮影ではほとんどがフラッシュ無し、つまり自然の光での撮影になります。デジカメ内蔵のフラッシュでは雪降り現象が起こってしまい浮遊物が写ってしまう、光量が不足して光が被写体に届かない等の問題が起こります。
また広範囲を撮影するため、ワイドコンバージョンレンズを使う場合がありますが、レンズ自体が大きいためフラッシュの光が妨げられて使えなくなる場合がほとんどです。下の写真がワイドコンバージョンレンズの例です。フラッシュの照射角度がレンズによって制限されるのが分かると思います。
ワイドでもフラッシュを使いたい場合は外付けのフラッシュを用いたり、フラッシュの光を反射板で回す方法があります。
自然光でのワイド写真は例えば下のようになります。
ワイド撮影の利点はピントが合う距離の範囲が広くなることです(被写界深度と言います)つまり手前の魚にも後ろの景色にもピントが合うという事です。これを利用してワイドによる近接撮影、ワイドマクロという撮影ができます。上のミツボシクロスズメダイもワイドマクロの例です。
この写真は水底にハウジングを置いて上向きに撮ったので液晶は見ていません。こういう撮り方が簡単にできるのもデジカメの利点です。ピントが合いやすいワイド撮影では「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」という戦法もありなのです。
また動きの活発な魚や通りすぎていく魚を撮る場合はピントが合いやすいワイド側での撮影が有効です。欲張ってズームで撮ると大体ピンぼけになります。動きの速い魚には流し撮りという手もあります。
大抵の魚はダイバーが近づくと逃げていきます。そんな魚を画面一杯に撮るためにはズームを使った望遠撮影が必要になります。
ワイド撮影と逆に望遠撮影ではピントの合う範囲が狭くなります。そのため泳ぐ魚にピントを合わせるのは至難の技です。オートフォーカスの合うまでの時間もワイド側に比べて長くなります。
ほとんどの魚には動きにリズムがあり、少し動いては停まるという動きを繰り返しています。
置きピンというのはオートフォーカスに頼らず、撮影前にフォーカスを合わせて撮る事です。マニュアルフォーカス機能を使ったり、静止物にオートでフォーカスを合わせて撮ったりします。デジカメの場合シャッターのタイムラグが大きいのでやはり魚の動きを予測する必要がありますが。
望遠撮影ではカメラのぶれの影響が出やすくなります。つまり手ぶれに注意が必要だという事です。また被写体の動きにも敏感になり被写体ぶれも起こりやすくなります。高機能なデジカメならシャッタースピード優先モードでシャッタースピードを短くすることでぶれを少なくできますが、シャッタースピードが短くなると画像は暗くなる事に注意が必要です。
魚をできるだけ大きく撮るためには望遠撮影とはいえできるだけ近づくことが望ましいわけですが、魚が逃げてしまうと後姿だけしか撮れない事になります。強引に寄るだけではなく、魚が引いたらこっちも引くという謙虚さも必要です。魚が動いている場合は追いかけまわさずに待っていると自然と近づいて来たりもします。
マクロ(近接)撮影は、あまり動かない、逃げない生物が被写体になります。エビやカニ、ウミウシやイザリウオ、カサゴ等です。できるだけ被写体に寄って大きく撮ると迫力が増します。
マクロ撮影での倍率を左右するのはデジカメの最短撮影距離(マクロモード)です。ここで注意が必要なのは最短撮影距離がズームのワイド側と望遠側どちらでのスペックなのかという事です。デジカメによってはワイド側、望遠側両方の最短撮影距離をスペックに載せています。被写体を大きく撮るためには望遠側での最短撮影距離が重要です。
また望遠側ではピントの合う範囲が狭くなり、手前や背景がボケて被写体が際立つ効果があります。目など被写体の強調したい部分にきちんとピントを合わせ、それ以外の部分が綺麗にボケるように撮ります。
デジカメの撮影能力を超えたマクロ撮影をしたい場合、マクロコンバージョンレンズを使います。これは平たく言えば虫眼鏡みたいなもので、倍率を上げてくれるのとより短い距離でもピントが合うようにしてくれます。
下の写真はマクロコンバージョンレンズを使って最大限寄って撮った写真です。
目と顔の周りにピントを合わせて他の部分をボケさせることで幻想的な写真になります。
もちろんダイビングのスキルは必要です。どうも最近、「初心者がおもちゃ(デジカメ)を手に入れて周りに迷惑をかけている」とファンダイバーからも正統カメラ派ダイバーからもデジカメダイバーが冷たい目で見られている気がします。
ダイビングで最も重要な事は落ち着くことです。つまり初心者というのは「水中で落ち着けない人」という言い方もできます。そして、
焦っていては絶対にいい写真は撮れません。
そして水中で落ち着けるためには自信をつける、つまりスキルを身につける以外にありません。私は潜るときに次のような事に気をつけています。
焦って撮ると大体ピントが合わずにボケた写真になります。また興奮していると魚も察して逃げていきます。
水中に静止しようとしてばたばたフィンキックをしているような状態では写真など撮れるはずがありません。浮力調節だけで水中に静止できるようになりましょう。流れやうねりがあるときは片手で撮れるデジカメの利点を発揮して空いた手で岩をつかんだりするのもいいでしょう。
初心者は手をぱたぱたさせるのが特徴的ですが、カメラを持つとそれはもうできません。浮力、フィンキック、姿勢だけで自由に動き回れるように早くなりましょう。
ここらへんからはマナーです。ガイドさんの見つけた魚に凄い勢いでつっこんでいってカメラを突き出して撮る人がいますが、それでは逃げる姿しか撮れないでしょう。それに他にも見たい人、撮りたい人がいることを忘れてはいけません。
上手くなりたければ被写体を選んでいてはいけません。せっかくコストのかからないデジカメを使っていることの利点を生かさない手はありません。集中して練習したければ見つけたものをどんどん撮ることです。
ガイドさんが見せてくれる物を最初に撮ろうとすると後ろで待っている人達のプレッシャーなどでどうしても時間は短く、焦って撮ることになってしまいます。そこは我慢して最後に並び、後でゆっくり撮るという選択も必要です。もし自分の番が回ってくる前に魚が逃げ隠れしてしまった時には大人しくあきらめましょう。
私も10本ぐらいの初心者のころからデジカメ持って周りに迷惑をかけていたと思います。その自戒の意味も込めてここに書いたことを気をつけていきたいと思っています。
いかがでしたか、デジカメを始めたばかり、もしくはこれからデジカメを始めようかと思っている人の参考になれば幸いです。
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