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レンタカー

海外出張つづきの生活が始まって、そろそろ3年になる。そんな私がアメリカの何が嫌いかと言われれば、それは運転だ。どこへ行くにも車、何をするにもまず運転、ここはガソリンスタンド付属のコンビニで酒を売ってる国なのだ。

今回は完全ペーパードライバーだった私を襲った始めての海外出張の出来事を話したい。

あれは新入社員研修が終わって間もない1997年の10月だった。

その時は一応始めての出張ということで一人ではなく同じ部署の先輩と同じ便で行き、レンタカーも初日からではなく3日後からという事になっていた。

出張初日、オースチン、ロバート・ミューラー国際空港に到着した我々を迎えたのは5m先が全く見えなくなるほどの雷雨(サンダー・ストーム)だった。

トランクを引きずり、ずぶぬれになりながらも何とかレンタカーに乗り込むと、我々は一路ホテルへと向かった。

地図を見ながら、迷いながら、ホテルを間違えながらも何とかホテルに到着し、部屋で一人になって思ったのは、

大変な所に来てしまった。

という事だった。そしてまさかそれが通算1年以上に及ぼうとはこの時は考えもしなかった。

そして2日後、我々は私のレンタカーを借りるため、再び空港に向かった。

先輩を残して Hertz レンタカーのカウンターに向かった私は高い車を貸そうとする黒人のおっさんをなんとかかわしつつキーをもらって外に停まっている車に向かった。

右から入ろうとしてハンドルがないのに気付いたりしつつ車の左側に回り込んだ私は運転席のドアを開けた所で凍りついた。

シフトがない!! サイドブレーキも!!


写真 : 何もない !!

何故だ、アメリカは左ハンドルっていうだけじゃなかったのか!! 突然の不測の事態にすっかり動転した私は再び Hertz のカウンターに向かうとそこにいたおばさんに言った。

私 : I can not drive.

おばさん : What? Really? You have a driver's license, right?

私も動転していたが、おばさんの困りようも結構なものだった。そして私とおばさんが為すすべもなく呆然と立ち尽くしていると、外から先輩が入ってきた。

先輩に事情を話すと、先輩はおばさんに「私がなんとかする」といって、私をつれて車に向かった。車の運転席を見た先輩は、

先輩 : 土井さん、これはカラムシフトですよ。

私 : はい?

言われるままによく見てみるとハンドルの所にレバーがあり、それが AT のシフトになっていた。サイドブレーキは足で踏むタイプで、ブレーキの左にあった。

聞いてないよそんなもん。


写真 : 右のレバーがシフト

運転してみると確かにただのオートだった。しかも他の人に聞いてみた所、日本車でもそういうのはあるらしかった。

そういう車があるのはいい、しかしそれをレンタカーにする事ないだろう。

「運転できない」と言われた時のおばさんの顔を私は今でも忘れることができない。


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